九夜山が作り出した木漏れ日の中を
猫館 鳴が颯爽と歩く。
茶色の作務衣姿で白足袋を履き、木目の美しい草履が際立つ。その出で立ちは傍目に古風な印象を与える。が、本人は高校生くらいの容姿で清楚と言い難い行動力の持ち主だった。
遠くから聞こえる野鳥の囀りに足を止める。猫目をキラリと光らせて耳を澄ます。
「イワヒバリかな」
喉を転がすような低音で長く続いた。自身の答えに満足して再び山の散策を楽しむ。
少し飛び出た石を軽々と跳び越える。乱れた前髪は瞬時に手で直した。誰にいうでもなく、左斜めだから、と早口で言った。
山深い斜面を上り、また下りる。たまに後ろを振り返った。来た道を確かめると決まって枝葉の隙間の空を見上げた。
「天候は大丈夫だね」
適当に下った先で異変が起こる。自身の身体を抱き締めて、わざと口から息を吐いた。さすがに初夏、白くなることはなかった。
「急に、冷えてきた」
語尾が微かに震えた。警戒心を強めた状態で歩を進める。ひんやりとした状態で霧が発生した。
その中、寂れた駅の情景が浮かんでは消えた。見ている限り、安定することはなかった。
「あれは電車……ではなくて機関車?」
揺らめく大気に異物が挟み込まれる。黒い車両は蒸気機関車のようだった。煙突から白い煙を猛然と吐き出し、危険を知らせるかのように甲高い警笛を鳴らす。速度を上げて鳴の眼前を半透明の状態で通り過ぎていった。
「あたし一人では……」
周囲の警戒を怠らず、不可解な場所から後退る。一定の距離を空けると踵を返し、来た道を駆け足で戻った。
その日、霊界に存在する
浅縹(あさはなだ)駅との境界が揺らぎ始めた。
今回のシナリオは霊界にある浅縹(あさはなだ)駅が中心の話になります。
詳しい内容が寝子島に伝わっていないこともあって、色々と設定(アクション)を盛り込めます。
霧深い一端が垣間見えますが、意外に思える物も探せばあるかもしれません。
下記に詳しい内容を書いていきます。アクションの参考にしてください。
○◎〇 今回の舞台 ○◎〇
九夜山の一部で発生した霧に霊界線の一駅が見え隠れする。
名は浅縹(あさはなだ)駅。閑静な場所にある。
駅名の由来となった明るい青色に因んだものが目に付く(アクション次第)。
帰還の方法はアクションによるが、現実世界の一日の経過で自然に任意の場所へ戻る。
例1 歩き疲れて霊界線の電車の中で寝ていると元の山中に戻っていた。
例2 霊界に大気の揺らめくところがあった。指で触れると引き込まれ、いつの間にか自宅の前にいた。
例3 一日を掛けて霊界で過ごしていると急に視界が暗転して寝子島に強制送還となった。
○◎〇 駅の周辺 ○◎〇
霧が深く視界は悪い。木々に埋もれるように幾つかの建物が存在する(アクション次第)。
大気には微かに硫黄が混じる。駅の近くに天然温泉が湧いていた。足湯と露天風呂、共に無料。
隠れた名湯らしく、霊界の住人や迷い込んだ者達が利用。霊界こぼれ話で盛り上がることも(アクション次第)。
○◎〇 N P C ○◎〇
猫館 鳴
猫鳴館の改修工事で不要となった柱に宿る付喪神。
見た目は十六才の小柄な女子で茶色い作務衣を着ている。
外出時は白足袋に木製の草履を履きこなし、猫目を輝かせて気ままに歩き回る。
性格はおおらか。ただし左斜めの前髪を話題にされると少し不機嫌になる。
説明は以上になります。
霊界は未知の領域の為、浅縹(あさはなだ)駅周辺のこともよくわかっていません。
アクションに書いた内容がリアクションに採用されることで、駅の周辺が鮮明になってゆきます。
今回は猫館 鳴が同行してくれる人を探しています。もちろん出会わないという選択肢もあります。
九夜山の登山中、偶然、霊界の浅縹(あさはなだ)駅に迷い込むことも十分に考えられます。
想像力と行動力の両輪でシナリオの中を自由自在に駆け巡ってください。
間もなく霊界線のシナリオが発車します。駆け込み乗車は大歓迎ですが、
アクションの白紙にはくれぐれもご注意ください(アナウンス風)。