部活動のお時間です！～文化部編～｜リアクション

部活動のお時間です！～文化部編～

「いらっしゃいませ。おー、あおい姫！来てくれたんだー！」
「たまには昌也くんの誘いに乗ってあげなきゃダメかなって」

あおいと綾花が訪れたのはホスト部が営業する空き教室。既に何組かの女の子が思い思いにドリンクを傾けながらくつろいでいた。
あおいの後ろで綾花がおどおどとあたりを見回している。その様子に気づいた昌也が安心させるように笑いかけた。

「緊張しなくて大丈夫。お名前は？」
「あ、えっと、綾辻、綾花です……」
「綾花姫。綺麗な名前だね！さぁどうぞ、こちらへ」

既に何組かの女子生徒が座っている教室内の一角へ誘導され椅子に腰かける。

「うちには自慢のバーテンがいるから、好きなものを注文していいよ！」
「バーテンいるの？すごい、本格的。あ、これ差し入れ」
「まさか手作り！？あおい姫サンキュー！」

手渡されたお皿の上には先ほど家庭科室で焼いていたパンケーキの乗ったお皿が。
昌也は掲げ持ちながら正也のもとへ。

「ん、じゃあそのケーキに合うようなドリンクを作らせてもらうよ」

余計なことは話さず、自分に求められた仕事に徹する職人のような正也に、昌也はにやにやと笑みを浮かべた。

「……なんだその笑顔は」
「いいえ～、きりのん先輩かっこいいなぁって」
「お前に言われてもな……」

苦笑をこぼしつつも出来上がったドリンクをトレイに乗せて綾花とあおいの元へ。

「お待たせいたしました。おふたりのイメージからこちらを」

綾花の前にはオレンジ色とあかね色の二層に分かれたカクテルドリンクが。トールグラスの縁には黄色い花が飾られている。
あおいの前には薄い黄色とあかね色のカクテルドリンク。青い花が飾られていた。

「きっとお持ちくださったパンケーキにもあうでしょう。こちらをどうぞ」

いつの間に用意したのか、差し入れのパンケーキが一枚ずつ可愛らしいお皿に盛られて、バターと蜂蜜、ドライフルーツの乗った小皿と一緒にテーブルに並べられる。

「すごい……！」

気遣いとおもてなしの用意の良さに綾花は思わずため息をつく。
けして高いものではないけれど、そこにはセンスの良さがうかがえた。

「俺も一緒に頂いていいかな？」

昌也の言葉にもちろん、と頷き返す。しばらくの間パンケーキを食べながらの雑談が続いた。

「いらっしゃいませ」

骸の声に目線を扉の方へ向けると、仮面をつけたままのこまちが無言のまま佇んでいた。

「……どうかしたのか？」

正也も心配そうにこまちを見つめる。

「えーと。……その仮面に隠された君の心を、僕の前ではさらけ出してくれないだろうか……？」
「……さらけ出して、いいのかい？」

骸の送ったポエムに、ようやく反応が来たことに見守っていた人たちがみな胸をなで下ろす。

「もちろんさ、ここは君の疲れを癒すためにある。本来の君のままでいいんだぜ？」

言い切ってからビシッとキメポーズ。
その姿にこまちが小さく噴き出す。

「かっこいいゾンビだ。気に入ったよ。これをあげよう」

そう言ってこまちがトートバッグの中から木彫りの人形を取り出し骸の手に握らせる。

「やぁ、変なところに迷い込んだと思ったけど、なかなか楽しそうな所じゃないか」

中身が無くなったトートバッグを綺麗に畳み、髪をかきあげる。

「今は活動中だから、そのうちまた来るよ。その時はお相手を頼むよ、ゾンビさん」

そう告げてこまちは足取り軽くホスト部の教室から出て行った。

「……笑顔が可愛かった」

骸の呟いた言葉に応えるように正也の背後に「まじかよ」というフキダシが浮く。
正也は素早く、何事もなかったかのようにそのフキダシをかき消した。