ゴールは落神神社｜リアクション

ゴールは落神神社

【サンマさん？　がいっぱい！　深夜三流俗悪映画風の恐怖？】

「馬鹿な！　馬鹿な！」
（寝子島の下見を兼ねて、家を探していたはずだ！）
　雨垂ミゾレは寝子ヶ浜海浜公園を抜けてすぐのところで逃げ回っていた。

　わらわらわらわら　わらわらわらわら　わらわらわらわら　　　
「「「「サンマ？　サンマ？　だぜぇい！」」」」
　　　　　　　　　　　　どどどどどどどっ！

　一斉に何かわめきながらミゾレに向かって走るサンマのような何か。
　腐サンマさんとでも言おうか、その容姿はサンマさんとはちがい、所々つぎはぎだったり、とれたりしている。
　ぶしゃぶちゃと体から血……というか液体のようなものをまき散らしながら、迫る。
　それらの腐サンマさんをミゾレは直視してしまう。
（雨垂ミゾレ　１ｄ２０＝７）
「カメラだ、いいからカメラをよこせ、写真を撮るんだよぉ！」
　ブツリッと何かが切れたようにミゾレは虚空に向かって手を振り上げて怒鳴る。
「……っ！　仕方ないな」
　そんな、ミゾレを引っ張るように近くの住宅の建物の中に引っ張り込んだ存在がいた。
「？！？！」
　ドンドンッ！　とドアが強く叩かれる。
　しかし、ドアが破られる前に奥にいたもう一人に手を借りて即座に机や家財道具を放り投げるようにして封鎖する。
「……おい、しっかり！」
　惚けたようなミゾレに声がかかる。
　ミゾレがぼんやりと、そちらを見ると、端正の取れた顔の男性がいた。

　その男性の名前は周泰五。
　ミゾレをここまで引っ張ってきた本人である。
　たまたま周囲を偵察していたら、ミゾレを発見したのである。
　そして、封鎖を手伝っていたのが、恵御納夏朝である。
　

　奥から、ミゾレを伺うように見ている。
　二人は、ここに来るまで寝子ヶ浜海浜公園の時点で合流をして上手く抜け出してきたのだ。
　正確には……。

（周泰五　１ｄ２０＝４）
「ヒャッホォォォォォォォォォ！　サンマだぁ！　なんでも腐りかけがウマイってホームレスのオッサンっが言ってたぞ、俺はおっさんを信じる！　腹減ったらあのさんま焼いて食うぞ！」
　といって、暴走しかけた泰五を……。
（恵御納夏朝　１ｄ２０＝１２）
「動かないと……石碑を倒さないと、お願い！」
　と、夏朝が非力ながらも引っ張ってきたのだ。
　
　そんなこんなで、ここには現在三人の人がいる。
「家具を動かすのは、小さめのものでも重いね……」
　夏朝はやや青い顔をしながらも、そう言って、まだドンドンと叩かれる玄関のドアを見やる。
　詰まれたイスやら、テレビやらの家具はミシミシと音を立てており、いずれは破れられるであろう。
　その前にここを脱出しなければいけない。
　別のところから進入される可能性もあるからだ。
　ちなみに、ちゃっかり夏朝は懐中電灯と、どこかにあったゴルフクラブを確保していた。
　故に、先ほど暗い家の中でもある程度はものが準備できたのだ。
「さて、さっさと逃げないとね」
　そう言って、泰五は出口を探す。
　暗闇の中、ぼんやりと裏口があるのが分かる。
　最初は窓を割って侵入したため、そこも脱出経路だ。
　その間に、正気に返ったミゾレが急速に頭を回転させる。
（食料は……望めないな。こいつは絶望的だ……あのガキどもをどうにかして利用する方法があるはず……！？）
　そう考えて、立ち上がり、暗い玄関から奥のリビングにかけて歩いてから見回す……。
　構造の問題で、泰五が見つけていたのと同じく、どうやら裏口があるようだと納得する。
（くそっ……今はこいつらとさっさと逃げるしかねぇ！　犠牲の代償が大きすぎる）
　さらに大きくなる玄関のドアの音……もう、ここにはとどまっていられない。
「何やってんだ！　逃げるぞ！」
　ミゾレは、夏朝と泰五を促して……というよりも、一人でさっさと裏口から脱出する。
　音がしてない裏口ならば容易に脱出できると自分のカンが告げていて、事実その通りで会った。
　その人なりの思惑を抱えつつ、三人は無事この住宅から脱出した。
　そして、闇に降る雨の中、三人はとりあえず北を目指して走っていった。