ゴールは落神神社｜リアクション

ゴールは落神神社

【星ヶ丘組、合流？】

　ずるり……
　　ずるり……
　ずるり……
　　ずるり……

　近くを軟体生物が這っているような音がする。
　舞は、先ほどより信号の街灯に近づいている軟体生物を見て【雷鳴の弓】で牽制して一気に走り抜けようと考えていた。
　七星は落ち着きを取り戻したのか、舞の隣で息を潜めている。
「……ろっこんで牽制したら一気に走り抜けますよ」
「……はい」
　取り乱したことは今降っている雨と一緒に流して、まずはこの状況を切り抜けなければいけない。
　その瞬間であった。

　……ずるっ
　　……ずるっ
　　　……ずるっ

「「……っ！」」
　二人とも、振り返ることはなかったが、後ろからまた別の軟体生物がやってくるのが分かった。
　十字路から、向かって右手側の方に一体。
　自分たちの後ろに一体。
　左手の方からは、何か聞こえたがそちらへ行く選択肢は無い。
　ただ、まっすぐ走り抜けること……。
「いきます！」
「はいっ！」
　――と、二人が行動を起こそうとしたときであった。
　ブォン！　
　と、左手の方からエンジン音が聞こえた。
　続いて強力なマグライトが軟体生物を照らし、その動きを鈍らせる。
（八神修　１ｄ２０＝２０）
「シュゥゥゥゥッゥゥゥ！」
　それにより、軟体生物は大きく後退し、その場から逃げ去っていった。
　その声を聞いたのか、後ろの軟体生物の動きもぴたりと止まる。
「チャンスですわ！」
　七星がいち早く状況を察し、舞もそれに頷いてその場を走り抜ける。
　その際に、走ってきたバイクの修と目が合った。
「あれは……八神様ですわね」
　闇の中に照らされた光により、その人物の正体が分かった。
「奇跡みたいな助かり方でしたね。何があったのでしょう？」
　そう言いつつ、舞は首をかしげるが、走ることを優先した。
　二人は修に軽い黙礼を送り、それに修は頷くと、先行してバイクで走って行った。

　その後、春がこの場に現れるのだが、安全に通り抜けることが出来た。
「何もないわね……案外安全なのかしらね？」
　そんな風に春もまた、何事もなく通り過ぎて落神神社の方へ向かっていったのであった。

【すべてを見守る者？】

「ひゃっひゃっひゃっ！　素晴らしい！　本性晒して逃げる人間、好き勝手暴れる化物、本能が跋扈する世界……なぁんて痛快なんだ！」

　少し前……修が春を助けていた頃、その様子を家の屋根に登って鑑賞していた男がいた。
　その名を、骨削瓢という。
　瓢は、どこからともなく家に昇ると、先ほどの修と春のやりとりを楽しそうに見つめていた。（骨削瓢　１ｄ２０＝５）
　軟体生物の化け物を見て、ぞくぞくするような感覚と、人間の本性をさらけ出すかのような風景を、活劇を見るような形で見下ろしていた。
「此処に永住するのもいいさねぇ！　あひゃひゃひゃひゃひゃっ！」
　そう言って狂ったように笑う。
　元から狂っていると称する瓢だが、口ははち切れんばかりに大きく開けて、げらげらと腹を抱えて笑うように雨の中ただひたすら下を見て笑い続ける。
　ちょうど、そのときである。
　
　ずりっ……　ずりっ……　ずりっ……　
　　　ずりっ……　ずりっ……　ずりっ……
　　　　じゅるっ……　じゅるっ……　じゅるっ……
　
　笑い声に惹かれたのだろうか……。
　三匹の軟体生物が、笑い声の正体を突き止めようと瓢のいる家の辺りに集まってきた。
　郵便局付近で街灯のあるところが近いとは言え、その街灯が照らすのはその周囲のわずかな世界である。
　つまり、この場所にいる瓢は格好の餌なのだ。
　一通り見た後に落神神社に行く……。
　恐怖によって行動が阻害されてしまった瓢はそのことがすっぽり頭から抜け落ちていた。
　軟体生物は、次第に瓢から逃げ道を奪っていくのであった……。

このページにイラストを設定する