猫鳴館、自治会長選任戦1371～ボロボロボをぶっ壊せ！｜リアクション

猫鳴館、自治会長選任戦1371～ボロボロボをぶっ壊せ！

●新自治会長は――

　三体のボロボロボを倒した猫鳴館生たちは、猫鳴館に戻って来ていた。
　あいおはじめ、傷ついた者はマンモスの手当を受けた。
　落ち着いた頃合いを見計らって、近石簾が立ち上がった。
「猫鳴館が無事でよかった…何より安心、だぜ。みんな本当にありがとうな」
　誰からともなく拍手が上がる。
　そう、猫鳴館の平和は守られたのだ。
「次の自治会長も決まった。まだるっこしいことはいいよな？　見たとおりだ」

　そこで簾は大きく息を吸い、その名を呼んだ。

「邪衣士！　第123代自治会長は、あんただ」

「謹んで」
　士は簾の手を握る。
　こうして自治会長は引継がれた。
　２度目の自治会長となった士は、被った熊皮を襟を正すが如くきちんと被りなおした。
「３年間の集大成のつもりで引き受ける。みな、これからも猫鳴館魂で俺たちの居場所を守って行こう」

◇

「はいはーい！　戦いのあとは肉だろ肉！」
「あかりもお手伝いしたのなのよー」
　大江戸マンモスと橘明里が大皿いっぱいの豪快な肉を持って現れる。
　それから炭！　網！　トング！　すなわち！
「就任祝いの焼肉パーティー！！　さあガシガシ食いやがれです！」
「勝った人におっきなおにくをあげるなのー！　くまさんに大盛りー！」
　明里は大きな目をくるくるさせて、トングをカチカチ。
　猫鳴館的には虫料理とかのゲテモノの方が良かったか、というマンモス後輩からの問いにはこう答えた。
「今日はカオス料理はやめておこうなの！　一生懸命戦ってお疲れなみんなにおいしくないものを渡すのは良くないって、あかりでもわかってるなのから」
　ジュースのコップが行き渡ると、簾が高らかに音頭を取った。
「んじゃー、新しい自治会長の就任を祝いつつ！　全員に精一杯の感謝と称賛を！　乾杯！！」

　あいおは日向と乾杯しあう。
「今日はありがとうございました」
「どういたしまして。あ、逆巻くん」
　どうやら日向の猫鳴館の友人とは、天野のことであったらしい。
「やあ、光村。意外なところで。喜矢武の手助けをしてたんだ？」
「敵になっちゃってた？」
「そんなことない。猫鳴館の仲間に変わりはないし。ああ、肉のお供にご飯、食べる？」
　こんな焼肉タイムを予想して、天野は前日のうちに食材を揃え、下拵えしておいたのだ。
　ご飯も炊いていてくれたとあって、輝く白米の登場に、みんな感謝感謝である。
「疲れたし、みんな沢山と食べるといい」
　肉を食べない菜食家の天野は焼くばかりであったが、けっこう満足であった。

「猫鳴館の為に……まずはお祝い、かな」
　夏夜も、サキリや美野梨と団らんのひととき。
「そう言えば神野さん、どうして僕を応援してくれたの？」
「応援の理由？　夏夜さんの双子の妹さんとはねこみゅ仲間だし。一度経験している邪衣さんより新しい人がやったほうがいいと思ったのよ」
「そっか、負けてごめん」
「謝らないで。私たち一生懸命やったじゃない。それが大切なことだわ」
「そうだよ恵御納」
　戦いの場を離れたときのサキリはとても穏やかだ。
「ご覧の通り魔境じみた猫鳴館だけど、皆と力を合わせて守ることができてよかったよ。今後ともどうかよろしく、と言わせてほしい」
　サキリが差し出した手を、夏夜はおずおずと握った。
　夏夜とサキリの手を包むように美野梨も手を重ね、三人は互いに健闘を讃えあうのだった。

「猫鳴館ってところは聞きしに勝るカオスさだね。君、ここでやっていけるの？」
「自信なくなってきた……爆発とかあるし……」
　アシュリーと想花は１年生同士、ちびりちびりとジュースを啜る。
「そういえばアシュリーさんって桜花寮なんだよね。ぼく本当は桜花寮に入る筈だったんだ。だけど手続きミスでうっかり猫鳴館に入っちゃって……あっちはどんなかんじ？」
「どんなって、普通だよ。少なくともここよりはね」
　そりゃあそうか、と想花は遠い目になる。
　アシュリーは彼女を激励するつもりで言ってやった。
「日本のことわざにこういうのがあるだろう。――『郷に入っては郷に従え』」
「あ、そういうかんじ……？」
　想花は思った。そのうち、このカオスが日常になっているかもしれないと。
　彼女がいつのまにか自治委員に名を連ねているのを知り、自分の巻き込まれ体質に唖然とするのは数時間後のことである。
　

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