せんせいといっしょ：相原先生編｜リアクション

せんせいといっしょ：相原先生編

　一方の竜司は櫻の声に「だよなー♪」とにっこり笑う。彼はまゆの笑顔を思い出して胸の中がくすぐったくなっていたのだ。
「すっごくキュートで優しくて魅力的で……。まゆ先生、俺と結婚してくださーいっ！！」
　思わず叫ぶ竜司に、先頭集団で走っていたまゆは思わずくしゃみをしたとかなんとか。
（すっごく惚れてるんだなぁ……）
　昌也はそんな感想を持ちながら、女の子と一対一という事にならなくて内心ほっとしていた。ホスト部であるものの、彼は女の子と一対一になると怯えてしまう体質だったのだ。こうして竜司が傍にいる事で、昌也は普段通りに動くことができていた。

　こちらは先頭集団。陸上部やら体育系の部活や体育科に所属するメンバーで構成されている。相原まゆの傍をそれとなく桐野正也や柊沢北斗が入れ替わりつつ走り、その後ろ辺りで桜庭円が時折シャドーボクシングを交えて走っていく。１００ｍ事にダッシュと軽いランニングを行う御剣刀はつかず離れず、といった具合。そして穂高谷千代に続き志波武道と李小麗が全体の中程を走っていた。
「へぇ、なかなか板についてるじゃない」
「とっても軽やかなのだ。円ちゃん、かっこいいのだ」
　まゆと小麗はちらり、と円のシャドーボクシングを見て呟いた。それに対し、円は先日の事を思い出し、少し悔しさを滲ませながらもにっこり笑う。
「この間の公式戦では負けちゃったけど、もっと技術とか身につけてリベンジしたいって思ってるんだ」
「気合十分だな。なんだか応援したくなるよ」
　正也がそういえば、円は少し照れたように笑う。そんな彼女に釣られて北斗と刀もまた表情が明るくなっていた。
「参加してよかった。朝からこんなに弾んだ気持ちで走れたのは久しぶりだ」
「一人で黙々と走るのもいいけど、みんなと賑やかに走るのもやっぱり楽しいな。なんだか今日一日楽しくなりそうだ」
「そう言ってもらえると、企画した甲斐があったわ♪」
　２人の会話に、まゆも嬉しそうに応え、うんうんと千代と武道も楽しげに頷く。
「朝から思い切って走れるって最高！　もっともっと行こうよっ！」
「って千代ちゃんはやぁい♪　ぷりーずウェイト！」
　無邪気に笑って先頭に立ち、そのまま突っ走ろうとするが武道が一応諌める。釣られてまゆもダッシュすれば刀が気合を入れて走り出す。それをみて小麗もまた「楽しそうなのだ！」と追いかける。
「あらら、皆ダッシュしちゃう？　後ろの皆を忘れちゃだめだYO！」
「き、聞こえてるか……？」
「とりあえず諌める？」
　武道が呼びかけ、正也と北斗は顔を見合わせ、同じように突っ走ってしまったみんなに呼びかける。そのおかげか、突っ走ってしまった面々も落ち着いてくるのだった（但し刀は緩急を元からつけて走っているだけであったが）。
「やっぱり、みんなと一緒って楽しいね、にゃーくん」
　円の呟きに、にゃーくんは楽しげにしっぽをぴん、と立てて小さく鳴いた。