せんせいといっしょ：相原先生編｜リアクション

せんせいといっしょ：相原先生編

起：朝だよ！　走りたい人集まれ～っ！

＊午前４時
　お好み焼きの店・『うさぎ屋』の厨房。若い女性の威勢のいい声をBGMに、宇佐見望月はあくびを噛み殺しながらキャベツと向き合っていた。
（こんな日によりにもよって……）
　内心でため息を吐きながらちらり、と店主である姉をみる。彼女も慌ただしく準備に追われており、抜け出せる雰囲気ではない。
　体育教師であり、担任である相原まゆの誘いで早朝ランニングに参加しようと思っていた望月であったが、３０分前に姉に叩き起され町内会会議の差し入れを作る手伝いをするように言い渡されてしまった。仕方なく手伝っている望月だが、全てが終わったらランニングに行ったメンバーへ何か差し入れをしよう、と考えるのだった。

　同じ頃。シーサイドタウンのとある家では佐々寿美礼が目をこすりながら起床していた。小さくあくびをしながら身支度を整えるものの、やはり眠いものは眠い。冷たい水で顔を洗ったが、眠気はなかなか取れなかった。
（やっぱり、ここから寝子駅まで距離があるからねぇ。……この時間に起きたのは初めてかも）
　まだ太陽が登らない街を窓から見、ちょっとわくわくする寿美礼。彼女は水を飲みながらしばらく朝の風景を楽しむのだった。
　そして、星ヶ丘のとある家でも、柊沢北斗が目覚まし時計の音で起こされ、顔を洗っている所だった。朝には強い北斗ではあるが、愛嬌のある寝癖は中々直らないようで、今もぴんぴんと髪が跳ねている。
「うん、まだ間に合うな」
　時計を見ながらそう呟くと、北斗は軽めに朝ごはんを取ろうと台所へと入った。

＊午前４時２５分
　その頃、桜花寮の一室では八城昌也があくびを噛み殺していた。
「いやぁ、朝までフィーバーしちゃったねー」
　とは言っても、この時間までゲームをしていた訳だが。ホスト部の部長とは言えまだ高校生。その辺りはちゃんと弁えている。そんな昌也はふと、ある事を思い出す。
（確か、今日は朝早くからまゆちゃん先生が何かやるって話を聞いたんだよな～）
　詳しい事は思い出せないが、なんか面白そうである。
「よし、まゆちゃん先生に会いに行こう！　たしか寝子駅前だったな……」
　昌也はにこっ、と笑うと早速身支度を整えて早速寝子駅へと向かうのだった。

＊午前４時３０分
「おはようございますなのだーっ」
「あら、おはよう。早かったわね～」
　３０分前に猫鳴館を出発した後木真央は、準備を整えたまゆと玄関で話していた。
　真央はこのランニングの為に昨夜は午後９時に就寝し、今日は今から約一時間前に起床してここに来ている。そんな彼女は陸上部のTシャツにジャージの上着を羽織、黒い七分丈パンツという出で立ちだった。背中には愛らしい猫の形をしたリュックを背負っている。
　まゆの家までは中間試験前の勉強会で覚えていたので、真央は迷う事なくまゆの家まで走る事ができた。そんな彼女に、まゆは「元気ねぇ」と優しい笑顔を浮かべる。
「ごめんね、まだ準備途中なの。だからちょっと待っててくれるかしら？」
「わかったのだー」
　元気よく返事をする真央に、まゆは玄関の中で待つように言うと、部屋へと戻った。そして、数分後、シックな黒いリュックを持って現れる。明るい若葉色のジャージに桜の刺繍が入ったTシャツ、レモンイエローのランニングシューズという姿はぱっと見、まゆを大学生ぐらいに見せていた。
「まゆちゃん先生、かっこいいのだー！」
「おまたせ！　それじゃ、いきましょ？」
　ウインクするまゆに真央は頷き、２人は楽しげに話しながら寝子駅へと向かう。その姿は教師と生徒というよりは、同級生といった雰囲気だった。

このページにイラストを設定する