【中間テスト】猫パニック！　お手紙も書いてね！？｜リアクション

【中間テスト】猫パニック！　お手紙も書いてね！？

〇テスト２日目

　３年の椎井莉鳥は、２日目の試験も一応、無事に終えた。
（なぜか猫だらけで気が散りそうだったけど……）
　陸上部で集中力は鍛えているので、試験に没頭するうちに猫の鳴き声や動き回ったりする気配など、全く気にならなくなった。
（あっと言う間、だった気がする）
　集中が切れると、途端に空腹を覚える。
（お昼、どうしようか……）
　と思いながら学食へ向かったが、ずいぶん込みあっていた。
（……人が多いところは、気が進まないわ）
　なんだか、その中に元カレがいるような錯覚を感じて。
　莉鳥は回れ右して食堂を後にして、購買で適当なパン二つとねこーひー牛乳を購入した。
　とはいえ教室にも戻りたくなくて、屋上へ向かった。

「いい天気……」
　天気は五月晴れ、少し汗ばむくらいの陽気で、莉鳥は上着を脱いだ。
　適当な場所に座り込んで、もそもそとパンを食べねこーひー牛乳を飲む。
　特に美味しくもまずくもない。ねこーひー牛乳はもうあまり冷たくなかった。
（そろそろ進路相談があるはずね）
　莉鳥は進学──薬科大学か、薬学部への進学を決めていた。
　この前模試を受けたらA判定。合格可能性80％以上ということだ。
　それはいいのだが。
　薬剤師を目指している……というか、手に職をつけようというか。
　自分の将来像が今一つ明確化しない。
　木天蓼大学の薬学部が一番近いが、他にもいろいろ大学はある。
　たとえば京都の大学だって──
　そんなことが頭をよぎって、莉鳥は別なことを考えることにする。

　来月の陸上の県大会予選も間近だ。
（私の実力で県大会予選を突破できるかどうかは疑問だけど、高校最後だから、できるだけいい成績をとりたい）
　それから……
　莉鳥は考え続ける。

　少しでも思考を止めると、元カレのことを思い出しそうだった。
「まだ、私の心から出て行ってくれないの？」
　気が付けば、そうつぶやいていた。
　頭上に広がるこの空は、彼のいる京都までつながっているのだ。