【中間テスト】猫パニック！　お手紙も書いてね！？｜リアクション

【中間テスト】猫パニック！　お手紙も書いてね！？

〇試験前日
　
　１年生の梓智依子は、放課後も教室に残ってクラスメイトと試験勉強をしていた。
「梓さん、ここなんだけど……」
「ああ、これはね……」
　１８歳のシングルマザーである智依子は、彼女を慕う数学が苦手な年下の同級生たちにわかりやすく教えている。
（楓が待ってるかしら）
　４歳の娘の顔がよぎる。早く帰ってやりたいけれど。
（楓の相手をしてたら試験勉強はできないわね）
　とはいえ、ここでみんなに勉強を教えていても自分の勉強は進まないのだが……。
「あ、もうこんな時間ね」
　結局、閉門時間（午後７時）ギリギリまで勉強会を続け、急いで家に帰った。
「ママー」
　娘の楓が駆け寄ってきた。
「ただいま。いい子にしてた？」
　そっと抱きあげて少し相手をしたが、いつまでもそうしてはいられない。
　家の手伝いをし、食事をして、娘と一緒に風呂に入る。
「ママー、あしたははやくかえってきてね」
「そうね……ごめんね、ママしばらくテストで忙しいの。早く帰っても、楓と遊んでいられないと思うわ」
「えー、やだあ」
　寂しそうに言う楓の頭を優しく撫でる。
「そうね……なんとか考えてみるわ」
　楓を寝かしつけた後、祖父母に、
「おやすみなさい」
　と告げてから。
　智依子はは台所のテーブルで教科書とノートを広げ、最後の追い込みを始めた。

　１年生の月原想花は、雛鶴先生の家で行われた勉強会を終えて猫鳴館に帰った。
「ただいま……あれ？」
　大広間に顔を出すと、何人かが集まって教科書やノートを広げている。
「勉強会、参加しないか」
　先輩に声をかけられた。
「あ……はい、もう少し勉強するかな」
　そう呟いて、開いた場所に座りつつも想花は思う。
（もっとも、ぼくはあまり頭もよくないから、きっと大していい結果にはならないと思うけど……）
　やらないよりはましだよね、と思い教科書を開く。
　と、そこで先輩が何やら怪しげな行動をとり始めた。
　折りたたんだ紙を鉛筆に巻き付けている。
「え？」
　視線に気づいた先輩は、想花にガンをつけながら低い声で言った。
「おっと、ここで見たことは秘密にしてもらおうか」
「ええーっ？！」
「秘密が守れるなら、教えてやるよ」
　そこで先輩から教わったのは……なんと「絶対にばれないカンニングのやり方」だった！
（とんでもないこと聞いちゃった……どうしよう）
　唖然とする想花だったが、一方では好奇心もあって結局その場に残った。
「ひ、秘密は守ります……」
「よし！　代々の先輩から引き継がれた秘伝、すべて教えてやるよ！」
　それから想花は、カンニングペーパーの作り方仕込み方、デジタルカンニングの方法まで、実に密度の濃い内容を伝授された……。
　当然普通の勉強をする時間が取れなかったことは言うまでもない。
（ぼく、何やってるんだろ……カンニングなんて、する気ないのに）
「よし、後は君がこの秘伝を後輩に引き継ぐんだ。頼むぞ！」
「ええっ？」
　おろおろしつつ、今更断れない想花であった。

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