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- 種族
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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
６月の雨の中
●
「鬱陶しい雨」
宮野 雷子は雨が嫌いだ。
執事 ラム・Ｍ・シャーフを従えての買い物の帰り道、スマホの液晶で雨が弾けて、彼女は不機嫌に灰色の空を見上げる。
そろそろ暑くなってくる この季節、目星をつけていた欲しい洋服が見つかって、そこそこいい日だったかなと思っているけれど。
「雨、なかなか止みませんね」
ふわもこのたっぷりした白い髪を、後ろで一つに結わえたラムが困ったような、それでいて人の良さそうな笑みを浮かべて相槌を打つ。
2メートルの長身のラムは、お嬢様が濡れないよう、ずっと腰を屈めて傘を差していた。
もう片方の手で、雷子が買った服を濡れないよう、しっかりビニール掛けして大切そうに運んでいる。
雷子にとっては、使用人の当たり前の気遣い。
ありきたりの やり取り。
だから振っておいて、何事も無かったように雷子は、歩き出したのだけれど。
「……なんのつもり？」
荷物持ちをさせていたラムが、荷物を持ち替えて。
偶々空いた手で、雷子と手を繋いでいた。
大きくて、暖かい手。
指摘された執事は、緑の目を、それはそれは大きく見開いて。
自分の手の中の、しなやかな指先に気付くと、慌てふためいて問うてきた。
「お、おおおお嬢様！？ いかがなさいましたかっ！？」
「それはこっちのセリフでしょ、駄羊」
「はっ！ 確かに……確かに、おっしゃる通りでございます！ 申し訳ございません、お嬢様っ！！」
混乱したまま、ラムはピタリとくっついてしまった、けしからん己の手を離そうと試みる。
大切な御身、繊細な手。ラムは傷めないように、神経を尖らせる。
しかし神魂の影響で繋がれた手は、そう簡単には外れてくれない。
（……ひょっとして、神魂の影響かな？）
更に身を低くして悪戦苦闘するラムを見下ろして、雷子は小首を傾げた。
「無理に剥がさなくてもいいんじゃない？ 手を繋ぐ以外に、悪影響はなさそうだし」
「そんな畏れ多い！ 私めごときに、このような事が許されるはずが……！！」
「僕が、いいって言ってるんだけど」
「しかし……」
「 」
雷子の口元に、薄っすらと笑みが浮かんだ。青い瞳の眼力、無言の圧力。
「あ、はい……お嬢様がよろしいと おっしゃるのならば、このままでも私は……っ」
どこか嬉しそうに立ち上がると、ラムはお嬢様の隣へ並んだのだった。
しとしと降る雨を聞きながら、二人はプードルのマロンが待つ家を目指して、のんびりと歩く。
「ああ、考えてみれば、お嬢様と手を繋ぐというのは、何年ぶりのことでございましょう。あの頃はまだ執事としての心得もほぼなく、分不相応にも あたかも兄妹であるかのように、過ごさせていただいておりました」
夢見心地でラムが呟けば、雷子も頷く。
「そう言えば、昔は泣き虫のラムと、よくこうして手を繋いで家に帰ったっけ」
泣かせてた要因は主に雷子だけど、反省はしていない。
ラムもきっと、気にも留めていないだろう。
「幼少期を思い起こしてみれば、今の成長なされた姿が、まことに感慨深くございますね……。雷子お嬢様、大きくなられましたね」
にこりと微笑んで、ラムは言う。
その慈愛に満ちた表情に、雷子は少し驚く。
けれどそこは、お嬢様。顔に出すなんて、へまはしない。
「ラムほどじゃあないけどね」
羊も、お嬢様のツンケンした態度を、笑顔で流す。
（あの子羊が、まさかこんなにでかくなるなんて、誰が想像できるかって言うかね）
時には鬱陶しく思う事もあるけれど、嫌だと思った事は一度もなく。
僕は、この駄羊の事を、そこそこには気に入ってるのかな。
そんな雷子の想いが、ひょっとしたらラムには伝わっているのだろうか？
「これからも時がたち、大人になり、さらに老いても――」
気持ち、ラムが手をしっかりと握りなおした。
「私は、これからも、ずっとお嬢様にお仕え申し上げます」
「…………」
「お嬢様をお守りする役目は、いかなる御仁にも譲る気持ちはございません。お嬢様は、私がお傍にいる事を、許してくださいますでしょうか。願わくば、いつまでも。お嬢様と共に」
次第に熱を帯びる、羊の嘆願にお嬢様は、少しだけその柳眉をひそめて。
「当り前でしょ、僕以外に仕えたら許さないから」
そう、二人の約束は、二人にとっては何でもない“当たり前”の事。
お嬢様のお許しの言葉を聞いた羊は、嬉しそうに。本当に幸せそうに笑う。
「さて、夏が近いとはいえ、まだ少し冷えるね。帰ったらあったかいホットミルクでも飲みたいな」
「はい、仰せのままに」
私のお嬢様は、寒がりでいらっしゃるから。
「ホットミルクに限らず、何でもお申し付けくださいませ。私はお嬢様の執事なのですから」
「鬱陶しい雨」
宮野 雷子は雨が嫌いだ。
執事 ラム・Ｍ・シャーフを従えての買い物の帰り道、スマホの液晶で雨が弾けて、彼女は不機嫌に灰色の空を見上げる。
そろそろ暑くなってくる この季節、目星をつけていた欲しい洋服が見つかって、そこそこいい日だったかなと思っているけれど。
「雨、なかなか止みませんね」
ふわもこのたっぷりした白い髪を、後ろで一つに結わえたラムが困ったような、それでいて人の良さそうな笑みを浮かべて相槌を打つ。
2メートルの長身のラムは、お嬢様が濡れないよう、ずっと腰を屈めて傘を差していた。
もう片方の手で、雷子が買った服を濡れないよう、しっかりビニール掛けして大切そうに運んでいる。
雷子にとっては、使用人の当たり前の気遣い。
ありきたりの やり取り。
だから振っておいて、何事も無かったように雷子は、歩き出したのだけれど。
「……なんのつもり？」
荷物持ちをさせていたラムが、荷物を持ち替えて。
偶々空いた手で、雷子と手を繋いでいた。
大きくて、暖かい手。
指摘された執事は、緑の目を、それはそれは大きく見開いて。
自分の手の中の、しなやかな指先に気付くと、慌てふためいて問うてきた。
「お、おおおお嬢様！？ いかがなさいましたかっ！？」
「それはこっちのセリフでしょ、駄羊」
「はっ！ 確かに……確かに、おっしゃる通りでございます！ 申し訳ございません、お嬢様っ！！」
混乱したまま、ラムはピタリとくっついてしまった、けしからん己の手を離そうと試みる。
大切な御身、繊細な手。ラムは傷めないように、神経を尖らせる。
しかし神魂の影響で繋がれた手は、そう簡単には外れてくれない。
（……ひょっとして、神魂の影響かな？）
更に身を低くして悪戦苦闘するラムを見下ろして、雷子は小首を傾げた。
「無理に剥がさなくてもいいんじゃない？ 手を繋ぐ以外に、悪影響はなさそうだし」
「そんな畏れ多い！ 私めごときに、このような事が許されるはずが……！！」
「僕が、いいって言ってるんだけど」
「しかし……」
「 」
雷子の口元に、薄っすらと笑みが浮かんだ。青い瞳の眼力、無言の圧力。
「あ、はい……お嬢様がよろしいと おっしゃるのならば、このままでも私は……っ」
どこか嬉しそうに立ち上がると、ラムはお嬢様の隣へ並んだのだった。
しとしと降る雨を聞きながら、二人はプードルのマロンが待つ家を目指して、のんびりと歩く。
「ああ、考えてみれば、お嬢様と手を繋ぐというのは、何年ぶりのことでございましょう。あの頃はまだ執事としての心得もほぼなく、分不相応にも あたかも兄妹であるかのように、過ごさせていただいておりました」
夢見心地でラムが呟けば、雷子も頷く。
「そう言えば、昔は泣き虫のラムと、よくこうして手を繋いで家に帰ったっけ」
泣かせてた要因は主に雷子だけど、反省はしていない。
ラムもきっと、気にも留めていないだろう。
「幼少期を思い起こしてみれば、今の成長なされた姿が、まことに感慨深くございますね……。雷子お嬢様、大きくなられましたね」
にこりと微笑んで、ラムは言う。
その慈愛に満ちた表情に、雷子は少し驚く。
けれどそこは、お嬢様。顔に出すなんて、へまはしない。
「ラムほどじゃあないけどね」
羊も、お嬢様のツンケンした態度を、笑顔で流す。
（あの子羊が、まさかこんなにでかくなるなんて、誰が想像できるかって言うかね）
時には鬱陶しく思う事もあるけれど、嫌だと思った事は一度もなく。
僕は、この駄羊の事を、そこそこには気に入ってるのかな。
そんな雷子の想いが、ひょっとしたらラムには伝わっているのだろうか？
「これからも時がたち、大人になり、さらに老いても――」
気持ち、ラムが手をしっかりと握りなおした。
「私は、これからも、ずっとお嬢様にお仕え申し上げます」
「…………」
「お嬢様をお守りする役目は、いかなる御仁にも譲る気持ちはございません。お嬢様は、私がお傍にいる事を、許してくださいますでしょうか。願わくば、いつまでも。お嬢様と共に」
次第に熱を帯びる、羊の嘆願にお嬢様は、少しだけその柳眉をひそめて。
「当り前でしょ、僕以外に仕えたら許さないから」
そう、二人の約束は、二人にとっては何でもない“当たり前”の事。
お嬢様のお許しの言葉を聞いた羊は、嬉しそうに。本当に幸せそうに笑う。
「さて、夏が近いとはいえ、まだ少し冷えるね。帰ったらあったかいホットミルクでも飲みたいな」
「はい、仰せのままに」
私のお嬢様は、寒がりでいらっしゃるから。
「ホットミルクに限らず、何でもお申し付けくださいませ。私はお嬢様の執事なのですから」
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2013年10月28日
- 参加申し込みの期限
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- 2013年11月04日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2013年11月04日 11時00分
