6月、梅雨の真っ只中。
その日も、午後から急に雨がパラつき始めた。
「……何のつもりだ?」
海原 茂は、並んで歩く
鷹取 洋二に尋ねた。
「先輩こそ、何のつもりです?」
きょとんと、洋二も聞き返す。
二人とも、釈然としていなかった。
釈然としてはいなかったが、彼等は今、しっかりと手を取り合っていた。
いや、手を繋いでいると形容した方が、しっくりくる。
「おい……いい加減、離せ」
「先輩こそ、離してくださいよ」
モヤっとした感情が、二人の間を流れる。
そして茂は気付いた、そうか
ま た 神 魂 の せ い か !
(*洋二は、無自覚の もれいびです)
忌々しい想いで、茂は手をひっぺがすと、洋二と距離を取ってずんずん目的に向かって歩き出した。
●
同刻。何か様子がおかしい様な気がして、犬飼 未央は辺りを見回した。
周囲ではなぜか、老いも若きも、男も女も手を繋いでいる人が多く見受けられる。
皆、ちょっと浮き足立っているような、戸惑っているような……。
降り出した雨を避けるため、木の下に入った未央の前を、1本の傘を開いた白髪頭の老夫婦が横切って、そうして空いている方の手を自然に繋いだ。
「あら、何? あなたったら、急に手なんか繋いで」
「トシコこそ、年甲斐も無く……」
老夫婦は、互いの顔を驚いたように見つめて。得心が行ったように、また前を向く。
「ほら、もっと寄りなさい。濡れてしまうぞ」
「あなたこそ、ちゃんと自分に傘を差しなさいな。肩が濡れてるわ」
そうして小さな含み笑いをしながら、老夫婦は手を繋いだまま、歩み去って行く。
その背中を、そっと見送って。そして不思議な“声”を聞く。
『やれやれ、あの雨雲のせいか。全く、面倒ごとに事欠かないぜ』
頭の中に、響いてくるような“声”。足元を見やれば、落神
テオドロス・バルツァ。少なくとも見た目は、灰色の猫である。
「猫……?」
『俺は猫じゃねえ!』
ぴしゃりと言い放つと、テオはフンと鼻を鳴らす。
確かに普通の猫は喋ったりしないし、何よりテオからは圧倒的な“力”を感じる。正直、とても怖い……。
『ま、この雨は大した事がないし、じきに止むだろう』
釣られて上空の雲を見つめる事しばし、再び見下ろせば、もうテオの姿はない。
聞いた“声”は、4月に聞いたものと似ていた。
今のが落神だろうか?
雨雲? ひょっとして、そのせいで皆が手を繋いでいるのか。
テオに言われた事を思い出し、しばし考えたが答えは出ない。
だが手を繋ぐだけの効果のようだし、あまり気にしなくても良いのかもしれない……。
メシータです。今回、皆さんは雨の降っている間、傍に居る誰かと手を繋いでしまいます。神魂の影響です。
老若男女関係ありません。
互いに手が届く範囲内に入ると、勝手に手を繋いでしまいます。
頑張れば、手を離す事も可能です。つるつるのテーブルに垂らして乾かした、木工用ボンドを剥がす程度の努力で、離せます。
*ろっこんをご存じないPC様は、その旨をアクションにお書き添えください。描写が変わります。何も書かれていない場合は、知っているものとして扱います。
■場所・時間・状況
寝子島全域。PC様が居る場所をアクションにお書きください。時間は休日の昼下がり~夕刻にかけてです。日が暮れかける頃、雨は上がります。
神魂の影響(恩恵?)を受けられるのは、屋外だけです。屋内、或いは完全に雨を遮断出来る場所に避難すれば、神魂の影響から開放されます。
テオはガイドでの話は、未央にしかしていません。皆さんは何故自分達が手を繋いでいるのか、理解していません(予測する事は出来ます)。
■ガイド登場NPC
*NPCには、構う必要はありません。何事も無ければ、描写は行いません*
●海原 茂
寝子島高校の生徒会長。3年生。猫鳴館から旧市街に買い物に向かうようです。食料品など重いものを買い込むので、洋二と行動を共にしていますが、距離を取って歩いています。
●鷹取 洋二
ワカメ頭のナルシスト。2年生。茂と共に、急ぎ足で旧市街に向かっています。
●座間 トシコ
桜花寮の寮母。夫のトシゾーと、シーサイドタウンの海浜公園を散歩中。
このまま夕飯の買い物をして、自宅に帰ります。
●犬飼 未央(いぬかい・みお)
16歳の少年。雨が止んだら、本土に帰ります。
●テオドロス・バルツァ
落神。猫の姿をしています。
すでにどこかへ行っていて、いません。
ではでは、お気に召しましたら、遊びにいらしてください。