【中間テスト】雛鶴先生の勉強会｜リアクション

【中間テスト】雛鶴先生の勉強会

☆お邪魔します！

「み、皆さんようこそいらっしゃいました！　ウォルター先生もよろしくお願いします」
　少し息を切らしたさゆり先生が現れ、丁寧にお辞儀をしました。
「こちらこそ～」
　ウォルター先生は余裕の笑みで答え、さゆり先生は緊張の残る顔で皆を見回します。
「えーと、これで全員かしら？」　
　先生が指さして数え始めたところへ。
「遅れたー！」
　野々ののこと佐藤英二が駆け込んできました。
「間に合った～！　おはようございます！」
　英二は、担任の雛鶴先生が勉強会を開くと知って、ののこを誘って参加することにしたのでした。
（野々さん今年もピンチかも、だし……これは渡りに船！　ウォルター先生もいて心強いし）
　こうして参加者は全員揃い、無事先生の家に招き入れられたのでした。

「ハイテクなインターフォンで失敗したのですか。無理もありません。小萩も苦手です」
「そ、そうよね。落ち着いてやれば大丈夫なんだけど……小萩さんにも苦手なものはあるのね」
「雛鶴先生には普段、美化委員長としてのとってもすごいパーフェクト小萩しかお見せしていないので、ちょっとびっくりされてしまうかもしれません。
でもそんなギャップがあるのも小萩の魅力です」
「そ、そうね」
「今でもハイテクはこわいのですが、こわいままではいけない！　と向上心にあふれる小萩は思うのです。そこで勉強会に来ました。これは岩手の実家から届いた岩手銘菓ですが、どうぞ」
「まあ、そんな気を遣わなくていいのに。ありがとうございます」
　さゆり先生はお土産を受け取り、家のドアを開けました。
「どうぞ」
「おじゃましまーす！」
　ののこが元気に声を上げて一番乗りし、皆がそれに続きます。　
（お、お金持ちのおうちだ……）
　招き入れられた客間の広さと豪華さに想花は緊張します。
「客間とリビングを使ってください。好きなところに座ってね」
　どちらの部屋も綺麗に片付けられています。

「あ、ケーキと茶葉を持ってきたので……みんなでどうぞ」
　と、家庭科が得意な柚春が袋を差し出しました。
　レモンとアールグレイのアイシングケーキに、夏用に試作ブレンドした柑橘類フレーバーの茶葉です。
（ウォルター先生はレモン好きみたいだし、気に入ってくれるといいな）
「え、もしかして自分で作ったんですか？！　すごいわ」
　包装に店名がないことに気づき、さゆり先生は感嘆の声を上げます。　
「勉強の休憩には甘いものとかさっぱりした香りが気分転換になるかなと思って」　
「美味しそう！　楽しみ～」
　ののこは今から休憩が楽しみのようです。
　お土産をキッチンへ持っていく途中、さゆり先生と莉鳥の目が合い、先生は何か安堵したような表情を浮かべました。
（頼られているのかしら）
　莉鳥は思います。
　実は莉鳥は、雛鶴先生とは新学期が始まる前に知り合っています。
　先生が寝子高にたどり着けずに迷子になっているところを助けたのでした。
　莉鳥がここへ来たのは、自宅では色々あって集中できなかったりするからでした。
　特に、腐れ縁の元カレの件。
(さすがにここではウォルター先生の目も光っているから、勉強に集中せざるを得ないわよね）
　その心の声が聞こえたかのように。
「勉強に集中せずに余計な話をしてる子には、遠慮なくチョークを飛ばさせてもらうねぇ」
　にっこりとウォルター先生が宣言し。
　皆は背筋を伸ばして勉強を始めるのでした。

　

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