【中間テスト】雛鶴先生の勉強会｜リアクション

【中間テスト】雛鶴先生の勉強会

☆魔弾の出番！

「そのTシャツ、いいね～」
　想花のTシャツを見て、滴が声をかけました。
　黒いTシャツには、ダークエルフが赤い甲冑の騎士と切り結ぶ絵が描かれていました。
「ありがとう。なんとなくファンタジーっぽいのが気に入って古着屋で買ったんだ」
　そこから話題は、死と幻想の世界のことになって。
「……そこへ死神が、赤い騎士を追いかけてきたんだ」
　ついつい二人で、死をめぐるダークな物語を即興で語り始めるのでした。
　いつの間にかさゆり先生と小萩まで話に聞き入っています。
「ふむふむ、なるほど、ダークエルフは死神の手先なんですね！」
　目を輝かせ、声を大きくしてしまう小萩。
「うん、それで赤い騎士は……」
　ヒュッ！
　想花の額に、ウォルター先生のチョークがヒットしました！
「うわっ！」
　痛くはなかったけど、びっくりして額を押さえてしまいました。
「おしゃべりはほどほどにね」
　にこやかにウォルター先生が言います。
「ご、ごめんなさい……」
　想花は真っ赤になって冷や汗をかきました。
（すごい、かっこいい……けど僕は投げられないようにしないと）
　柚春は初めて見るチョーク投げに目を丸くし。
「すごい！　今のがウォルター先生の魔弾ですね！」
　さゆり先生は瞳をキラキラさせました。
　想花は口をつぐんだものの、心の中で独り言を言い始めるのでした。
（……びっくりしたあ。痛くはなかったけど恥ずかしい……はっ、今ので額に第三の目が開眼したらどうしよう）

　小萩は話が中断したことを少し残念に思いながら、ダークエルフと赤い騎士の話をメモに取ります。
　ウォルター先生は小萩が所属する華道部の顧問です。
　部活では魔弾が飛んでくることはないのですが、いろいろお世話になっています。
　学校の成績は、小萩のすごさを計測できるようになっていないので、情報以外はどの教科もフツウくらい。
　授業中の小萩は、ほとばしるクリエイティブなパッションから授業を忘れて創造の世界に旅立ってしまうことがよくあります。
　だから想花の気持ちはよくわかりました。
（今も、小萩にチョークが飛んできても不思議はない状況でした）
　今開いているノートもそうですが、どの教科のノートでもイラストやアイデアメモがいっぱいなのでした。
　シュッ！
　その時、目にもとまらぬ速さでチョークが小萩の額に当たりました。
「あっ！」
　死神の絵を描いているところを、ウォルター先生は見逃さなかったのです。
「失礼しました。勉強だけに集中すればまた違うのかもしれませんが、小萩は学徒である以上に創造者なので！」　
「本条のすごさは僕もわかってるよぉ。でもせっかくの勉強会だしねぇ。わからないことがあったら僕にも聞いてねぇ」
　爽やかにそう言うウォルター先生を見ながら、莉鳥は首をすくめます。
（余計なことを思い出してると私もチョークを食らいそうね。……それにしても、何で思い出すのかな？）

　英二は、ボーッとしたののこの顔を見て、勉強に飽きてきているのがわかりました。
（折角、雛鶴先生の家に来てるんだし、野々さんもきっと好奇心とかでウズウズしてそうな気がするから……）
「もう少ししたら、適度に休憩を取って雑談タイムとかにしませんか」
　その提案に、さゆり先生は頷いて時計を見ました。
「そうね、そうしましょう！　あと１０分たったらお菓子を用意しますから、頑張って」
　それを聞いて皆、一生懸命集中しました。

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