【中間テスト】雛鶴先生の勉強会｜リアクション

【中間テスト】雛鶴先生の勉強会

☆エントランスで

「……これがお金持ちの住むマンションか……」
　月原想花は、いろんな感情を抱えて、星ヶ丘の雛鶴さゆり先生の自宅マンション前に立ちました。
　三分の一は怯え気味、三分の一は卑屈、残りの三分の一は好奇心といったところです。
（このエントランスだけでも、猫鳴館が半分くらいは入りそうな気がする）
　自作のファンタジー小説で、王宮や貴族の館の描写を書くことがある想花ですが。
（一般的なお金持ちの家がこんなに豪華だなんて、ぼくの想像力は貧弱でダメダメだ……）
　うつむいて凹んでしまったところへ。
「想花ちゃん？　こんにちは～」
　自分を呼ぶ声に、驚いて顔を上げると。
　そこには黒と白のツートンカラーのロングヘアの少女、黒白滴が立っていました。
「滴さん？　もしかしてここに住んでるとか」
「違うよ～、勉強会に来たの」
「ああ……ぼくもだよ」　
　滴に会って、想花はなんだかホッとしている自分に気づきました。
　彼女とは新入生歓迎会と遠足で行動を共にしたことがあり、なんとなく一緒にいて緊張しない相手なのでした。
「滴ちゃん、インターフォン鳴らす？　誰か来るまで待ってみようか」
　内向的な想花は、自分でインターフォンを鳴らして先生と話すのは怖かったのです。
「誰か来てからでもいいと思う～。まだ時間あるし」
　滴も同意しました。

「ここが雛鶴先生のマンションね」
　椎井莉鳥は、先生が中間試験前の勉強会を開くと聞いて訪ねてきました。
　想花と滴が玄関ホールで話していたところにやってきた莉鳥は、
「勉強会に来た人たち？」
　と二人に確認すると、ためらうことなくインターフォンのボタンを押しました。
『はーい』
　さゆり先生の声がしましたが。
　ブツッ。
　次の瞬間、インターフォンは切れてしまいました。
「ど、どうしたんだろう？」
　びびる想花に、莉鳥は無表情に言います。
「ああ……先生なら割とここで躓きそうよね」
　もう一度鳴らすと。
『……ご、ごめんなさい！　今開けるわね』
　しかし自動扉は開かないまま。
「あれ……？」
　見ると、扉から見える奥にある、別の扉が開いているのでした。
「先生、開きません。開いたのは中の扉みたいです」
『ごっごっ、ごめんなさい！　今迎えに行きます！』
　莉鳥たちがため息をついているところに、
「皆さん、こんにちはなのです。ややっ、これはハイテクな玄関ですね！」
　本条小萩が現れました。
「おはよう、あおい」
「おはよう修君」
　そして、エントランスに入る前に挨拶を交わしているのは、事前に相談して参加することにした八神修と七夜あおい。
　その後ろからは。
「ウォルター先生、おはようございます！」
「おはよう、稲積」
　稲積柚春とウォルター・ブラックウッド先生がやってきたのでした。
（ウォルター先生の授業を受けられるチャンスだ）
　いろいろ噂は聞いているのですが、去年も今年もウォルター先生の担当は3年生なので、柚春は授業に参加したことがありません。
（どんな教え方なのか興味あるな）
　脳が活性化し、集中できるというペパーミントと、リラックス＆リフレッシュできるオレンジスイートがベースのアロマブレスレットをつけてきました。

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