【中間テスト】雛鶴先生の勉強会｜リアクション

【中間テスト】雛鶴先生の勉強会

☆お菓子タイム

「はい、そろそろ１０分ね」
　そう言って立ち上がったさゆり先生の後を追って、修がスッと手伝いに行きます。
（手土産持参は他の皆が居心地悪くなる、それなら手伝いをしよう）
　と考えてのことでした。
「先生、お手伝いします」
　後ろに近づかれたさゆり先生は思わず合気道の構えを取りましたが、すんでのところで修のほうを見て、
「あら手伝ってくれるの？　ありがとう」
　と手を引っ込めました。
　先生の視線が修の背後にも向けられ、振り向くとあおいも来ていました。　
（あおいも……息ピッタリか？）
　心がふんわり、ほっこりする修です。
　柚春が持ってきたお茶をさゆり先生が淹れ、その間に修がケーキを切り分けます。
「小萩ちゃん、お菓子ありがとう」
　あおいはそう言いながら小萩のお土産の、ホワイトチョコで黄身餡をコーティングした『にゃもめの玉子ミニ』を机に出しました。
「どういたしましてなのです。実家から送ってきたものなのでご遠慮なく」
　小萩は胸を張り、ののこは嬉しそうに一つつまみます。
「ありがとう、小萩ちゃん～」
　お茶を淹れながら修はさゆり先生に尋ねます。
「先生が受験生だった時の話など聞きたいですね」
（年も近いし、共感あるあるかもな）
「受験生のころ？　そうね、教科ごとに違う家庭教師の先生に教えてもらっていました。毎日いろんな先生が来て楽しかったです」
「え、毎日違う先生？！」
　あおいは驚きましたが、修にはそれほどの驚きはありません。
「先生にも得意不得意はありますから、得意な教科を教わるのがベストでしょうね。もしかして全員女性でした？」
「ええ、よくわかりましたね」
「たぶん親御さんが心配されたんじゃないかと」
　修の言葉に、さゆり先生は頷いて、
「心配してくれるのはありがたいですけど、男の先生にもちょっと習ってみたかった気もしますね」
　と笑うのでした。

「ケーキも美味しいけど、このお茶も稲積が作ったの？　美味しいよ。すごいねぇ」
　喜んでケーキを食べながらお茶も褒めてくれるウォルター先生に、柚春は嬉しくなりました。
「気に入ってもらえたようでよかったです」
　お仕事モードの先生を見れたら嬉しい、と思っていました。
　生徒なんだって自覚ができたとき、嬉しいのか寂しいのかで迷っている気持ちも鮮明になる気がしたのです。
（……嬉しい、んだろうな、僕は）

　英二は、コンビニで買ってきたお菓子を広げていました。
「野々さん、烏龍茶飲む？」
「うん！　ありがとう。英二くん、このにゃもめの玉子おいしいよ♪」
　菓子をつまみながら和気藹々と話します。
「先生達は普段どんなふうに過ごしてるんですか？　趣味とか」
　聞かれたさゆり先生が首をひねります。
「うーん、趣味と言えるほどではないんですけど。最近は音楽を聴いてアイドルについて勉強しています。アイドル研究部の顧問になったので、少しは知らないとと思ったんですが、なんだか元気になりますね」
「どうして先生になろうと思ったんですか？」
　英二の問いに、小百合先生はまた首をひねってから答えました。
「私、世の中のことがあまりわからなくて……毎日いろんな家庭教師の先生が来ていたので、私でもなれそうな気がしたんです。でも家庭教師だといろんなところへ行くのに道に迷いそうだから、学校の先生がいいなって思ったんです」
「なるほど……」
「高校の先生なのはどうしてですか？　小学校とか中学校の先生じゃなくて」
　ののこが突っ込む。
「それは……私恥ずかしがりなので、子供たちにからかわれたりするのちょっと怖くて……高校生なら大人だから大丈夫かなって」
（そこまで正直に言わなくても）
　聞けば聞くほど、先生らしくない答えが返ってきて、傍で聞いている莉鳥はなんだかはらはらしてしまいます。

（正直な先生だなあ）
　そう思う英二です。
（やっぱり最初から先生らしくはなれないよね）
　

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