【球技大会】思い出に残る初夏の大会へ｜リアクション

【球技大会】思い出に残る初夏の大会へ

　体育館にどよめきが起こる。
「あれって選手だよな？」
「誰かの妹とか」
「でも、ユニフォームは周りと同じだよ？」
　話題の人物、白真白は白い長髪をツインテールにして柔軟に励んでいる。
「なんか身体が軽いかも」
　身長の低さを気に病んでいるようには見えない。右目の義眼は今日も赤く燃えていた。
　試合はジャンプボールで始まった。敵のボールとなり、真白のチームは防御を固めた。スリーポイントを打たせないように一人が飛び出して牽制する。敵は苦し紛れのパスを出した。
　走り込んだ真白が横からボールを奪う。
「みんな、行くよ！」
　多くの観客が驚きの声を上げた。低い身長を活かしたドリブルに誰も手を出せない。立ちはだかる敵を次々と抜いていく。
　最後はボールを両手に持った状態で跳んだ。敵を引き寄せた状態で走り込んだ仲間にパスを出した。見事な連携からシュートに繋げる。
　バスケットの中央を捉えた。
「ナイスシュート！」
　真白は仲間とハイタッチを交わす。
「いいぞ！」
「ナイスドリブル！」
「次も頼むぞ！」
　不安の声は全て消し飛び、声援に変わった。
「任せてよ！」
　真白は笑顔で返した。
　先制点を取られたことで敵の表情が変わった。一気に試合が引き締まる。
　激しい点の取り合いへと突入した。
「まだまだ！」
　真白は低い姿勢のドリブルで敵陣に切り込む。パスと見せかけて果敢にシュートを放つ。その内の一本はスリーポイントで得点に貢献した。
「この勢いでいくよ！」
　真白は小さな身体で躍動した。高揚した仲間は思い思いに声を張り上げる。
　チームの結束力は高まり、終了のホイッスルが鳴るまで全力を尽くし、観客を大いに沸かせた。
「良かったぞ！」
「次の試合も楽しみにしているから！」
「最高のドリブルだったよ！」
　引き上げる真白に温かい声が飛ぶ。
「最後まで応援、ありがとう！」
　仲間の中には嬉し涙を流す者がいた。全力のプレイでへたり込んだ者には真白が声を掛け、肩を貸した。
「ごめんね、もう足がふらふらで」
「いいよ。私も腕や足がぷるぷるするし」
　真白は、はにかむように笑った。
「そうなんだ。だから、勝てたのかな」
「みんながいたから勝てたんだよ。勝敗も大事かもしれないけど、最後の球技大会だから楽しみたいよね」
「そうだね」
　共に笑ってコートの外に出た。

　球技大会の二日間、真白は全力を出し切った。最後は笑顔で、楽しかったー、と夕焼け空に向かって呟いた。