【球技大会】思い出に残る初夏の大会へ｜リアクション

【球技大会】思い出に残る初夏の大会へ

　夏風遥はとにかくクラスの為に動き続ける。
「これ、私が用意したタオルだから遠慮なく使ってよ」
「ありがとう。助かる」
　サッカーのハーフタイムを迎えた男子がタオルを受け取る。頭から被ってゴシゴシと吹いた。遥は傍らに立ってペットボトルを差し出す。
「水分補給は大事だよ」
「悪いな、何から何まで」
「そんなことないよ。みんなが勝ったら私も嬉しいんだよ」
　水色の目を細めて笑う。
「夏風さん、こっちにも飲み物、貰えるかな」
「お呼びが掛ったので！　後半も頑張ってね！」
　長い黒髪を弾ませて遥は駆けていく。用意したクーラーボックスからペットボトルを掴み取ると、おまたせー、と明るい声で走っていった。
　目にした男子達は安らいだ顔で口々に言った。
「なんか、和むよな」
「みんなのマネージャーって感じだよな」
「それに明るいし、こっちも頑張らないと」
「そうだな。そろそろ後半戦が始まるようだ」
　審判が咥えたホイッスルを吹いた。男子達は一斉に飛び出して自分のポジションに向かう。
　遥は観客の一人となって大きく手を振った。
「みんな、頑張れー！」
　後半戦が始まった。遥が応援するクラスは果敢に攻め込んでゴールを狙う。
「いけ、いけー！」
　遥は拳を突き上げて叫ぶ。
　相手の固いディフェンスをこじ開けてボールを蹴り込む。上部のクロスバーに当たって得点を逃した時は大きく仰け反った。
　思い直した遥は両手を叩きながら、まだまだこれからだよ！　と顔を真っ赤にして声を振り絞る。
　その甲斐もあってコーナーキックを得た。
「得点のチャンスだよ！　落ち着いていこう！」
　一瞬の静寂。蹴ったボールは高々と上がる。ゴール前に選手が集まり、一人が跳んだ。他の者を超えてこめかみでボールを捉え、打ち下ろした。
　キーパーは上体を倒し、両手で掴もうとする。バウンドしたボールはキーパーの頭上を越えてネットを揺らした。
「追加点だよー！」
　遥は跳び上がって喜ぶ。周囲にいたクラスメイトと笑顔でハイタッチをした。
「夏風さん、探したよ！」
　後ろからの声に驚いた顔で振り向いた。
「どうして？」
「バスケの試合だって！」
「……出番がきたってことかな？」
「そうだよ！」
　女子に手を掴まれた遥は、サッカーの試合が～、と未練がましい声で連れて行かれた。

　体育館でバスケットボールの試合が始まる。
　遥は全力でボールを取りにいく。サポート役に回ったことが祟って相手の動きに翻弄される。
「……練習不足だね」
　肩で息をしながらも諦めずに相手に食らい付く。パスカットをして即座にドリブルに繋げた。
　ゴールの手前まで運ぶがディフェンスに阻まれ、苦し紛れにシュートを放つ。
　バスケットの縁に弾かれた。そのボールを仲間が跳躍して片手で押し込んだ。
「やったー！」
　遥は仲間達と喜び、最後までコート内を走り回った。
　その試合は辛勝となり、次でスタミナ切れを起こして負けた。
「青春っていいよね」
　汗だくの状態で遥は仲間達と笑みを交わした。