【三寮祭】ばっひゅーんシャッフル☆ナイト｜リアクション

【三寮祭】ばっひゅーんシャッフル☆ナイト

●猫鳴館～チャイナっちゃいな・その７

　麻雀を抜けた龍目豪は大部屋を出て、卒寮生コンパの部屋に顔を出した。
　そこにはかつての自治会長・海原茂や、星ヶ丘寮出身ながら学生当時は味わえなかった自由を体験してみたいとやってきた剣崎エレナほか、数名の大学生や社会人がたむろしていた。
　豪は茂の傍に膝を寄せ、話しかける。
「先輩、お久しぶりです。こないだのサバイバル配信見ましたよ！」

「ああ、無人島の」
　配信者ウナウナとしての自分を知られていることがこの古巣では気恥ずかしく感じるのか、茂は微妙な顔で返事をする。おちこぼれ姫のことも、茂の性格も、ここのメンツはおおよそ知っていることなので、取り繕っても今更なのだが。
「俺も参加したかったけど、安全第一で皆を脱落させないことを考えちまうから趣旨が違っちゃいそうで」
「探検部はそこは絶対だもんな」
「そうなんです。しかしほとんど脱落者がなく協力し合ってて感心しました。俺も機会があったら挑戦してみたいですね」
「そうか、パンダに言っておくよ」
　あれやこれやとサバイバル談議に花を咲かせているとエレナが会話に割り込んでくる。

「男同士で楽しそうね。私も混ぜなさいよ」
「久しぶりだな。剣崎は今どうしてるんだ？　俺はマタ大の教育学部だ」
「私もマタ大よ」
「そうだったのか。校内で会ったことないよな、何学部だ？」
「法学部。将来の夢は政治家よ。生徒会長にはなれなかったけれど、あの落選が私の本気に火をつけたの。見ててごらんなさい、日本国民を私が導いてあげるわっ！」
「そうか、剣崎らしいや」
　彼女は相変わらずだ。それが豪は嬉しかった。

◇

　さらに深夜。
　まだ遊んでいる者もいるようだが、大方は眠りについたころ。
　大江戸マンモスは人目を忍びつつ猫鳴館の周辺を探検していた。
『人目に付かない場所に何かヤバイ秘密があるんじゃねえの？』
　そんな疑惑が頭から離れなかったからだ。
　猫鳴館の周りは町の灯りも届かない深い森。猫鳴館から漏れる光以外に灯りはない。
　ひゅうと吹く冷えた風が頬を撫でると、追ってざわざわと森が鳴る。
「深夜になると流石に不気味ですねえここ……」
　刃物を振り回す殺人鬼が出て来てもおかしくない雰囲気だ。
「まあ私は科学の信奉者。オカルトなんぞ信じちゃいませんが」
　まさにそう口に出した刹那、がさっと明らかに不自然に茂みが鳴る。
「や、やべえですっ。逃げろっ」
　正体を確かめるなんてとんでもない。一目散にマンモスはその場を逃げ出す。
　だって、妖怪だったら困るじゃないか！

◇

「それはきっと猪だよ」
　翌朝、マンモスが夕べのことを話すと、猫鳴館生たちは笑っていた。
　山だから動物も出るんだよね、と。
　しかし、だ。
　マンモスは別の奇妙な噂を聞いた。
　ゆうべの麻雀に、どこの誰とも知らない女の子が混じっていて、その子は気づけば消えていたと。
「やっぱり絶対何かいる……結構気に入ったです。私も猫鳴館寮生になりましょうかね？」
　こうして新たな猫鳴館の住人がまたひとり誕生したのである。