【三寮祭】ばっひゅーんシャッフル☆ナイト｜リアクション

【三寮祭】ばっひゅーんシャッフル☆ナイト

●猫鳴館～チャイナっちゃいな・その６

　わいわい賑やかな夕食後、片付けを終えると自然と大部屋に人が集まって来た。
　誰かがボードゲームを押し入れから出して来たのを皮切りに、大ゲーム大会が始まった。

「すごい、いろいろある！　こっちは定番のゲームだね。あっ、これ古いボードゲームを紹介するサイトに載ってて興味があったんだ！　こんなのもあるなんて、さすが猫鳴館」

　佐藤英二は身を乗り出して端の擦れた箱の数々を手に取る。
　いかにも昭和な雰囲気の絵が書かれたゲームの箱たちは、かつての猫館生たちが代々置いて行ったものなのだろう。遊びこまれたものもあれば、まだ真新しく見えるものもある。おばけ屋敷〇ームや鉄道旅行〇ーム、ジャンボ旅行〇ーム、ドラキュラ〇ーム、大予言〇ーム、大地震〇ーム、水戸黄門日本漫遊〇ーム……どれもこれも、紹介サイトで見たことがあって一度遊んでみたいと思っていたものばかりだ。
　そんななか、近石簾があるボードゲームの箱を取り上げた。
「これなんかどうだ？　チャイナのテーマに合いそうな、中華風ファンタジーの国盗りゲーム！　武将コマのフィギュアがめちゃくちゃかっこいいんだぜー」
「いいね、面白そう！」
　英二は目を輝かせる。
　参加者を募ると、野々ののこと仙藤蒼も手を上げた。
　ゲームの開始に先立ち、それぞれ自分の分身となるフィギュアを選ぶ。それらは基本的に赤や青といった原色一色だが、簾がつまんだフィギュアはマントと肌だけ色が塗ってある。
「先輩が挫折して置いてったのかね」
　そんなところも歴史が感じられて面白いと簾は思う。
「せっかくだからお菓子を賭けようか」
　英二の提案に皆乗って来て、ただゲームするより本気度があがった。
「ああ、くそっ呂布め！　力押し強すぎでしょ」
「喰らえ、美女連環の計！」
「やだー！　貂蝉さん策略カード仕掛けてくんのやめてー！」
「やらいでかっ」
　盛り上がる盤上。
　訳も分からずコマを進めるののこが意外に強かったり。
　正面突破しか考えていない熱血簾は、計略にとても弱かったり。
　堅実さで勝てそうな英二だが、いいところでつい人に譲ってしまったり。
　そんな中、最終的に独り勝ちしたのは根っからのゲーマーな蒼であった。
「見た目かわいい女の子と油断してた？　残念！　ゲーマーの誇りに掛けてそう簡単には負けないよ」
「すげーな！」
　してやられた簾が、逆に清々しく笑う。
　そういう人がいるからゲームは本当に楽しくなる。
「もう一戦！」という気になるのだ。

　ボードゲームで盛り上がるグループと反対側では、往年のレトロゲーム機が稼働している。
　小豆色の四角いコントローラーを握っているのは大江戸マンモスと月原想花。
　ピコピコと懐かしい音の中、二人が操るキャラクターはより早く上層へ向かい、相手を下層へと落とすべく氷を割る。
「この１６色しか表現できないドット絵がたまらないよな」
「ちょ、追って来ないで。に、逃げたらだめ？　えいっ」
「上等！　そうくるなら本気でいくぜ」
　持ち前のゲームの腕前をみせるマンモスにドキドキしながらも想花も善戦する。

　そうしたボードゲームやレトロコンピューターゲームに飽きてくると、定番中の定番、麻雀をはじめる輩が出始めた。龍目豪と椎井莉鳥が、昭和感満載な半纏に猫背な猫館生らしき男と、同じく猫館生なのか左斜めに切り揃えられられた黒髪が綺麗な女の子とともに卓についている。
「それ、チー」
「リーチ」
「……ツモ。緑一色」
　隣から来た静かな上がりの声に、豪が目を瞠る。
「椎井、やるな。初めてって言ってなかったか？」
「ええ。ビギナーズラックかしら」
　その後も莉鳥はツキが続き、初めてなのに猛者風の猫館生たちから点をもぎ取ってゆく。
「あー、負けた！　この勝負、椎井の勝ちだな」
　とうとう諦めて大の字に寝転がる半纏の男。
（アイツもこうやって過ごしてたのかしら）
　配点に応じたお菓子を貰って莉鳥は時計をみる。
　気づけばすっかり丑三つ時である。