【三寮祭】ばっひゅーんシャッフル☆ナイト｜リアクション

【三寮祭】ばっひゅーんシャッフル☆ナイト

●桜花寮～パジャマパーティその２

　まうの話がひと段落したのを見計らって、桜はふたたび自分に話が戻ってくるのを回避しようと輝夜と慎之介のほうへ水を向ける。
「そろそろさっきから照れ顔の月守さんのコイバナ聞きたいなあ。二人は付き合ってるの？」
　輝夜の心臓がドキリと跳ねる。それでなくとも慎之介といっしょに他の人のコイバナを聞いているというシチュエーションが恥ずかしくて仕方なかったのに、いざ自分の番となると、何をどこまで話していいか分からなくなる。どうしよう、と困り顔で慎之介を見ると、彼はノープロブレムと言わんばかりに微笑み返してくる。
「男はいつだって彼女のことを自慢したい生き物さ！」
　それを聞いて、きゃあきゃあはしゃいでお互いの手を握り合う茉奈と桜。そう言ってくれる男子と付き合えたらどんなに素敵だろう。
「ちょ、ちょ、待って。君、年下よね！」
「イケメンすぎる発言！」
「そうか？　このくらい当たり前だろ？」
「えっ、やだ、さわやか……！　なになに、青木君９月からアメリカ留学するの？　月守さん寂しくない？」
「え、っと……正直言うと寂しいです」
「切ない！　そうしたら秋からは遠距離っちゃうかんじ？」
　茉奈と桜に捲し立てられ輝夜は辛うじて頷く。
「俺はドリームを追いかけるが、離れていても寂しい思いをさせる気はないぜ！」
「そうなんだ。いいなあ、私もこういう彼と付き合いたかった……」
　寄生虫趣味なヤツじゃなくて、と桜の背後にどーんと漫画チックな斜線が入る。
『こんなシチュエーションで告白したい／されたい！』というトークテーマは用意されていたが、ここは是非お二人の実体験を聞かねばなるまいということになり、輝夜はその時のことを思い出して頬を紅潮させながら話すことになった。

「あのときは……すごく緊張しちゃいました。でもどうしてもバレンタインに伝えたくて」
「月守さんの方から告白したの？」
「そうなんです。あの時告白して良かったな。こうして慎之介くんと恋人になれたし一緒にいれて楽しいし」
　輝夜と慎之介はどちらからともなく視線を交わし合う。
　桜と茉奈が同時に吼えた。
「あ・ま・ずっぱ～～～～い！！」
「彼氏ほしい！！！」
「応援する」
　最後にまうが短い言葉を添えると、全員が力強く頷き、輝夜は勇気を貰った気持ちになって嬉しかった。

◇

　お菓子もすっかりなくなったころ、パジャマパーティはお開きの時間となった。
　輝夜は慎之介といっしょに廊下に出る。
「こんなに遅くまで皆でお話したの初めてかも。楽しかったね」
「ああ、ベリーハッピー！ゆっくり寝よう！」
「部屋は別だよ？」
「お、おう。分かってるぜ！」

　桜花寮生の桜はその後も茉奈と、よりディープなガールズトークに花を咲かせるつもりだ。

　まうは借りた二人用の空き部屋に戻って一人になると、「まうまう」と唱えてろっこん『まうまう只今増殖中』を発動させた。現れたのはもうひとりの一人の自分『まうまう』だ。先ほど家族構成を内緒にしたのは、人には言えないまうまうのことが頭を過ぎったせいもあるだろう。
「まうまう、今日は桜花寮のお布団で寝よう」
「うん！」
　いつでも双子気分になれるのは、まうのろっこんのいいところだ。
　用意してきたハーブティを淹れる。カップはふたつ。互いにゆったり口をつける。
　いつもとは違う桜花寮のベットはふかふかで心地いい。
「今日は楽しかった。まうまうは……コイバナ、って言われたら、どうする？」
　なんてひそひそ話をしながら。
　穏やかに夜は更けていく。