ループ１３｜リアクション

ループ１３

　真境名アリサは何度もループで戻された。表情に余裕がなくなり、せかされるように動き回った。
　スーツを着た男性の手前で立ち止まる。手にはスマートフォンを持っていた。ぶら下がる黒猫のストラップに疑いの目を向ける。
　――お座り状態の黒猫だけど、前は寝そべっていたような気がするわ。もしかしてあれが繰り返す原因なんじゃないの。
　その様子に男性が気付いた。容姿に優れたアリサを意識して照れ笑いを浮かべる。
「あの、このような物でよければ差し上げましょうか」
「え、いいんですか？」
「どうぞ」
　男性は気さくに返した。速やかにストラップを取り外し、アリサに手渡す。
「じゃあ、替わりにこれを」
　差し出した名刺には名前と勤め先が印刷されていた。
「ガールズバーですか」
「ジュエルと言います」
　魅力的な笑みでアリサは軽やかに立ち去る。
　――これで抜け出せるわ。
　黒猫のストラップを握り締めて弾むように歩いた。
　瞬間、列の最後尾に付けた。
「ウソでしょ！？」
　握っていたストラップは手から無くなっていた。
「……なんでよ」
　列を離れ、アリサはふらふらと歩き出す。当たりそうになった人々は自ら避けた。
　電信柱の近くまで来ると遂に怒りが爆発した。
「なんでなのよ！」
　ミュールの踵を思いっきり、地面に打ち付けた。電線に止まっていた雀がチュンと鳴いて一斉に飛び立つ。
　アリサは上を見た。
　一羽だけ、雀が残っていた。動きがまるでない。置物のようだった。
　青い目が刃のように鋭くなる。
「おかしいよね。本当に雀なの？」
　睨み続けていると雀に異変が起こった。ブルブルと震え出し、その限界で大気を道連れに四散した。同時に膨大な光が降り注ぐ。
「なによ、これは」
　溢れ出た光に呑まれた。
「またなの？」
　目を擦ってよく見ると、電信柱の近くに立っていた。
「もしかして……」
　突然、大股で歩き出す。そしてコンコースの境界を易々と超えた。

　澄み渡った青い空にアリサの喜びの声が響き渡った。

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あとがき

担当マスター：黒羽カラス
ファンレターはマスターページから！

　ループに取り込まれた方々は、全員、脱出に成功しました！
　今回の肝となる異変は二つになります。
　一つは妙齢の女性が使っていた物です。ループ前はハンドタオルでした。ループ後はハンカチに変わっています。
　最後は電線に止まった雀になります。ループ前は四羽。ループ後は五羽になっていました。

　二つ正解したPCさんは一人いました。今回のMVPと言えます。おめでとうございます！
　一つ正解したPCさんはとてもクールでスマートに解決しました。納得の行動でした！
　残りのPCさんも果敢な行動で窮地を脱して、全員が無事に戻ってきました！

　参加してくださった皆さん、本当にありがとうございました。
　少しややこしいシナリオではありましたが、皆さんのおかげで解決に至りました。
　また新しいシナリオでお会いできれば嬉しく思います。

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