ループ１３｜リアクション

ループ１３

　すっきりと目覚めた。真境名アリサは窓越しに見えた青い空へにっこりと笑う。
　夏物の服を選び出し、品よく纏める。姿見の中でポーズを決めて、いいわ、と長い髪を掻き上げて言った。
　露出した肌には日焼け止めを塗った。無駄のない動きで部屋を後にした。

　アリサは旧市街を気ままに歩く。妖艶な美しさに均整の取れた身体で人々の目を惹き付けて止まない。本人に何の気負いもなく、方々を見ながらシーサイドタウンに入った。
「そうよ」
　何かを思い出したように左手に曲がる。力強い足取りでシーサイドタウン駅へと向かう。
　――駅ビルのmiaoで使えるクーポンの期限が近いし、夏物の新作も気になるから、ちょうどいいわ。
　強い日差しに照らされる中、シーサイドタウン駅のコンコースに着いた。キッチンカーのソフトクリームを見て生唾を呑んだ。
　――今日のあたしはどうかしてるわ。
　アリサは行列の最後尾に付けた。前には八人がいて待っているだけで肌に汗が浮き出る。気を紛らわせるように周囲に目を向けた。
　――近くには自販機もあるんだし、無理して待つ必要がどこにあるのよ。
　怒りにも似た感情で列を離れようとした。その時、アリサの前を三人組が通り過ぎる。各自がアイスクリームを手にしていた。
「残りは五人……」
　アリサは苦笑して最後尾に並び直した。
　数分後、待望のアイスクリームを手に入れた。マンゴーが練り込まれていてオレンジ色に輝いている。
　日陰を求めて歩きながら食べ始める。するとミュールの踵が何かに引っ掛かった。斜めになる身体を辛うじて立て直し、転倒は免れた。
「危な……どうなってんの？」
　アリサは列の最後尾にいた。前には五人が並び、アイスクリームのメニューに目を向けている。
　――さっき買ったよね？
　自身の両手を呆然と眺める。アリサはふらりと列を離れた。一方に向けて足を速める。
　コンコースの境界で凄まじい突風に見舞われた。身体が浮きそうになる。即座に瞼を閉じ、上体を屈めて懸命に耐える。
　風が収まって顔を上げるとアイスクリームの行列の最後尾にいた。
「いや、いや」
　強張った顔を左右に振った。一度、深呼吸をして用心深い目を周囲に向けた。
　――さすがにこれはないわ。なんとか抜け出さないと。
　喉の渇きとは違う意味でアリサは生唾を呑んだ。