すっきりと晴れた日曜日、寝子島シーサイドタウン駅のコンコースは午前中から賑わいを見せた。各種のキッチンカーにはかなりの行列が出来ていた。
新作の春物を見にきた
御巫 時子は噴水の手前で立ち止まる。緩やかな涼風に表情を和らげた。日差しの強さもあって目はキッチンカーへと向かう。
「そうですね……」
顎先に軽く手を当てた。考えながらも目はソフトクリームの店に注がれる。
にっこり笑って一歩を踏み出す。その時、横手から白衣姿の
五十嵐 尚輝が現れた。
「尚輝先生!」
声に喜びが溢れ出し、笑顔の小走りとなった。
「御巫さん、意外なところで、会いましたね」
「嬉しい偶然です。ところで先生は、また白衣なのですね」
くすりと笑うと尚輝はボサボサの頭を掻いた。前髪で両目が隠れている為、感情を読み取ることは出来なかった。
「……今回は一人なので、いつもの姿ですが、別の服の時もあります」
「はい、知っています。
デートの時に見ました。とても似合っていました」
「そうですか」
デートの言葉に慌てることはなく、尚輝は強張った唇を緩めた。
時子は受け入れられた喜びで笑みが抑えられなくなり、気付かれる前に質問でごまかす。
「先生は何をしに来られたのですか」
「たまには自炊をしようと思いまして。御巫さんは?」
「私は春物の服を、と思いましたが今はソフトクリームに興味があります。先生、一緒にどうですか」
「ご一緒します」
尚輝は喉元を摩って言った。
二人の注文は奇しくも同じで苺のソフトクリームとなった。噴水の縁に仲良く座る。
時子は最初に先端を舐める。合間に尚樹との会話を楽しんだ。
時間と共に全体が溶け始める。
「零れ落ちそうです」
コーンを傾けて慌てて齧り付いた。ちらりと隣に目をやると尚樹がこめかみ辺りを指で押さえていた。
食べ終わると二人は、ほぼ同時に立ち上がった。
「……これは?」
立ち上がったはずが、二人は共に座っていた。お互いの手には苺のソフトクリームがあった。
先端はぴんと立ち、溶けているところはどこにもなかった。時子は不思議そうにしながらも先端を口に含む。
「とても冷たくて美味しいです」
「この現象は……」
尚輝はぼんやりとした様子で手の中のソフトクリームを眺める。
二人は再び食べ終わる。すぐには立たなかった。空になった手の中をじっと見ている。
尚樹のボサボサの髪の中から小鳥が顔を突き出し、チチチ、と警戒音のように囀った。怪現象を察知すると発動する『バードサンクチュアリ』のろっこんだった。
二人の手には苺のソフトクリームが握られていた。
神魂の影響なのか。この一帯は十三分で時間が巻き戻る。
不可解な現象に取り込まれた人々は、無限と思えるループから抜け出すことが出来るのだろうか。
予兆のない突然の異変が起こります。巻き込まれた人々は行動しなければ抜け出せません。
ですが、不完全なループ。繰り返すことで解決の糸口がきっと見つかることでしょう。
詳しくは下記をご覧ください。
〇◎● 今回の舞台&ループの特徴 ●◎○
快晴の日曜日で時間は午前中。寝子島シーサイドタウン駅のコンコース全てが過去を繰り返す。
一度、取り込まれると何かしらの理由で出られなくなる(転ぶ、滑る、突風等)。
時間の間隔は十三分。不完全なループの為、記憶は残る。完全な過去の再現ではなく、一部に異変が生じる。
その部分を見つけ出して(触れる、物を投げる、掴む等)の行動を取ることでループが解除される。
ループ前のコンコースの状態
・ピンクのスーツを着た女性が黄色いハンカチを落として拾う。
・夏のような暑さの為、三人の若者が別々のところでペットボトルで喉を潤す。
・父親が小さな男の子を肩車していた。子供の手には赤い風船が握られていた。
・妙齢の女性がソフトクリームを胸に落としてハンドタオルで拭き取る。
・小さな男の子と小さな女の子が追いかけっこをしている。
・コンコースの一番端の道にコーヒーの缶が置かれていた。
・ソフトクリームを売っているキッチンカーの前に八人の行列が出来ていた。
・制服を着た女子高生がボストンバッグを右肩に引っ掛けて歩いている。
・スーツを着た男性が弄るスマートフォンのストラップは黒猫だった
・近くの電線に雀が四羽、大人しく並んで羽を休めている。
・サンドイッチのキッチンカーの前にはイーゼルがあり、メニューが置かれていた。
・背中の曲がったお婆さんが杖を突いてよろよろと歩いている。
ループ後のコンコースの状態
・コンコースの一番端の道にコーヒーの缶が置かれていた。
・ソフトクリームを売っているキッチンカーには八人の行列が出来ていた。
・ピンクのスーツ姿の女性が黄色のハンカチを落として拾っていた。
・サンドイッチを売るキッチンカーの前にはイーゼルがあり、メニューが置かれていた。
・近くの電線に雀が五羽、大人しく並んで羽を休めている。
・背中の曲がったお婆さんが杖を突き、よろよろと歩いている。
・夏のような暑さに耐え兼ねた三人の若者が別々のところにいてペットボトルで喉の渇きを癒す。
・父親が小さな男の子を肩車して歩く。子供の手には赤い風船が握られていた。
・妙齢の女性がソフトクリームを胸に落としてハンカチで拭き取る。
・小さな男の子と小さな女の子が追いかけっこをして遊んでいる。
・スーツを着た男性が手にしたスマートフォンのストラップは黒猫であった。
・制服姿の女子高生がボストンバッグを右肩に掛けて歩いている。
※不完全なループの為、ループ前とループ後の内容は交互に繰り返します。
〇◎● NPC ●◎○
NPCは不自然でなければ、誰でも登場させることが出来ます。
特定のマスターが扱っているNPCは描写できない可能性が高い為、お控えください。
Xキャラクターもご自由にどうぞ。
口調やPCさんとの関係性等、必要なことをアクションに書き込んでください。
Xキャラ図鑑にある内容の参照は、URLでお伝えください。
説明は以上になります。
今回は永遠のループという危機感がありますので、
人がいるところでも比較的、ろっこんが発動し易い状態になっています。
PCさんにもよりますが、能力を隠している場合は人の目が離れた瞬間を狙って発動するのもいいでしょう。
もちろん、種族がひとで特殊な能力が無くても大丈夫です。観察眼と行動力で乗り越えられます、たぶん。
あと、異変を見つけても行動までに時間が掛かりますと、十三分が経過しますのでご注意ください!
なんちゃってSFのループ物、はじまりはじまりーグルグルー。