ループ１３｜リアクション

ループ１３

　電信柱で待機していた尾鎌蛇那伊は組んでいた腕を解いた。愉快と言わんばかりの笑顔を見せる。
　瞬間的に斜め上に目を向けた。五羽の雀が横並びで電線に止まっている。
　――今のループで違和感の元を見つけたわ。問題は手段よね。
　何げなく歩き出す。休日の散策を楽しむ風情で周辺を見て回る。
　流れるような動きで近付き、落ちている物を摘まみ上げた。
「瓶の蓋は少し軽いわね」
　親指と人差し指で二つに折り曲げる。近くにあったゴミ箱に指で弾いて入れた。
　次に車道の近くを通る。トラックの落とし物なのか。大小さまざまな砂利が落ちていた。
「いいわね」
　見定めて一つの石を拾い上げる。指で強度を確かめると手の中に握った。
　蛇那伊はすぐに引き返す。周りの状態を楽しむような視線を向けて、雀が止まる電線に近づいていく。
　距離は五メートルを切った。手に握っていた石を親指で掬う。爪の上に載せた状態で足音を消した。
　視線は前方に固定して親指に力を込める。雀の真下にきた瞬間、真上に向かって力を解放した。高速で物体を飛ばす指弾である。
　逃れる術はなく、五羽目の雀を直撃。ガラスが割れるように大気に亀裂が走り、粉々に吹き飛んで白い光が周辺に溢れた。
　蛇那伊は足を止めない。軽く右手を挙げて小さく左右に振った。
「違和感バリバリの雀さん、さようなら。まあまあ、楽しめたわ」
　光に呑まれたあとも立ち止まることはなく、口の端に笑みを浮かべて人波に消えていった。

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