●○おいでませ！　猫カフェBlack&White○●｜リアクション

●○おいでませ！　猫カフェBlack&White○●

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「ちょっと、大丈夫ですか？」
　天動記士郎は、猫カフェの裏口から出てきた美華に、咄嗟に声をかけた。
　美華は腕から逃れようとする２匹のお猫様を、ワゴン車に乗せようとしていた。
　彼女の手から逃げ出そうとするお猫様を、記士郎は抱きとめる。
　すぐ脇を、自動車が通り過ぎていった。
　かなり、危ない。
　ワゴン車を覗けば、すでに車の中にもゲージがあり、数匹のお猫様が。
「一体、何事ですか」
　ワゴンに詰まれたゲージの中にお猫様を入れ、記士郎は尋ねずにはいられなかった。
「店の猫達が、感染症にかかってしまったんです。今から病院へ連れて行きたいのだけれど……」
「無茶ですよね。これは」
「そう、思いますか……」　　
　記士郎の冷静な突っ込みに、美華はしゅんとなって俯く。
　ワゴン車の中のケージはもう、いっぱいいっぱいだ。
「これじゃ猫達は辛いですよ」
「でも時間が無いんです。みんなを早く病院に連れて行ってあげないと」
「手伝います」
「えっ？」
「車の手配ぐらい出来ますよ。雑貨屋を近所で営んでいるんです。猫用のゲージぐらい、余ってますよ」
　本当は雑貨屋といっても、自宅を改造したごくごく小さなものだった。
　傍から見ると雑貨というより古臭いガラクタも多いのだが、記士郎がきちんと手入れをしているから使えるものばかり。　
　猫用ゲージも、その一つだった。
「車、回してきますから。少しだけまっていてください」
　数分後には、本当に記士郎は車を猫カフェに横付けしていた。
「さあ、こちらにも乗せましょう」
　ぎゅうぎゅう詰めで辛い思いをしていたお猫様達は、記士郎の車に移されてホッとしているようだった。

●
　病院は平日だった為か然程混んではいなかった。
　何匹もの猫達をいっぺんに診てもらったというのに、午前中一杯で済んだのは幸運だろう。
　猫カフェの２階、自宅へ病気の猫達を運び込み、美華は記士郎に頭を下げる。
「天動さん、今日は本当にありがとうございました。よかったら、ゆっくりしていって下さい」
　記士郎を開店前の店内に招き入れ、カウンターへ。
　差し出された珈琲を飲みつつ、記士郎は猫スペースをみる。
　先ほど病院へ連れて行った猫達は一匹もいなかった。
「さっきのあの子達は、店には出さないんですか？」
「えぇ。病気がうつってしまいますから。それに、無理はさせれませんから……」
「本当に、猫がお好きなんですね。このお店を見ていると、あなたの猫好きが伝わってきますよ」
　周り中、猫のモチーフで溢れているのだ。
　いま記士郎が飲んでいる珈琲のマグカップ。
　これはぱっと見はただのマグカップだが、よくよく見れば持ち手の部分が猫の尻尾をイメージされ、先っぽが黒くなっている。
　カップの縁も同じように黒く塗られ、中央部分にはふわっとぼかした黒い丸。
　シャム猫のようだった。
「つい、買い集めてしまって」
「店長のコレクションでしたか」
　美華の話に相槌を打ちながら、記士郎は思う。
（猫グッズか……今度、問屋でそういうのを探してみよう）
　もっとも、記士郎が売れると思って仕入れたもので、売れた例はないのだが。
「今度、天動さんのお店にも寄らせてもらいますね」
　美華にだけは、きっと売れるだろう。　

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