●○おいでませ！　猫カフェBlack&White○●｜リアクション

●○おいでませ！　猫カフェBlack&White○●

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（あ、そういえばストレスになるから、抱きあげるのが禁止されてるお店もあるけど、ここはどうなのかな？）
　膝の上に乗って来たお猫様を抱っこして、猫スペースに戻してあげながら、海は店内を見渡す。
　店内の『お約束ボード』にはチョコレートの差し入れ禁止、ネギの持ち込み禁止、それにお猫様のお持ち帰り禁止、があった。
　どうやら抱っこすることは問題ないようだ。
（猫じゃらしとか、やっぱり好きだよね）
　猫スペースに置いてあるオモチャの猫じゃらしを、海はふりふりしてみる。
　無造作に振るだけで、二匹のお猫様が目ざとく駆け寄ってきた。
　揺れるお猫様達の尻尾のほうが、まるで猫じゃらしのようだ。
（やっぱり、島の野良猫たちとはちょっと違うなあ）
　猫カフェと聞いた時、海は思ったのだ。
　寝子島中にいる野良猫たちと、どう違うのだろうかと。
　野良猫たちも愛らしいし、懐っこい子も多いが、猫カフェのお猫様達はこれ以上はないぐらいに無防備だった。
　特にお腹を見せて甘えてくるのは、野良猫ではまず見ない姿で、海はそっとお腹に手を伸ばす。
　野良猫なら即座に引っかかれてしまいそうな場所なのだが、慣れきった猫カフェのお猫様達は逃げる様子すらない。
「小山内は、もう暫くここに居るのか？」
　猫スペースで戯れる海に気づき、刀が声をかける。
『ねこたちほんとにかわいいね。ずっといたいぐらいよ』
「そうか。俺の仕事がもうすぐ終わるから、一緒に帰ろう。送っていくよ」
『かたなくん、おくってくれるの？　ざんぎょうとか、だいじょうぶ？』
「ああ。今日は無いよ」
『ありがとう、それならおねがいしちゃおうかな』
　店長に声をかけ、刀は上がる準備をする。　　

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「いらっしゃいませ、１名さまでよろしいでしょうか？」
　かっちんかっちん。
　緊張で固まりそうな身体を、笑顔でごまかして。
　レティシアは記士郎を案内する。
「やっぱり、開店中は賑やかですね」
　記士郎はそんな感想を抱く。
　オープン前と違い、猫スペースの猫達も増えていた。
「猫さんは可愛いですからね」
　猫スペースで、記士郎は猫たちを見て回る。
「おっ。あなたはこの間の子ではないですか？」
　見知った猫を見つけ、記士郎は手を差し出す。
　開店日の前日。
　病院へ向かう美華の腕から、こぼれ落ちそうになっていた猫だ。
「あれから一週間は経っていますからね。すっかり元気になってよかったですね」
　抱っこをしても怒らないのは、記士郎を覚えていた為か。
　すりっと頭を記士郎の喉元に寄せてくる。
　もともと、病院で診てもらった時もこの子はなんとも無かったのだ。
　それでも、鼻が少し濡れ気味だったから、心配性の美華が大事をとって数日様子を見ていたのだが。
「逃げ出そうとすらしていましたしね」
　よしよしと、赤子をあやすように記士郎は猫を愛でる。
（軽く昼食を頂いたら、また、猫グッズの収集に向かいましょうか）
　美華と話しながら、仕入れることにした猫グッズ。
　彼女以外には売れないだろうと思っていたのだが、これが意外と売れ行きがいい。
　もともと寝子島には、猫好きの人間が多かったのだろう。
　いまはまだ、倉庫のようにがらんとした記士郎の雑貨店。
　けれどその店が記士郎の理想通りになるのは、きっと、そう遠い未来ではない。
　身動ぎした猫をそっとソファーに下ろし、記士郎は少し遅めの昼食を頂くのだった。　

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