ある暗闇の日｜リアクション

ある暗闇の日

●セーブデータが！

　桜花寮の自室で佐藤英二は、シミュレーションゲームに打込んでいました。
　携帯ではなく据置ゲーム機で、大きな画面で楽しんでいます。
「ふぅ、結構な難関シナリオだったけど、これで何とかなりそうな感。ある程度攻略方法が見えてきたのと結構ラッキーな乱数結果があったから良かったけど……」
　一息ついてつぶやきます。
（気がついたら昼食後からずっとプレイしてたから、何時間集中してたことになるんだろ？）
　もうこんな大変なのはやりたくないな、と思ったその時。
「なっ！？」
　突然、画面が真っ暗になりました。
（故障？　いや）
　画面だけでなく、部屋の電気も消えています。
　英二は呆然としました。
「まさか停電！？　そんな、なんでこのタイミングで」
　血を吐くような思いで記憶をたどります。
（セーブしたの何時だっけ……？）
　思い出せません。
　試行錯誤しながら何度もやり直していたので、前章が終わった後はセーブしていなかったような気がします。
「あの苦労がすべて水の泡に……」　
　ゲームに夢中で気づきませんでしたが、肩がバキバキいっています。

　ぼんやりと薄暗い外を眺めて、どうやら停電が寮だけではないことを確認しました。
「夕食食べる時間だけど電気もつかないし。目も疲れたし、何より精神的に大ダメージをくらった感じだし……」
　暗い中でご飯の支度をする気にもならず、英二は飲み物だけ飲むことにしました。
「まだ夕方だけどもう寝ようかな……」
　こまめなセーブの大切さを身に染みて思い知らされながら、しおしおと寝る支度をします。
　
　身支度を済ませて布団にもぐりこみ。
　目を閉じ、本当に英二の世界は真っ暗になりました。
（明日、起きて気力が少し回復したら、今回の停電トラブル体験談。誰かに話してネタにしよう。うん）
　野々さんなら笑ってくれるだろう、と野々ののこの顔を思い浮かべます。
（野々さんのところも停電だよね。どうしてるかな？　大騒ぎしてるかも？）
　そう思うとなんだか笑ってしまいます。
（その前に、きっとお腹がすいてるだろうし朝御飯の支度からかな？）
　

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