this frame prevents back forward cache
0
0
はじめての方へ
ヘルプ
ログイン
\ オーバータイム!/
種族
学年:職業
00月00日生 00歳
AAA000000
ホームトップ
おしらせ
新着通知
はじめての方へ
遊び方
世界設定
キャラクター一覧
キャラクター検索
キャラクター作成
らっポ
チケット
コミュニティトップ(検索)
コミュニティ一覧
公式コミュニティ一覧
公開トピック一覧
コミュニティ書き込み検索
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
イラストトップ
イラスト一覧
イラスト検索
イラストレーター一覧
イラストレーター検索
自作イラスト一覧
アイテム一覧(検索)
マイリスト一覧(検索)
寝子島(全景)
寝子島(地図)
寝子島(セカンドマップ)
寝子島高校
星降ル丘ニ、嵐来レリ
<< もどる
1
…
7
8
9
10
11
…
14
つぎへ >>
【2日目:ヒモとラズベリー】
前日、
弥逢 遊琳
は珍妙な客人の訪問に最初こそ右往左往した。
自室隣の客間前に掛けてある、手作りキルトが裏返ってたのだ。
これは『使用中』の合図である。
「合鍵持ちの君だよね、礼二」
ちょっと胸の奥が暖かく、そして苦しくなる。
そこへ舞い込んだ3日間の自炊生活である。
弥逢自身は普段から身の回りのことはしっかりしているので問題はない。
外食も嫌いだ。登校も電車を使わず毎日徒歩である。
問題なのは、客人、
加瀬 礼二
である。
「使用人いない3日間は、先輩の家にお邪魔しますねぇ」
勝手知ったる他人の部屋。
今朝ものうのうと彼は客間で寝転けている。
しかも、土曜とはいえ既に9時過ぎである。
人間の適応力とは素晴らしいもので、翌朝には客人の存在が『フツウ』と化していたことに弥逢は驚いていた。
――弥逢にとって、加瀬という後輩は『特別な感情』を引き起こす存在だというのに。
裸体に女物の赤襦袢を身に纏った彼は、少し危なっかしい足取りで加瀬のいる客間の前まで向かう。
「ご飯出来てるよ。食べるなら味噌汁温め直すけど」
「……お願い、します……」
客人は低血圧なので朝に滅法弱い。
これはまだ当分時間が掛かりそうだ。
というか、彼は夜行性なのかもしれない、と弥逢はクスリと笑った。
特に強制というわけではないが、弥逢は進んで2人分の和食を作るように心掛ける。
いつまで経っても起きてこない加瀬を見越して、弥逢は作るのに時間の掛かる煮物の仕込み始めた。
今日は京都の実家から送られてきた旬のハモを山椒を効かせて煮付けにしてみた。
有馬煮というもので、お茶漬けにすると格別の美味さである。
食欲のない加瀬でも、これならサラサラと流し込めるだろう。
まずフライパンに皮目を下にしてハモを入れ、中火で軽く焼き、焼き目がついたらハモをひっくり返して軽く焼き、再び、ひっくり返す。
その中に、水・煮切り酒・みりん・濃口醤油・実山椒の佃煮を入れ、弱火に落とす。
次第に醤油とみりんの甘辛い香りと、山椒のアクセントの効いた刺激的な香りが、弥逢の鼻腔をこれでもかとくすぐる。
「いい匂いですねぇ……」
ほら、客人も香りに誘われてダイニングキッチンにやってきた。
「おはよう、礼二。なにか飲む?」
「コーヒー、濃い目のブラックで」
端的に加瀬は弥逢に言うと、無造作にテーブルの上に投げ出されている英字新聞に手を伸ばす。
弥逢はチラリと加瀬を見遣る。
座った目のまま、新聞に視線を落とすその姿。
何度見ても、様になっているな、と弥逢は頬を火照らせてしまう。
(……駄目、そんなに見詰めてたら、いよいよ辛くなる……)
接客業の家生まれの弥逢は『他人に尽くす』事が自然な振る舞いと認識している。
母方は裕福だけど生家は普通で、人間性を養うには良質な環境が必要だからと此処へ入れられただけ、のはずなのに。
出会ってしまった。いや、出会わなければ良かった?
ううん、出会って良かったんだと思いたい。
例え、不毛な想いを弥逢が抱く結果になったとしても。
「あ、しまっ……」
余所見をしていたせいか、はたまた思考が別次元へ飛んでいたせいか、少し煮汁を飛ばしすぎてしまった。
焦げていないだろうか? 不安に駆られ、弥逢はちょっとハモをひっくり返した。
(ほっ……、ギリギリセーフだね)
煮汁が黒く固まっているが、別段焦げているわけではないようだ。
加瀬の顔を覗き見れば、コーヒーカップを持ちながらぼーっとしていた。
良かった、先程の声は届いていないはず。
彼に悟られないよう、上手く取り繕いながら煮付けを盛り付ける。
味噌汁もちょうど温め直し終わったようだ。
あとはこれに白米と青菜のお浸しを添えれば、質素ではあるが立派な朝食の完成である。
「さぁ、出来たよ。一緒に食べよう?」
弥逢が皿を並べると、加瀬は英字新聞を邪魔にならない場所へ置いた。
「へぇ……」
加瀬は目を見張った。
弥逢の作った朝食は、もはや芸術品のような美しさを誇っていた。
実は加瀬、あまり食欲はないのだが、これには思わず箸が伸びてしまう。
「……美味い」
そう一言漏らすと、加瀬の箸が一向に止まらない。
先程までの気怠さはどこへやら。
炊きたてご飯や青菜のお浸しをしっかり咀嚼し、味噌汁を一気に飲み干す。
煮付けに至っては口に含んだ瞬間、思わず笑みが溢れる始末だ。
その様子を、弥逢は黙って眺めている。
「久々にこんな美味しい朝食を食べました。遊琳センパイは本当にお料理が上手ですねぇ」
「褒めても何も出ないよ、礼二?」
くすっ、と口元を袖口で隠しながら微笑む弥逢。
……本当は『礼二のことを想って作ったからだよ』と言ってしまいたい。
でもそれを言ったら、この居心地のいい関係は破綻してしまうに違いない。
弥逢の胸の奥が、またギリ、と軋む音がした。
(捨てても戻ってくる眷恋の情さえ一緒に居る間は和らぐ。恋と呼ぶには緊張感より安堵感の方が強いくらいだけど、僕の卒業まではこれでいいのかも……)
姉に強いられた身代わりの業で塗り潰された成れの果ては、弥逢に『揺らぎ』をもたらした。
かつて一度は捨てたこの『初恋』なのに。
その相手が目の前にいることが、どうしてこんなにも安堵できるのだろうか?
どうして、こんなにも胸が軋む音が聞こえるのだろうか?
「いただきます」
弥逢も朝食に手を付け始めた。
……ハモの煮付けは、やはり少しだけ苦味があった。
彼も気付いてるはずだ。普段の彼ならそれをネタに弥逢をつついてくるはず。
でも今日に限ってそれを行わない。何故だろう?
弥逢は黙々と箸を進める。
(救えないし、掬えないこの初恋……。気付かせたくはない……)
箸の進むペースが落ちる。
(でも、せめて、何か君の為に成らなきゃ、『巣食われる』ばかりで、報われないから……)
目を伏せ、ほんの少しだけ、彼に勘付かれないように口角を緩める。
(……赦される幸せの形を、こんな風に、今みたいに、これからも見つけていきたいな)
「どうしました、遊琳センパイ?」
加瀬は俯く弥逢に声掛ける。
我に返った弥逢は、首を横に振ってみせた。
「ううん、なんでもないよ。……冷めないうちに食べよっか」
「ええ、こんなに美味しいご飯なら喜んで」
珍しく加瀬が味噌汁のお代わりを頼んだ。
弥逢もこれには驚いた。
「今日は随分と朝から食欲旺盛だね?」
「何故でしょうかねぇ? 遊琳センパイの“気持ち”が篭ってるからでしょうか?」
ぶっ!
弥逢は思わず吹き出した。
「な、何を言ってるの!? からかわないで!」
顔を真っ赤にあたふたする弥逢の様子を、目を細めてニヤリ、と笑う加瀬。
「いやぁ、本当、遊琳センパイって甲斐甲斐しいというか、そうですねぇ、例えるなら……」
加瀬はそうそう、と手を叩いて言い放った。
「まるで
俺の奥さん
みたいですよねぇ」
弥逢、手元が狂って味噌汁を自分の指に掛けてしまった
「熱ッ!!」
「むしろ俺がヒモって感じですか、っておや、大丈夫ですか~?」
弥逢はすぐさま流水に手を浸していた。
「ッ……、礼二が変なことを言うから! もう!!」
膨れっ面で涙目な弥逢の抗議は、狐面した加瀬の耳を右から左へと流れていく。
「他意はなかったんですがねぇ……、そこまで焦るものですか?」
「もう! この阿呆!! 唐変木!!」
ぷいっと顔を背けてへそを曲げてしまう弥逢。
ちょっと小声で「そういう自覚あるなら、責任取ってよ……」と思わず漏らしてしまう。
「遊琳センパイ? 何か言いましたか?」
加瀬はふざけた口調で弥逢の肩を引き寄せる。
弥逢は加瀬に背後を取られる形になった。
「な、なんも僕は言うてまへんどすえ……」
「京言葉が出てますよ~?」
「!?」
あまりの動揺に地元の言葉が出てしまっていることに、指摘されて初めて気が付いた。
胸の鼓動が1秒1秒ごとに大きくなっていく。
ああ、背中越しからこの鼓動がバレてしまわないだろうか?
弥逢は硬直したまま、どうすることもできない。
そこへ、加瀬の手が弥逢の胸元へ伸びてきた……!
(な、なんやの!?)
弥逢が惚けていると、加瀬は弥逢の背中越しにお椀に味噌汁を注ぎ始めた。
「お代わり頼んだのに、いつまでボーッと突っ立てるんですか?」
自分でやっちゃいましたよ、とへらりと笑って席も戻った。
……ほんの10秒も満たない今のやり取りが、弥逢には永遠のように長く感じてしまった。
「れ、礼二が……、驚かすから……、あほ……」
弥逢はすっかり拗ねてしまい、仏頂面で朝食を喰み始める。
「綺麗な顔が台無しですよ~?」
「うるさい!」
ツーンとそっぽ向いてしまう弥逢の様子に、何だか愛着を感じてしまう加瀬である。
(可愛いですねぇ、センパイは。……俺と先輩の『好き』は明らかに違いますけど)
同じ『好き』という日本語でも、英訳のLoveとFavoriteでは意味合いが違う。
実は加瀬、薄々だが弥逢の気持ちに気が付いている。
先程の弥逢のつぶやきも、実際加瀬は聞こえてた。
だからと言って、弥逢に期待感を持たせるような事は別段しない。
今はただ、このままで。
(そう、このままでいいんだ)
弥逢も(ちょっと不機嫌ではあるが)今の幸せの形に満足している。
(想い“叶わぬ”未来も告白する事は、“適わぬ”身も承知の上、君に“敵わない”のだけが今の僕の幸せ)
チラリと加瀬の顔を見上げれば、彼は優しく弥逢に向けて笑顔を見せていた。
(……君が笑ってくれる事もね)
甘いんだけど、やっぱり酸っぱい、ラズベリーのような弥逢の気持ちと、ヒモの加瀬の関係は、まだまだこれからも続きそうだ。
<< もどる
1
…
7
8
9
10
11
…
14
つぎへ >>
このページにイラストを設定する
シナリオ
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
シナリオご利用ガイド
グループ参加ご利用ガイド
シナリオタイプのご案内
星降ル丘ニ、嵐来レリ
シナリオガイド
リアクション
参加キャラクター一覧
コメントページ
ダイアリー一覧
シナリオデータ
担当ゲームマスター
焼きスルメ
シナリオタイプ(らっポ)
ブロンズシナリオ(100)
グループ参加
なし
シナリオジャンル
日常
コメディ
推理・サスペンス
定員
30人
参加キャラクター数
30人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2013年10月05日
参加申し込みの期限
2013年10月12日 11時00分
アクション投稿の期限
2013年10月12日 11時00分
参加キャラクター一覧
もっと!