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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
雨の中のワルツ - a waltz in the rain
白いなあ、というのが都府楼暦がいだいた第一印象だった。
無機質な天井を見上げている。
消毒液の匂い。包帯と清潔なシーツの匂いもする。でもシーツ、ちょっとごわごわするな。
どうやら病院らしい。入院させられているようだ。
帰らなきゃ……と思ったけど、体が動かない。
「短く起きては何時間も眠ってを何度か繰り返したけど」
今度は大丈夫そうね、と言ったのはなんと暦の母親だ。いつの間に来ていたのだろう。
「お父さんは仕事で帰ったけど、泣いていたのよ」
自分だって、と暦は思った。泣いているじゃない。
「看護師さんとお医者さん、呼んでくるね」
母は視界から消えたが、すぐに戻ってきた。
「いつ帰れますか」
医師に尋ねたところ、二か月はかかるだろうという見立てだった。数日間意識がなくて、かなり危険な状態だったらしい。
あの夜、暦は人身売買ブローカーの車にはねられ、そのままさらわれた。なんらかの手段で隠蔽……始末される寸前だったということもわかった。
車に監禁されていた女性は紗央莉という名前で、驚いたことに九鬼姫の同僚だった。
もっと驚いたことは、その九鬼姫も同時に誘拐されて、ブローカーが用意した別の車で運ばれ港の倉庫に押し込められていたということだった。もちろん現在はすべて解決している。
「……あまりにも話が盛りだくさんすぎて、頭の整理がつきません」
「そりゃあそうでしょう」
はははと笑ったのは、数時間後に訪れた吐前刑事だ。やはり白い大型犬を思わせる風貌、手土産はメロンだった。
ご安心くださいよ、と吐前は断じた。
「都府楼さんをはねた犯人も、久鬼さんを攫っていた主犯もぜーんぶ逮捕しましたから。手下もね」
でも念のため、と吐前は病室の外を眼で示す。
「部下のワーちゃん……失敬、田中・ワージントン・広（ひろし）刑事が警護としてついててくれますからね。ないと思いますが万一、報復とかあったら恐いですし」
こぎれいな身なりをした私服警官だった。なかなかハンサムだが、暦からすれば立派なおじさんだ。真四角の眼鏡をかけている。
報復とかあったら？
暦は苦笑いする。
報復したいのはこっちなのに。
「おっと、そろそろ退散しましょうね。みなさんお見舞いに来てくれたようですから」
のっそりと吐前は立ち上がった。
九鬼姫がいる。紗央莉も。メロンをぶらさげている。これで本日、メロンは二個目ということになりそうだ。
あとでわかったのだが、九鬼姫のお店の人たちが何人も暦への輸血を申し出てくれたらしい。
元気になったらお礼言いに行かないと、と暦は思った。
――『雨の中のワルツ - a waltz in the rain』 了
無機質な天井を見上げている。
消毒液の匂い。包帯と清潔なシーツの匂いもする。でもシーツ、ちょっとごわごわするな。
どうやら病院らしい。入院させられているようだ。
帰らなきゃ……と思ったけど、体が動かない。
「短く起きては何時間も眠ってを何度か繰り返したけど」
今度は大丈夫そうね、と言ったのはなんと暦の母親だ。いつの間に来ていたのだろう。
「お父さんは仕事で帰ったけど、泣いていたのよ」
自分だって、と暦は思った。泣いているじゃない。
「看護師さんとお医者さん、呼んでくるね」
母は視界から消えたが、すぐに戻ってきた。
「いつ帰れますか」
医師に尋ねたところ、二か月はかかるだろうという見立てだった。数日間意識がなくて、かなり危険な状態だったらしい。
あの夜、暦は人身売買ブローカーの車にはねられ、そのままさらわれた。なんらかの手段で隠蔽……始末される寸前だったということもわかった。
車に監禁されていた女性は紗央莉という名前で、驚いたことに九鬼姫の同僚だった。
もっと驚いたことは、その九鬼姫も同時に誘拐されて、ブローカーが用意した別の車で運ばれ港の倉庫に押し込められていたということだった。もちろん現在はすべて解決している。
「……あまりにも話が盛りだくさんすぎて、頭の整理がつきません」
「そりゃあそうでしょう」
はははと笑ったのは、数時間後に訪れた吐前刑事だ。やはり白い大型犬を思わせる風貌、手土産はメロンだった。
ご安心くださいよ、と吐前は断じた。
「都府楼さんをはねた犯人も、久鬼さんを攫っていた主犯もぜーんぶ逮捕しましたから。手下もね」
でも念のため、と吐前は病室の外を眼で示す。
「部下のワーちゃん……失敬、田中・ワージントン・広（ひろし）刑事が警護としてついててくれますからね。ないと思いますが万一、報復とかあったら恐いですし」
こぎれいな身なりをした私服警官だった。なかなかハンサムだが、暦からすれば立派なおじさんだ。真四角の眼鏡をかけている。
報復とかあったら？
暦は苦笑いする。
報復したいのはこっちなのに。
「おっと、そろそろ退散しましょうね。みなさんお見舞いに来てくれたようですから」
のっそりと吐前は立ち上がった。
九鬼姫がいる。紗央莉も。メロンをぶらさげている。これで本日、メロンは二個目ということになりそうだ。
あとでわかったのだが、九鬼姫のお店の人たちが何人も暦への輸血を申し出てくれたらしい。
元気になったらお礼言いに行かないと、と暦は思った。
――『雨の中のワルツ - a waltz in the rain』 了
あとがき
担当マスター：
桂木京介
ファンレターはマスターページから！
ご参加ありがとうございました！！ 桂木京介です。
豪雨とその翌日という特殊なシチュエーション下での日常シナリオであり、これまで少しずつ用意していた伏線をときはなったサスペンスシナリオにもなったと思います。
（たとえばこの場面、『今どうしているのかすらわからない』グラドルは既に松木の餌食になっています……）
アクションはいずれもバラエティ豊かで、いろいろな感情がわきおこってきて書くのは決して楽ではありませんでしたが、執筆そのものはとても楽しく充実した時間だったと思っています。
サスペンス部分については解決方法はさっぱり考えていなかったので、皆様のアイデアに救われました。
（以下ネタバレですので反転させてお読みください。ですので黒いワンボックスカーは二台あり、途中で『紗央莉』『九鬼姫』を運ぶ二手に分かれる。さらに、紗央莉を運んでいた車が暦様をはねてしまう――という展開もアクションを統合した結果生まれたものです）
喜んでいただければ幸いです！
ご意見ご感想をお待ち申し上げております。いつも書いていますが本当に励みになっております。
それではまた次回シナリオで会いましょう。
桂木京介でした！
豪雨とその翌日という特殊なシチュエーション下での日常シナリオであり、これまで少しずつ用意していた伏線をときはなったサスペンスシナリオにもなったと思います。
（たとえばこの場面、『今どうしているのかすらわからない』グラドルは既に松木の餌食になっています……）
アクションはいずれもバラエティ豊かで、いろいろな感情がわきおこってきて書くのは決して楽ではありませんでしたが、執筆そのものはとても楽しく充実した時間だったと思っています。
サスペンス部分については解決方法はさっぱり考えていなかったので、皆様のアイデアに救われました。
（以下ネタバレですので反転させてお読みください。ですので黒いワンボックスカーは二台あり、途中で『紗央莉』『九鬼姫』を運ぶ二手に分かれる。さらに、紗央莉を運んでいた車が暦様をはねてしまう――という展開もアクションを統合した結果生まれたものです）
喜んでいただければ幸いです！
ご意見ご感想をお待ち申し上げております。いつも書いていますが本当に励みになっております。
それではまた次回シナリオで会いましょう。
桂木京介でした！
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2021年03月18日
- 参加申し込みの期限
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- 2021年03月25日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2021年03月25日 11時00分
