あなたの放課後｜リアクション

あなたの放課後

――課題終わらせ隊――
　職員室に寄って、事情を説明した志波拓郎。
　課題は調べ物が多いため、図書室で課題を終わらせようと、向かっていたところ、
「……ん？　あれ、しばっちじゃん」
　後ろから唐突に声がかかる。
「それ何？　課題？」
　拓郎の手元を覗き込みながら、言うのは高梨彩葉だった。
「ああ、彩葉さん、か。そう、なんだけど、多過ぎて……手伝って、くれない、か？」
「いいよいいよー。私も図書室でやるところだったから、終わらせてしまおう！」
「ありがとう、助かる、よ」
　拓郎は彩葉に丁寧にお礼を言って、２人は図書室へと向かった。
　そして、図書室に入ろうとしたところで、
「おー、志波に高梨じゃん！　屋上以外で会うなんて奇遇だねえ、どしたん？」
「これ、桜井さんも一緒にやる？」
　拓郎は課題の束を桜井ラッセルに見せつけながら聞いた。
「いやー、頭脳労働は手伝えねーや！　ごめんなー」
　苦笑い。さすがに課題の量に引いたらしい。
「そう、か。ところで、その本は？」
「ああ、これかー、生物の本だな。俺、一応生物部だし？」
　ラッセルは表紙を見せながら簡単に説明した。
「ああ、そうだ、お菓子か何か持ってない？　慣れない事して腹へってさー……」
　お腹を押さえてラッセルは言った。慣れない事というのはきっと、資料探しだろう。
「お菓子かー、そういや、飴があったね。部活を頑張る桜井君にプレゼントしよう！」
　彩葉が制服のポケットから、飴を数個取り出してラッセルに手渡した。
「俺は、これくらい……だな。彩葉さん、と、同じく、頑張る桜井さんに……」
　拓郎は鞄から個包装のキャラメルを少々手渡した。
「おお、いいのかー！　サンキュー！　それじゃあ、俺もう行くわー、課題頑張れよー！」
　手を振って去っていくラッセルに、２人とも同じく手を振って見送った。
「さーて、やりますかー！」
「よろしく、たのむ？」
　適当な場所を陣取る。どうやら、自分たち以外にも課題に四苦八苦している生徒がいるようだ。しかし回りに幾人か居るおかげで、あちらは何とかなりそうだ。
「理数は、何とかなり、そうだけど……英語が、ダメだ……。これ……分かる、か？」
　目を細めつつ、拓郎は辞書を投げそうになっている。
「美術以外なら任せなさい！　これはねー……」
　拓郎が彩葉から教わることが多かったが、順調に課題は進んでいく。
「そうそう、しばっち、シーサイドタウンの新しいケーキ屋の話知ってる？」
「ロールケーキ、が美味しい……ところだっけ？」
「そうそう、しばっちって甘いもの大丈夫だっけ」
「結構。そういえば、彩葉、さんは……料理する、んだっけ？」
「お菓子作りメインだねー。今度作ってきてあげようか」
　そんな提案に、拓郎は即答した。
「おー、それじゃあ、楽しみ、して置こう」
「ふふふ、びっくりさせてあげるから、楽しみにしておくことね！　あ、そこ間違ってる」
　雑談にかまけて、課題の問題をいい加減に解いていたらしい。拓郎のプリントに彩葉が指摘を入れた。
「む、ああ、代入……間違えてる。ありがとう」
　苦笑して、消しゴムで消して書き直す。
　課題の量は２人協力すれば、意外に捗っている。
　もう少し頑張れば、全部終わってしまいそうだ。
「あと、もうちょいだ。終わらせよう。これくらい、なら……うん、何とかなりそう、だ」
　拓郎はそう言って残りの課題に目を向けた。
「それじゃあ、私もちゃっちゃと終わらせますかねー」
　そう言って、彩葉も自分の課題に向かった。
「しばっちって陸上部だけど走る専門？」
「いや……跳躍競技の方が、得意……かな」
「棒高跳びとか方面かー、なるほど……」
　手を動かしながら彩葉は納得したようだった。
　暫く取り留めの無い話をしていた。
　最近妙な噂が多いねーとか、何か事件がおこったんだってとか。
　そうこうしているうちにお互い課題が終わってしまった。
「おーわったー！　しばっち、これからどうする？」
　大きく伸びをしながら、彩葉は拓郎に聞いた。
「もう、部活……終わってる、し。さっきの、ケーキ屋……行って、みる？」
　ちょっとしたお誘い。
「色々……教えて、もらったし。自分が……奢る、よ」
「いいねー、行こう行こう！　でも、私も教えてもらったし、お互い様ってことで！　奢りとかなしで！」
　男気を見せた拓郎だったが、彩葉にあっさりとかわされてしまった。
　小さく肩を落とすが、あまりしつこいのもアレだしと気を取り直して、荷物を片付ける。
「よっし、それじゃあ行こう！」
「あ、ああ、行こう、か」
　誘っておいて、今更ながら女子と２人でどこかに行くのに、気恥ずかしさを覚える拓郎だった。

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