あなたの放課後｜リアクション

あなたの放課後

――終わりの一幕――
　困っていた自分を助けてくれたお礼に、茉莉花の調べものの手伝いをしていた海。
　図書室で分かる範囲の落神伝説はたかが知れていて、すぐに別の調べ物に変わってしまったけれど。
　まあ、それはそれでよかったと思う。
　海の調べているものに対して薀蓄をすらすらと言う様は凄いの一言につきた。
　スケッチブックに何度『すごい！』という文字を書いたかは分からないほどだ。
「今日はありがとう。おかげで色々助かったよ。オカルト系のイメージとかね」
『えをかくのはすきだから』
「思っている以上に君はお喋りで私も楽しかったよ。それじゃあ気をつけて」
　まだ少しやることがあるといって、茉莉花とは分かれた。
　海は今日読もうと思っていた美術関係の本を借りることにして、家路を急ぐ。

†――†――†
　くうくうといつの間にか寝息を立てて寝ていた時子。
「おーい、こんなところで寝てたら、風邪引くよ」
　花壇から戻ってきて、帰るところの龍人が声をかけていた。
「ふぁ……ああ、ついつい陽気に誘われて……」
「今日はいい天気だったからね」
「ええ、とても」
　時子とヴィナはそんな簡単なやり取りをした。
「ちょ、ちょっと、ヴィナ、この鳥、どうにか……」
　起こしたときに、絡まれたのであろう。
　時子と一緒にいた小鳥が、龍人の周りを飛び回っていた。
「あら、君が私を守っていてくれていたのね」
　人差し指を差し出すと、まるで止まり木のように小鳥は時子の人差し指に降りてきた。
「慣れたものだねえ。さて、俺たちはもう行くね」
「起こしていただき、ありがとうございました」
「いいよいいよ。俺たちが見過ごして、君が風邪引いたって噂ででも聞いたら寝覚めが悪いからね」
　丁寧にお礼を言う時子に、ヴィナは手を振って答えた。
「なるほど……それが、秘訣か……！」
　などと龍人は言っているが、あえて触れないで置いた。

†――†――†
「ふう……」
　騎馬立ちの最後の一突きを終えて汗を拭う。
　今日は何かと騒動に巻き込まれた博美だったが、終わってみれば普段よりも充実した一日だったように思える。
　全く別のスポーツなれど、基礎の部分を人に教えるというのは、存外、自分のためになるものだった。
「日々鍛錬だな」
　掃除用具を準備し、使った道場を綺麗に雑巾で拭く。
　綺麗に片付けて、着替えも済ませて、道場を出る、
　勿論、道場を出るときに礼を忘れるわけにはいかない。
　これからもずっとお世話になる道場だ。
「よし、帰ってからは宿題に予習と復習だ。文武両道を目指すのも大変だ！」
　鞄を担ぎ、博美は道場を後にした。

†――†――†
「掲載場所は、こことここと……」
　日向は校内の見取り図を取り出して、印をつけていた。
　さすがに教師に許可を求めたところで、却下されてしまうのがオチだ。
　それだったらば、木を隠すなら森の中。
　新聞部が記事掲載しそうなところに、便乗してこっそりとこちらの新聞を貼り付ければいい。
「さあって、これから忙しくなるね！」
　もう既に閉門の時間が迫っているのだが、自宅に帰って作業するよりも、校内に残って作業した方時間のロスが少ない。
　延長の許可は、貰っていない。
　大丈夫追い出されるまでは、大丈夫と言い聞かせ、記事のレイアウトや、今日の会話をヒントにして得た記事の掲載方法等をメモに打ち出していく。
　日向が見回りに見つかって追い出されるまで、後１７分――。

†――†――†
　１９時を過ぎた。
　校内放送で、閉門のお知らせが流れる。
　静まり返っていた校内が、にわかにざわめきだっている。
　玄関から、部室棟から……。
　さまざまな場所から放送にあわせて、生徒たちが飛び出してきた。
　額に玉のような汗を浮かべながら慌てていたり、時間？　そんなの知らないわと言わんばかりにゆっくりとした足取りで歩いてきたりと。

　そんな割と普通な寝子校の放課後の風景。

　皆様お疲れ様でした。また明日も頑張って。

――＜あなたの放課後　了＞――

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あとがき

担当マスター：来宮悠里
ファンレターはマスターページから！

　プレイヤーの皆様、ご参加ありがとうございました。執筆担当の来宮です。
　まずは、公開が大分遅くなってしまったことをお詫びいたします。申し訳ございません。
　執筆はとても楽しくさせていただきました！

　リアクション全編を通して、約３万字ほどとなっております。読むときは腰を据えて読まれるほうがいいかなあと個人的には思います。
　オムニバスなので、目次をつけてみました。ちゃんと機能してれば嬉しいです。機能してなかったらこっそり「何か１ページ目おかしくねー？」と言ってやってください。

　アクションを頂いての大まかな感想ですが、どこをとっても特定できてしまいますので、気になった方に個別コメント差し上げております。そちらにてわたしの感想を書いております。

　皆様に楽しんでいただければ幸いです。

　春までにもう一本出したいですが、色々ごたつくと、次回は梅雨に入ってからになりそうです。
　それでは、またどこかで！

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