あなたの放課後｜リアクション

あなたの放課後

――野球部のマネージャーと新聞部――
　部室に現われたハツカネズミを追っていた天馬ひびきは、すっかりハツカネズミを見失っていた。
「にゃう……、どこいったんだろう……？」
　きょろきょろとあたりを見回すけれど、既に小動物らしい影も形も見当たらなかった。
「見失っちゃったか……。あっ！　保健室に荷物持って行かないと！」
　野球部の救護用品を買出しに行くついでに頼まれた保健室においておくための備品を、持っていかないといけないことを思い出した。
　足早に廊下を歩くひびき目の前には掲示板を前にうんうんとうなっている、春日野日向がいた。
「ううむ……掲載場所はここ一箇所ではないとは言え……」
　悩ましげに呻っている日向に気付いたひびきは、恐る恐る声をかけてみることにした。
「あの、どうしたんですかー？」
「いえ、非公式とはいえ新聞部を名乗っているのだから、校内新聞を張ろうと思っているんだよ」
「ほおほお」
「まあ、室内に篭って記事作成をしていてもよかったんだけど、掲載場所なんかの下見も兼ねて来てるのよ」
「ふむふむ？」
「掲載場所を見て、上がってきた記事を見て配置を考えてたんだけど……やっぱりダメね。みんなの記事が個性的過ぎて一つにまとめちゃうと、記事の食い合いが発生しちゃうわ……。私が下手に編集入れると今度は個性を殺しちゃうし――って、あなたいつからそこに！？」
　独り言のように喋っていた日向がようやくひびきに気づいた。
「困ってそうだから、声をかけてみたんだけどー？」
　素直に用件を言うひびき。
　日向は彼女が何者かすぐにわかったようで、気を取り直して言う。
「っと……、君は野球部のマネージャーさんか。ひびきちゃんだっけ」
「みょえ！？　なぜ、私の名前を！」
　一見しただけで、自分が誰なのか当てられたひびきは大層驚き、変な声が出た。
「仮にも私は、非公式新聞部の部長よ？　特徴のある人はすぐ覚えるわ。あなたいつも、ぬいぐるみを持っているじゃない。今日はバッグから頭だけ顔出してるし。すぐにわかったわ」
　ちちっと指を振りつつ日向は自分の推理を述べる。
「な、なるほどお……」
　妙な貫禄に納得したひびき。
「私には難しいことは良く分かんないけど、掲載場所一つに全部掲載するヒツヨウはあるのかなあ？」
　そんな何気ない一言にはっとさせられた日向は、おもむろにひびきの手を取ると、
「そうよね！　いろんな手配とか必要だけれど、非公式を名乗ってるんだから、苦労するのは当たり前よね！」
　そのままぶんぶんと上下に振り回す。
「ありがとう！　これで覚悟は決まったわ。テーマごとに記事を作成して、何誌か作成して掲示場所の拡大を申請して……。うん、これで何とかなりそうだわ。ありがとね、ひびきちゃん！　今度野球部の取材させてね！」
「にょええ……。はやぶさ、よ、よかったのかなあ？」
　そうと決まればと、嵐のように去っていった日向を見送りひびきはいバッグの中に入れて頭だけ出しているペガサスのぬいぐるみに話しかけるのだった。