Afternoon on a rainy day｜リアクション

Afternoon on a rainy day

【一日！　そして、メイドさんと主人のお話】

　一三時前、雨が降ってきた頃には洗濯物はすでに収納していた。
　檜扇唱華は乾燥させた洗濯物をたたみつつ、自分の担当分はさっさと済ませてしまっていた。
　玄関先や、雨が降って汚れるである部分は適宜対応し、傘袋のチェックと補充なども済ませる。
　湿度計を確認しつつ、自分は業務を終える。
「さて暇です……。まあ何かありますと困りますので部屋で待機という名目の休憩ですね」
　そんなことを言いつつ一息入れる。
「舞華ちゃんは……いないと。アトリエでしょうか」
　そう言いつつ、ちょっと考えるとくすりと微笑んだ。
「私までお邪魔するのは悪いので行きません。それくらいで動じる月詠様ではありませんが……さて、どうしましょう？　そうですね服飾の続きでもやりましょうか？　どこまでやりましたでしょうか」
　そんなことを言いつつ、デザイン画を探す。
「月詠様から頂いたデザイン画はしっかり保存してあります」
　そう言いつつ、デザイン画を取り出す。
　そのときちょうど一五時くらいに部屋に主人が帰ってきた。

　さて、先ほどから名前が出ていた二人……旅鴉月詠と檜扇舞華であるが、この二人、先ほどアトリエからこちらへ戻ってきたのであるが……手にはクッキーの袋があった。
　一体、何をしていたのだろうか……？

　雨が降ってきたとき、月詠はしばらくしてから窓を開けた。
（雨音は落ち着くので制作にはとても良い。さて、何を作ろうか？）
　そう考えつつ、窓から景色を眺める。
　そうすると、雨宿りする猫等が見つかる。
　そんなとき、ふと、月詠にアイディアが生まれる。
　まず、月詠は星ヶ丘の建物と自然を大雑把に鉛筆で書き込む。
　それから、先ほどの猫たちの後ろ姿を風景に溶け込ませるように入れ、その想像スケッチを元に水彩の色鉛筆を使って、やや明度を暗めに、しかし明るく絵を整えていく。
　そうして、できあがった絵を月詠は突然三秒ほど雨の降る外にさらした。
「月詠さん遊んでくださいって、何をしてるんですかー！」
「やあ舞華、いらっしゃい。そして手伝え」
「えっ？　えっ？」
　そんなとき、舞華が放送のネタを求めてアトリエに来たのだが、その行動に驚く。
　しかし、何かする余地も無く淡々とその絵を置く主人に、舞華は戸惑いつつ、聞いた。
「何を、手伝いますか？」
「クッキー作りだよ」
「えっ？」
　返ってきた言葉の意味が分かると、舞華は慌ててカメラの準備をした。
「ちょいとお待ちを、カメラ持ってきますので」
　そう言いつつ、クッキー作りが始まった。
　そんなこんなで、クッキーを作っていくのだが……。
「蝶型やキャンディ型あるけどバリエーション増やそうかな」
「相変わらず手際の良い事で……。あ、型も撮らせて下さいネタになります」
　何のネタかという事は特に聞かずに、そのままクッキー作りは続行された……。

　というわけである。
「かくかくしかじか、というわけよ」
　そう言って、舞華は分けてもらったクッキーを見せつつ、唱華に簡単に説明した。
「そういうわけで、楽しむといい」
「ありがたく頂戴しますね」
　月詠から唱華もクッキーを分けてもらいつつ、にっこりと微笑んだ。

　さて、そんな風に楽しんでいた三人だが……。
　一六時くらいに、舞華は早速録画した動画を編集し、切り分けて短く解りやすくしたうえで、そこにテロップ入れて解説をつけ動画を流した。
「タイトルは『シンプルにクッキー作ってみた』と。アップロードです」
　そんなこんなで、動画をばらまいてクッキーを食べつつ、いわゆる飯テロの亜種によるコメントを楽しみつつ、時間は過ぎていく……。
　一七時くらいになって、舞華は月詠に声を掛けた。
「今日は、食糧庫見ながら献立考えますか……月詠さん、今日はあたし達に作らせてくださいな？」
　さて、果たして主人のお許しは出るのであろうか？

　乾ききった絵は、複雑に寝子島を映し出していた。
　が、なんとなく雨の日の心情のようなものが描かれている気がする。
　そんな、雨の日曜日……他のところでも今日のフツウは過ぎていく。
　アトリエ戻った月詠が絵の感想を二人に試しに求めてみれば、二人ともそれぞれの答えを返す。
　唱華はその絵を褒めつつ、舞華も連れて行きつつ食料庫の確認もする。
　ついでに、舞華がネットにアップロードしてみたらどうかと提案をしてみるが、果たしてこの絵を上手く電子化できるだろうか。
　
　そうして、今日も一日が過ぎていった。

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