おもちゃ屋さんに行こう！｜リアクション

おもちゃ屋さんに行こう！

　休憩コーナーを訪れて、スタンドでお菓子を買う。
「おかし！　おかしもあるんれすね！　おちゃもやさん、すごいれす！　えーりゅのおかし！　すごい！」
　コトコは大興奮だ。ジュースのカップもお菓子もキャラクター商品なのだ。もちろんミスティックエールのものもある。
「あーしが買うんで好きなだけ食べたらいいっすよ」
　杏那はこう言ってくれたのだが、行儀良くコトコは返事した。
「とー、しってうれす。おかしはいっこまでなんれす、いっこにするれす」
「子どもなのに遠慮せんでも」
　と杏那は言うが固辞してコトコはお菓子をチョイスした。
「こえ、えーりゅのぽっぽこーん！」
「ぽっぽこ？　ああ、ポップコーンだね」
　桐太も笑ってしまった。
　そのすぐ脇を、千絵が足早に通りすぎてゆく。

　休憩所で千絵は真白と合流した。
「すいませんお待たせしちゃって」
　千絵は汗をかいている。よほど夢中で調査していたのだろうか。時計を見て大慌てで戻ってきたという感じだった。
「大丈夫だよ。ジュース飲んでたし。ここジュース安いんだよね。ソフトクリームも普通のとこの半額くらいだよ。もっと近所だったら休憩だけのために来たかも」
　じゃあ行きましょうという千絵に、まあまあ座ってと真白は席をすすめた。
「紅ちゃんまだ来てないしちょっと休もうよ。あ、これオレンジジュース買っといたから。いいっていいって、おごりだよ。どうぞ」
　と紙コップを差し出す。
「すいません……ありがとうございます。では遠慮なく」
　喉も渇いていたらしく、あっという間に千絵はジュースを空にした。
「ところで、次はビデオゲーム売り場に行くつもりだったけど……いま思いついたんだけどさ」
「はい？」
「二階行ってみない？　自転車とかスケボー売ってるみたいだよ。ここからならエスカレーターですぐだし、ちょっと見たいな」　

◆-◆-◆-◆

　ふおー、とののこは手を握りしめた。
「ジェットニャガー……ほんとにあった！」
　目がキラキラしている。
　特撮関係のグッズが集まった売り場だ。フィギュアはそれなりにしかなかったものの、そのぶん低年齢層向けのソフトビニール人形、略してソフビのラインナップは多様だった。
　ののこが賞嘆しているのはそんなソフビのひとつだ。一部に強烈なファンをもつ特撮映画『ゴアラ対メニャロ』に登場のスーパーロボット、その名もジェットニャガーである。
　全高二十センチちかい大型のソフビで、アメリカからの逆輸入品ということだ。ゴアラはアメリカでも人気があり、かの国では驚くべきマニアックなアイテムが製造されているという。
　最近ジェットニャガーのソフビができたらしい、と英二は道々話していたのだが、まさかここで実物と対面するとは思ってもみなかった。ふたつも入荷されているのも驚きだ。
「主演級のメニャロはないのにジェットニャガーはあるんだね」
　英二は手にとってつくづくと眺める。細部に大陸的おおらかさを感じる造形ではあるが、顔は再現力が高いし、ファンには有名なバンザイポーズをとっているのも嬉しい。
「パンチパンチパ～ンチ♪」
　ののこもジェットニャガーを水平にして、空飛ぶ姿勢にしていたりする。ののこもジェットニャガーはことのほかお気に入りなのだ。
　英二はそっと値札を確認した。
　一瞬笑顔が消えるほどのプライスだった。
　さすが逆輸入品、ぜんぜん低年齢層向け商品ではないことだけはまちがいない。
　けれど手が届かないほどの額ではなかったりするのがまた困る。ニャンプラとゲームを合わせても手持ち資金の範囲にはなんとか収まるではないか。バイトやってて良かったと思うことしきりである。
　ソフビは守備からちょっと外れるんだけどな……と思いながら隣を見ると、
「さすがに私には手が出ないや」
　ののこはなんだかしょんぼりした様子で、ジャガーを棚に戻していた。
　これ買ったら野々さん、遊びに来てくれるかなあ。
　でも大きいから、置く場所に困るかも。
　どうしたものか。