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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
おもちゃ屋さんに行こう！
また買ってしまった。
英二はカートに目を落とす。
ニャンプラ三箱、ゲームが二本。
さすが超大型店舗、ビデオゲームソフトのラインナップも相当なものがあった。最近続編が出て大ヒットした『DIE YOUNG』の廉価版がさらにプライスオフになって売られていたではないか。他にも少し前の話題作があったので、遊ぶ時間があるのかどうか悩みつつカートにインしてしまったのだった。
しょせんはプラモにバーゲンゲームだから、合計してもそれほどの出費ではない。バイト代でじゅうぶん補える。されど物理的な意味でも精神的な意味でも、英二のスペースをかなり取られることはたしかだろう。
まあいいや。後のことは後で考えればいい。
次はフィギュアをチェックしよう。それも特撮の！
カートを押す手が軽い。カラカラと押し進みながら左右を見る。
現在英二がいるあたりは桃色のパッケージが多い。おままごとキットみたいなものを通りすぎ、やがて着せ替え人形やその洋服が陳列されているあたりにたどり着く。
色んな衣装があるなあ。
定番の夜会服や看護師さん、キャビンアテンダント（前はスチュワーデスと言っていた気がする）の制服あたりが目立つものの、オフィス用らしきパンツスーツや科学者風の白衣、警官や消防士の制服もあった。飛行機関係ならパイロットだってある。探検家なんて変わり種もあるし、各国の民族衣装も種類が多い。忍者なんてのもあって笑ってしまった。
しかしやはり、人気なのはウェディングドレスらしい。
ぱっとイメージしやすいAラインドレスに限らず、ショートのものやマーメイドドレス、和風の白無垢もあるではないか。
将来の夢はお嫁さん、なんて言う時代はとうに終わったと思う。
でも、あこがれの衣装なんだろうなあ――。
ドレスの新婦とタキシードの新郎が並んでパッケージされたセットもあった。
「あれ？」
見覚えのある姿が目の前をよぎった。くりっとしたポニーテールに大ぶりの眼鏡、背格好も。
あれって『クラン＝G』の店長代理だよね？
たしか、三佐倉さん。
店長代理という名目だが本当のところは、この四月から中学生の女の子なのである。気になるオモチャでもあって見に来たのだろうか？ それともライバル店の視察……？
だとしたら、あのニャンプラの豊かすぎるラインナップを目にしてショックを受けたかもしれないなあ。
などと考えて意識を飛ばしていただけに、たたたっと軽やかに駆けて、
「ばっひゅーん！」
フリスビーをキャッチするビーグル犬みたいに飛びついてきた姿に英二は本当にたまげた。
「英二くん！」
野々 ののこなのだった。勢いがよすぎて英二はとっさに支えきれず、数歩わたわたとバックしてようやく止まった。
いつか観た映画のポスターみたいに腕と腕をとりあい、見つめ合う格好になって息をつく。
「の……野々さん！？」
距離が近いことを急に自覚し、ひゃっと英二は両手を引っ込める。オーブンから出したばかりの熱い皿にふれたみたいに。
「そうだよ～」
ののこは白い歯を見せた。
「びっくりした？」
「した」
すごく、と英二は言い足す。
でもお店のなかで走っちゃだめだよと言い聞かせた。ののこは「は～い」という返事だ。まもなくお互いに高校三年生になるという気がしない。
たしか野々さんって、四月早々に誕生日がくるんだよね。
ということは十八歳になるのか。
にわかには信じがたい話だが、もう結婚だってできるようになるわけだ。
結婚……。
ののこの背後には、着せ替え人形のウェディングドレスが並べられている。
現実的な話とは思えない。ののこはもちろん自分にとっても、あと百年くらい先のことのような気がする。
あ、でも女性は十六で結婚できるんだっけ？ ちがったかな。
「どうしたの？」
英二が自分ではなく売り場を見ていることに気づいたらしい、ののこは振り向いて、
「ワオ、可愛い。着せ替え人形見てたんだね！」
「あ、いやそういうわけじゃなくて……」
「別に恥ずかしがらなくていいじゃん。へー、すごくたくさん出てるんだなぁ、ドレスひとつとっても」
ふんふんとうなずきつつ、ひとつひとつ手に取っている。
うん、まあそれでいいか。
「だよね、種類いっぱいあることに驚いてさ」
言いながら英二はののこの横に立った。
「野々さんも買い物？」
「ていうか暇つぶし。最近さぁ～、あおいちゃんがあんまり遊んでくれないんだよねえ……ハローニャックって一回来てみたかったからひとりで来ちゃった」
七夜あおいは介護医療系の専門学校に進学することに決めたと聞いた。その準備や勉強が忙しいのかもしれない。
「英二くんは？」
「僕も似たようなものだよ。ひとりでぶらぶらと買い物。次は特撮のフィギュアのコーナーに行こうと思って」
「ほんと？ 私も行く行く！」
一緒に行っていいかな？ とか遠慮がちに訊いたりしない。ののこは心からそう言っているのだ。
僕と野々さんも、それくらい親しい関係にはなってきたのかな、と英二は思う。
英二はカートに目を落とす。
ニャンプラ三箱、ゲームが二本。
さすが超大型店舗、ビデオゲームソフトのラインナップも相当なものがあった。最近続編が出て大ヒットした『DIE YOUNG』の廉価版がさらにプライスオフになって売られていたではないか。他にも少し前の話題作があったので、遊ぶ時間があるのかどうか悩みつつカートにインしてしまったのだった。
しょせんはプラモにバーゲンゲームだから、合計してもそれほどの出費ではない。バイト代でじゅうぶん補える。されど物理的な意味でも精神的な意味でも、英二のスペースをかなり取られることはたしかだろう。
まあいいや。後のことは後で考えればいい。
次はフィギュアをチェックしよう。それも特撮の！
カートを押す手が軽い。カラカラと押し進みながら左右を見る。
現在英二がいるあたりは桃色のパッケージが多い。おままごとキットみたいなものを通りすぎ、やがて着せ替え人形やその洋服が陳列されているあたりにたどり着く。
色んな衣装があるなあ。
定番の夜会服や看護師さん、キャビンアテンダント（前はスチュワーデスと言っていた気がする）の制服あたりが目立つものの、オフィス用らしきパンツスーツや科学者風の白衣、警官や消防士の制服もあった。飛行機関係ならパイロットだってある。探検家なんて変わり種もあるし、各国の民族衣装も種類が多い。忍者なんてのもあって笑ってしまった。
しかしやはり、人気なのはウェディングドレスらしい。
ぱっとイメージしやすいAラインドレスに限らず、ショートのものやマーメイドドレス、和風の白無垢もあるではないか。
将来の夢はお嫁さん、なんて言う時代はとうに終わったと思う。
でも、あこがれの衣装なんだろうなあ――。
ドレスの新婦とタキシードの新郎が並んでパッケージされたセットもあった。
「あれ？」
見覚えのある姿が目の前をよぎった。くりっとしたポニーテールに大ぶりの眼鏡、背格好も。
あれって『クラン＝G』の店長代理だよね？
たしか、三佐倉さん。
店長代理という名目だが本当のところは、この四月から中学生の女の子なのである。気になるオモチャでもあって見に来たのだろうか？ それともライバル店の視察……？
だとしたら、あのニャンプラの豊かすぎるラインナップを目にしてショックを受けたかもしれないなあ。
などと考えて意識を飛ばしていただけに、たたたっと軽やかに駆けて、
「ばっひゅーん！」
フリスビーをキャッチするビーグル犬みたいに飛びついてきた姿に英二は本当にたまげた。
「英二くん！」
野々 ののこなのだった。勢いがよすぎて英二はとっさに支えきれず、数歩わたわたとバックしてようやく止まった。
いつか観た映画のポスターみたいに腕と腕をとりあい、見つめ合う格好になって息をつく。
「の……野々さん！？」
距離が近いことを急に自覚し、ひゃっと英二は両手を引っ込める。オーブンから出したばかりの熱い皿にふれたみたいに。
「そうだよ～」
ののこは白い歯を見せた。
「びっくりした？」
「した」
すごく、と英二は言い足す。
でもお店のなかで走っちゃだめだよと言い聞かせた。ののこは「は～い」という返事だ。まもなくお互いに高校三年生になるという気がしない。
たしか野々さんって、四月早々に誕生日がくるんだよね。
ということは十八歳になるのか。
にわかには信じがたい話だが、もう結婚だってできるようになるわけだ。
結婚……。
ののこの背後には、着せ替え人形のウェディングドレスが並べられている。
現実的な話とは思えない。ののこはもちろん自分にとっても、あと百年くらい先のことのような気がする。
あ、でも女性は十六で結婚できるんだっけ？ ちがったかな。
「どうしたの？」
英二が自分ではなく売り場を見ていることに気づいたらしい、ののこは振り向いて、
「ワオ、可愛い。着せ替え人形見てたんだね！」
「あ、いやそういうわけじゃなくて……」
「別に恥ずかしがらなくていいじゃん。へー、すごくたくさん出てるんだなぁ、ドレスひとつとっても」
ふんふんとうなずきつつ、ひとつひとつ手に取っている。
うん、まあそれでいいか。
「だよね、種類いっぱいあることに驚いてさ」
言いながら英二はののこの横に立った。
「野々さんも買い物？」
「ていうか暇つぶし。最近さぁ～、あおいちゃんがあんまり遊んでくれないんだよねえ……ハローニャックって一回来てみたかったからひとりで来ちゃった」
七夜あおいは介護医療系の専門学校に進学することに決めたと聞いた。その準備や勉強が忙しいのかもしれない。
「英二くんは？」
「僕も似たようなものだよ。ひとりでぶらぶらと買い物。次は特撮のフィギュアのコーナーに行こうと思って」
「ほんと？ 私も行く行く！」
一緒に行っていいかな？ とか遠慮がちに訊いたりしない。ののこは心からそう言っているのだ。
僕と野々さんも、それくらい親しい関係にはなってきたのかな、と英二は思う。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2020年12月29日
- 参加申し込みの期限
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- 2021年01月05日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2021年01月05日 11時00分
