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ンモ~っ♪ 新春☆初夢フェア2021! ~富士編~
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【いつか、どこかの君へ】
例えば二人が何の変哲もない、無垢な少年少女であったなら。立場もなく、背負う家柄やしがらみもなく、交差点の人いきれの中でふと目が合い、思わず足を止めて見つめ合うような……そんな出会いであったなら。
八神 修
はかぶりを振った。
夢を見るのは自由だが、現実の自分には自由の持ち合わせなどない。
「執事長! 大変です!」
「……またあおい様か?」
「は、はい! 結婚なんてしたくない、と逃げ出してしまいまして……」
やれやれ、とんだ跳ねっかえりだ。ため息が漏れた。休憩時間もありゃしない。
「俺が何とかする。お相手のボンボンは待たせておけ」
「は、はい」
執事長などと聞こえはいいが、つまるところ雑用係の長だ。執事やメイドの扱いも、厨房の一流シェフたちが拵える食事のメニューも、調度品の入れ替えさえも、屋敷の全てを八神の采配が整えている。
幸い人を扱う才には長けていた。幼い頃から身を寄せる七夜家の教育の賜物だが、もとより八神に備わる天性でもあったのだろう。おかげで高貴なる血族を縁の下で支える下々の者としてはこの上ない出世を果たすことができた。日々の暮らしに困ることはないし、不自由を感じることもない。
ただ……本当に欲しいものだけは、永久に手に入らない。
満たされた虚ろな箱庭で、それだけが八神にとってたしかなことだった。
雨上がりの曇天は、幼い頃に閉じ込められた地下室を思わせた。せっかんの理由は覚えちゃいないが、あの頃の自分にはまだ人が生来備えているらしい反骨精神というものがいくらか残っていた。
それが今じゃどうだ。
「知ってるかい。空を飛び、壁をぶち破って登場するヒーローに、人間なれはしないのさ」
分厚くやぼったい灰色のカーテンをまくるように、八神は主人のあおい嬢を探す。いつもの中庭の噴水には姿がない。池で鯉と戯れてもいなかった。離れの秘密基地にも訪れたような痕跡は無かった。
「懐かしいな……」
子どもの頃は、牢獄めいた自室から夜中に抜け出すたびここで出会ういたずらっぽい笑顔を浮かべた女の子が、主人の愛娘であろうなどと想像する余地もなかったものだ。
当時から使われていなかった離れに二人築いた聖域で、八神は本来自身にも与えられてしかるべき人権という言葉や、口にしたこともなかった高級な菓子の深い味わいや、コミックの中で活き活きと躍動するヒーローの存在を知った。
やがて執事見習いとして従事し、世に言う現実と自身のそれとの剥離を認識するまで、記憶は美しい宝石として胸の奥にしまいこまれた。
だが今ではそれも、すっかりくすんでしまった。
「ここにもいないとなると」
敷地を囲う塀の一角、茂みが人目から覆い隠すところへすっぽりと、あおいは座り込んでいた。丸めた背中がいつにもまして小さく見えた。
「あおい様」
返答はない。
あおいが見つめる先には、朽ちかけ塗装も剥げた木造りの箱があった。色褪せてプリントされた文字もかすれた、猫用の餌皿も。
二人、ここで猫を世話していた。箱はその住まいだ。子猫だった。秘密基地では鳴き声で屋敷の者に知れる可能性があったから、やむなく人目につかないここへ仮住まいを設えたのだ。
もっとも猫はある程度大きくなったところで、屋敷の外へ逃げ出してしまった。猫にとってもこの家は、きっと窮屈だったのだろう。
八神が執事長になってからは、今でも形を残すこの小屋が人目に触れないよう執事やメイドの行動範囲をコントロールしていた。なるべくこのあたりを訪れるのは自分一人であるよう調整している。あおいもそのことは知っていただろう。
打ちひしがれたような背中へ、路傍の石くれへかけるように声を投げる。
「あおい様。準備はつつがなく整っております。あとはあおい様がいらっしゃるのを待つばかりで」
「…………」
「あおい様。これ以上は、お父上や御家名にまで傷がつくかと」
「そんな呼び方はやめて」
怒りをにじませた声は全てを過去にする稲妻のように力強い。あの頃と変わらない。
「全部分かってるくせに。修君はひどい人だよ」
「仕方ないだろう? 俺は執事だ。仕事をしているだけだ」
あの猫には確か、名前があったと思う。マシュマロや天上の雲のようにやわらかく、ビターチョコのように甘さの中にほのかな苦味をたたえ、強く勇ましい名前だったはずだが、八神には思い出せなかった。あるいは幼少の思い出を記憶が美化しているだけかもしれない。
あの猫は、何と言っただろう。
「またあの頃みたいに呼んで。私を知らない世界へ連れ出して」
「……連れ出してくれたのは、君さ。俺こそ何も知らなかった。何も」
人ではなかったのだ。生まれてからの修は。家に囚われ、家に盲従した。
あおいが八神を人にしたのだ。子どもならではの無垢と大らかな心と、未知への探求心と、受け入れる度量と……あおいが持つ全てが、八神を純粋な存在へと還元したのだ。
大恩あろう。全て投げ出しても報いる価値があると信じている、しかし悲しいかな八神は同時に悟ってもいた。
本当に欲しいものは、手に入らない。
「修君、私……あんなやつと結婚なんてしたくない。こんな家なんて……お父様なんて! 私はラッピングされた贈り物でしかない。ただの道具に過ぎない。こんなのが、私の……」
八神も彼女も、変わらないのだろう。大きなものに囚われていて、逃れることはかなわない。わずかな思い出を胸に、押し潰されそうな諦観へどうにか抗い続けるしかない。
それがこの世の理というものだ。
「私をさらって。修君」
「できない……俺はこの家の」
「お願い。一緒にいこう? 私、覚悟を決める。勇気を出すわ。全部捨てたってかまわない、あなたと一緒にいるためなら。だからあなたも」
「できない! 俺は……俺は!」
その時。
高い塀の頂点で、猫がなおうと不敵に鳴いた。
それがきっと合図で、スイッチだったのだろう。
「本当に、いいの……?」
「ああ。そうだな。これがきっと、俺にとって一番たしかなものだから」
おんぼろバイクで夜を駆ける。八神が長年かけて屋敷の資材をちょろまかし、かの秘密基地へ運びこんでは修理していたものだ。いつかこれにまたがり、背に彼女を乗せて走ることを夢見ていた。
「例えば、さ」
「ああ」
「例えば私たちが、普通の高校生だったとして……江ノ島あたりにある、ちょっとのどかな学校でね。私はフツウの家に生まれたフツウの女子高生。大家族で兄弟がたくさんいて、ちょっと大変だけど、愛情たっぷりな家で……修君はね、お金持ちの家に生まれた天才児なんだけど、動物が好きでいつも猫や犬に囲まれてて」
「はは。なんだいそりゃ」
八神の胸に回した腕が、きつく締まった。
「私たち、もし別の場所で、別の立場で出会っていても」
「ああ」
「修君は……私を好きになってくれる?」
「そんな世界が、どこかにあるのなら。そっちの俺だってきっと、君を放っておかないさ」
猫のように、気まぐれに飛び出そう。
世界は広い。選択肢はいくつもある。何者にも囚われてはいない。
そのことを教えてくれたぬくもりが、今、八神を包み込んでいる。
おんぼろバイクはひた走る。全てを置き去りにして、遠く。遠く。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
墨谷幽
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
オールジャンル
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2021年01月01日
参加申し込みの期限
2021年01月08日 11時00分
アクション投稿の期限
2021年01月08日 11時00分
参加キャラクター一覧
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