ガラスの中の小さな世界｜リアクション

ガラスの中の小さな世界

●創造の世界の中を揺蕩う

　水上桜は、気が付いたら自分が作り上げたバーバリウムの中にいた。
　ネオンブルーの海の底の白砂には、色とりどりの貝殻と沈没船の錨や宝箱が置かれていた。
　色とりどりの熱帯魚が沈没船の周りをふわりふわり、ゆらゆらと浮かんでいるように泳いでいる。
　自身も熱帯魚のように浮かんでいる気分なので、とても心地いい。
（あー、もういい感じ……）
　まったりしているので、夢の中でも、夢を見ているような感覚で気持ちいい。

（キレイ……ここ、海の中？）
　光村千恵も、桜と似たような夢を見ている。
　黄色の花とカスミソウ、ピンクの花が透明な水の中をゆらゆらと揺れている。
　その中を千恵と兄の光村日向、愛猫のコトラが泳ぐようにその中を動く。
　日向は走っているような動き、コトラはその後をついて歩いているかのように水の中を歩く。
　待ってー！　と千恵は兄とコトラを追いかけた。
（コトラとお兄ちゃんと一緒で嬉しいな）
　このままずっと楽しく過ごしたいなと思う千恵だったが、にゃーという猫の鳴き声が聞こえた。
　気のせいと思ったが、鳴き声は徐々に大きく聞こえる。
　それだけでなく、何かにぺちぺちと肩を叩かれたような感覚が。
　何？　と、うっすらと目を開けると目の前にコトラがいた。
　夢の中で聞こえたのはコトラの声だった。
「あれ……コトラ何でここに？　ってお兄ちゃん！？」
　気が付くと、コトラを抱いている兄の光村日向もいた。
「千恵、ダメだよ……？　勝手にこんな……知らないところに来ちゃ」
「えへへ、ハーバリウムが作りたくって来ちゃった」
「それでも……一言、声はかけること！」
　日向が注意すると千恵は「はーい」と返事をした。
「うん、いい返事」
　千恵の頭を撫でながら、日向は自分が作ったハーバリウムを見せた。

「僕も作ってみたんだ……どうかな？」
　千恵のは上手にできているね、と覗き込む。
「わわわ、私のは見ちゃダメ……！　うう、遅かった」
　後で見せようと思っていたのに、先に見られてしまった。
「上手くできて……よかったね。これ、えらい千恵に……あげる。プレゼントだ」
「あ、ありがとう！　大事にするね！　お兄ちゃんのも上手にできているよ」
　今日はやめておこう、と千恵は自分が作ったハーバリウムを日向にあげるのをやめた。

（あれ？　さっきまでハーバリウム作ってたのに……）
　万条幸次は、なぜか隣にいる飼い猫の花遊と一緒にいた。
　1人と1匹がいる場所は、エノコログサと黄色い花が漂っている透明な水の中。
（水中なのに息ができるっていいねぇ）
　リラックスして大の字になって「うーん」と手足をおもいっきり伸ばす。
（ぽかぽかあったかいねぇ……眠くなってきた）
　エノコログサと黄色い花が揺れ動く中、幸次は大の字になってまま眠り、水の中を漂う。
　花遊は幸次にくっつき、丸くなって気持ち良さそうに眠っている。
　飼い主と猫は、どんな夢を見ているのだろうか。

　

（気持ちいいねぇ……ずっとこうしていたいねぇ……）

　ハーバリウムの中で夢見心地な気分に浸っていた桜と幸次だったが、講師に起こされて現実に引き戻された。
「ここで寝ると風邪をひきますよ。集中し過ぎて疲れてしまいましたか？」
　寝ぼけ眼で講師を見ながら、2人は、そうかもしれないと答えた。
「眠ってしまうほど集中疲れしたのかしら、私……」
「慣れないことをすると疲れるねぇ……まだ眠いよ」
　家に帰ったら、ゆっくり休もうと決めた桜と幸次だった。

　後日。
　千恵の机の上に、2つのハーバリウムが並んでいる。千恵が作ったものと、日向が作ったものだ。
　それを見た千恵は、ご満悦な顔をしている。

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あとがき

担当マスター：カターレ
ファンレターはマスターページから！

カターレです。
ハーバリウム、すごく綺麗なアートですよね。
ワークショップに参加した皆様、お疲れ様でした。

このシナリオは京谷イラストレーターのハーバリウム企画を元にしたものです。
他のキャラクターさんのハーバリウムが気になった方は、イラストをご覧ください。
どのハーバリウムも素敵なものばかりなので見惚れてしまいました。

ハーバリウムを作ったことがありませんが、参加された皆様が一生懸命に自分の世界を
作り上げる様子を思い浮かべながら執筆しました。
イメージ通りのハーバリウムに仕上げっていたのであれば幸いです。

ご参加、ありがとうございました。
ご自身が作り上げた素敵な世界をお楽しみください。

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ガラスの中の小さな世界

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