ガラスの中の小さな世界｜リアクション

ガラスの中の小さな世界

●自分だけのハーバリウム

　水上桜は瓶の底に白い砂を入れ、その上に貝殻、沈没船の錨、宝箱の小物を置く。
　それからアジサイの花びらと水草を瓶に押し込み、苦労して作ったネオンブルーのオイルを注ぎ入れる。
　大変な部分もあったが、どうにか思い描いていたハーバリウムを完成させることができた。
「蓋を閉めて、と。初めて作ったにしては悪くない感じね。もう少し、シンプルにしたほうが良かったかな？」
『そんなことない。すごく綺麗』
　桜のハーバリウムを見た小山内海は、自分と違うイメージに感心する。
「ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいわ」

　海は苦労しつつ、どうにか思い通りのオイルが仕上がったので瓶の底に貝殻と水草を詰めていく。
　それが終わると、下層部分の濃い青に染めたオイルを少しずつ注ぐ。
（うん、いい感じ）
　下層部のオイルを注ぐと、次は白いドライフラワーの花びら押し込み、空をイメージして染めた淡い青のオイルを注いでいく。
　オイルが入れ終わると、白い花びらは魚が泳いでいるかのように瓶の中をヒラヒラと動き始めた。
　それは、空をたなびく雲のように見える。
　すべての中身を入れ終えると、蓋をしっかり閉める。これで海のハーバリウムは完成した。
（うん、なかなかいい感じにできたかも。我ながら結構綺麗にできた）
　光にかざすとキラキラしているので、いい感じに仕上がったと満足気。
（部屋に戻ったら机の上に飾っちゃお）

　この中に入ってみたい、と、自分が作り上げた瓶の中の世界にいる自分を想像する。
　
　講師に教わりながら、万条幸次は瓶に長さを調整したエノコログサと黄色い花を詰めていく。
「材料をそーっと入れて、オイルを注いで……」
　瓶から溢れ出ないよう、慎重に透明なオイルを注ぐ。それが終わると、しっかり蓋をする。
「出来上がり！　ハンドメイドなんてほとんどやらないけど、綺麗なのが出来たなぁ……結構いい出来だと思うねぇ」
　好きな猫の形をした瓶。
　エノコログサと猫要素が詰まったハーバリウムを完成させたことが嬉しかった。
「慣れない作業で疲れてきたからかなぁ。眠たくなってきた……」
　仕上がったばかりのハーバリウムをじっと見ているとウトウトしてきた。
　
　光村千恵のハーバリウムも蓋をして、白いリボンを結べば出来上がり。
「完成！　……思ったより上手くできちゃった。これ、どうしよう」
　兄の日向にプレゼントしちゃおうかな。机に飾るのもいいよね、と、いろいろ考える。
　これを自分の手元に置き、いつでも日向を感じたい。日向にはもっといいものをあげたい。
（何だか眠たくなってきちゃった……疲れたかな……）
　いろいろ考えているうちに、千恵は眠たくなってきた。
　
　光村日向は小さめのスターフラワー、ハート型のハートリーフ、カスミソウを瓶に詰める。
　ハーバリウムを作っている間、コトラは幸次に見てもらっている。
　レンタルスペースに入る前、講師に「猫を入れてもいいですか」と訊ねると日向が作業している間は見てくれるというのでコトラと一緒にいることができた。
　瓶に淡いピンク色のオイルを注ぎ、瓶をしっかり閉め終えるとハーバリウム完成。
「上手にできましたね」
　講師に褒められたので日向は嬉しかった。
（千恵が好きだからここに来たんだよね……僕のハーバリウムあげようかな……。喜んでくれるなら……作った甲斐あるし）
　千恵は何をしているかな？　と様子を見ると、疲れたのか机に突っ伏して眠っていた。

　眠たくなってきたのは幸次と千恵だけでなく、桜もだった。
　イメージに近い出来上がりのバーバリウムを眺めているうちに、いつの間にかウトウトと眠ってしまった。

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