中学生、最後の試練！学年末テスト！＜物語編＞｜リアクション

中学生、最後の試練！学年末テスト！＜物語編＞

☆遠距離恋愛

　テスト返却日の放課後、３年生の月守輝夜は、青木慎之介に声をかけました。
「一緒に帰ろう」
「オーケー」　
　家が近くなので一緒に帰るのはいつものことで、いつものように慎之介は応じてくれたのですが……。
　なんだかいつもと違って物思いにふけっているように見えました。
　校門を出て歩き出しながら、輝夜の中ではいろんな思いが渦を巻いていました。
（テストの事も聞きたいし。留学予定なのに大丈夫なのかな？）
　先日のバレンタインで輝夜は慎之介に告白したのです。
　そして見事両想いとわかったのですが……。
（留学して離れ離れになるから、一緒に居られないから付き合えないとか言われたし。私は遠距離恋愛で良いと思うのに……）

　まずは、テストの話から切り出すことにしました。
「テストだけど……私は中学最後のテストだから良い点とりたくていつも以上に頑張って勉強したから、勉強の成果が出たかな。慎之介くんは？」
「Ｏｈ！　よかったじゃん！　お前ならやれると思ってたぜ！」
　慎之介が明るくそう言ってくれたのは嬉しいのですが。
「で、テスト結果はどうだったの？」
「ああ……」
　歯切れの悪い様子に、輝夜は心配になってきました。
（あんまり良い結果じゃないのかな、いつもこんな顔はしないのに）
「よくなかった？　もうすぐ留学するっていうのに心配になっちゃうよ。赤点は無かったよね？」　
「いや、そりゃ……」
　未だに晴れない慎之介の表情に、輝夜は本当に心配になってきました。
（赤点……まさか何個も？）
「もしかして留学の準備で勉強時間とれなかったとか？　少しの時間でも勉強会開けばよかったね。しっかり睡眠時間取れてる？　無理してない？」
　つい矢継ぎ早に質問してしまう輝夜に、慎之介は驚いたような顔を向けて、
「いや、ソーリィ、成績はいいってこともないけどそこまで悪いわけじゃない、sosoだ」
　ようやくポジティブなことを言ってくれました。
「なんだ、びっくりしちゃった……」
　でもそれなら、どうして慎之介は浮かない顔をしていたのでしょう。
「実はこないだのバレンタインのことを考えてたんだ……遠距離恋愛という発想はなかったんで、驚いた」
　もうそろそろ慎之介の家が見えるという頃。
　輝夜は今まで胸に秘めておいたことを言いました。
「そうだったんだ。私は慎之介くんのこと好きな気持ちに変わりはないから。初めての恋人と遠距離恋愛になるのも留学の事聞いた時から覚悟の上だよ。一緒に居れなくても電話できるし、少しずつバイト代貯めてるから来年の夏休みまでに旅行代金にするのが目標なの」
（それでも付き合えないって言うなら考えちゃうけど）
「そうか……いろいろ考えてたんだな。俺は、ちょっとシンキングタイムがほしい」
　そう言った慎之介の表情に、輝夜はちょっと安心しました。
「わかった。じゃあね！」
　家に入っていく慎之介に笑顔を向け、輝夜は手を振りました。
（考えてくれるなら……きっと大丈夫だよね？）
　不安にならないと言えば嘘になるけれど。
　今の輝夜は、慎之介を信じるしかなかったのです。

このページにイラストを設定する