携帯戦記カプセルギア　ちょこっと競技会！｜リアクション

携帯戦記カプセルギア　ちょこっと競技会！

【駆け抜けろ、アスレチック！（１）】

『ハロー、ギアマスターの皆さん！　本日のアスレチックフィールドは森林・岩山・水上・市街エリアとなっております。コースはいつもと同じ、でも今日はちょこっと競技会！　今こそいつもの練習の成果を見せる時！　ってわけで、頑張ってくださいねー♪』
　元気声なお姉さんのアナウンスが響く中始まった、『カプギア・ちょこっと競技会！』。フィールドではさっそく参加者たちがそれぞれにスマホや簡易端末を手に、相棒のカプセルギアをぎゅいーんっと疾走させております。
　今回のイベントでは、アスレチックコースを走破した後に間髪入れず、バトルフィールドでの乱戦へ飛び込まなければなりません。これがなかなかに過酷……ですけれど、評価点はクリアタイムや撃破数のみならず、『魅せる！』操縦もまた重要なポイントとなっておりまして。華麗な操縦テクはもちろん、ちょっとしたパフォーマンスやケレン味たっぷりな演出。さらにはギアマスター本人のキメポーズやらマスター同士のかけ合いやら、あらゆるものが評価に繋がったりするもので、単純な対戦競技に留まらず幅広い楽しみ方が可能なのが魅力です。
　そこへいくと鷹司凜太郎とスピカ・フォーツのふたりなどは、高得点ゲットの下地を初めから備えていると言えましょう。
「今日は手合わせだな、スピカくん」
「うん……楽しもう、ね。リンタロウ」
　なにしろおふたり、恋人同士。今回はチームも組まずそれぞれに個別出場で記録を競い合う……とはいえ本人たちは隣り合って操縦しておりますし、フィールドの愛機を注視しつつも時折ちらりと視線は絡み合い、ふとした拍子に肩と肩はふれ合い、競技のさなかにあってにこりと笑みを交わし合うのです。
　そんなイチャイチャには見ている人だってそりゃあもう、もにゅもにゅきゅんきゅん！　としてしまうとゆーものです、ええはい。
　ギアネーム・サジタリウスこと凜太郎の愛機は、『ベレロフォン』。半人半馬のボディを持つ弓兵型カプギアで、地形走破能力が高くアスレチック向きの俊足タイプです。いざとなれば飛行することもできましたけれど、今回は操縦の練習も兼ねて足を使ってクリアすることにしました。
　併走する狼型カプギア『トライアルα』を駆るのは、エクリプスことスピカです。トライアルαはスピカが持つ三機のカプギアの中でも特に地上での機動力と火力に特化した機体で、獣型の脚部は傾斜や段差を飛び越えて疾走するのにピッタリです。
「βは、両腕のワイヤーアンカーで、立体機動……γは飛べるし、お話にならない。αが一番、このコースを楽しめる」
　言うが早いか、トライアルαは山道の斜面を蹴って大ジャンプ！　コースに設置されたうんていへ取りつくと、ひょいひょいひょいっと難なくそれをクリアしていきます。
「さすがだね、スピカくん。僕も情けない姿は見せられないな。頑張らないとね」
　対するベレロフォン、下半身が重いのかうんていのクリアスピードは劣りましたけれど、次に待ち受ける綱渡りは凜太郎の操縦技術もあって、するするするり！　絶妙なバランス感覚を見せつけました。
　見物しているギャラリーからは、おおーっと歓声が上がります。
「そうだ。スピカくん、せっかくだから賭けないか？」
「賭け……？」
　ただの勝負より、条件を課して臨むほうが高得点と考え……たのか、あるいはふたりのイチャイチャをさらに盛り上げるひとふりのスパイスでしょうか。凜太郎はそんなことを言いました。
「最後のバトルロイヤルで、勝ったほうが相手のお願いをなんでもひとつ聞く。っていうのはどう？」
「……なんでも？」
「なんでもさ。男に二言は無いよ」
「むむ。受けて立つ……！」
　いつもはクールさが目立つスピカも、どうやら奮い立った様子。
　二機はさらに加速し、アスレチックコースをぎゅんぎゅんぎゅん！　森林コースをあっというまに踏破して、岩山コースへ駆け込んでいきました。
「負けない、から。勝って、リンタロウにお願い、聞いてもらう」
「ふふっ。僕だって負けないさ」
　なんて先を急ぎながらにも、イチャイチャ。らぶらぶ。
　ギャラリーのみなさんも、もにゅもにゅきゅんきゅん！

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