携帯戦記カプセルギア　ちょこっと競技会！｜リアクション

携帯戦記カプセルギア　ちょこっと競技会！

【生き残れ、バトルロイヤル！（１）】

　バトルロイヤルモードは、最近アスレチックセンターへ導入された新アトラクションです。システムアップデートを経て、対戦ルールに様々な条件やシチュエーションを設定できるようになったことで、開催競技の幅がぐっと広がりました。
　今回は、３つのエリアに区切られたフィールドへ数十人が同人に飛び込み、最後まで立っていたカプギアが勝利！　というシンプルルール。とはいえただ戦ったり逃げ回ったりしているだけで勝てるほど甘くはなく、フィールドは外周部から徐々に崩落し、狭くなっていくのです。目の前のバトルに飛び込むか、あるいは安全圏への移動を優先するか。上手く立ち回れば、相手を崩落に巻き込ませながら自身は脱出、なんて作戦もアリかも？
「よし、ここからは飛行機能を解放していこう」
　万条幸次のカラスマルが降り立ったのは、火山地帯。頭上にそびえる活火山は常に火を噴き火山弾を放っていて、地面からはランダムに炎の柱が噴き上がるという過酷なエリアです。
　ごつごつした地面の起伏を、カラスマルは翼を打って飛び越えます。
「わっ！？」
　ちゅどんっ、どかん！　とっさに身をかわしたカラスマル。
　突然足元の岩が弾け飛んだのは、マグマの噴出ではありません。
「これは、遠距離攻撃？　一体どこから……」
「あのタイミングでかわされた！　反応いいわね！」

　狙撃を敢行したのは仙藤蒼操るDiablo Azul。岩塊やマグマ柱を遮蔽物として巧みに利用しながら、両肩のキャノンを続けざまに放ちます。
　放物線を描いて飛ぶ砲弾を避けて飛び上がり、カラスマルは左手の錫杖をひと振り。機体の防御力をアップさせると、
「よしっ。さっきのアスレチックの経験を活かして……そこだ！」
　そこかしこへ落下する火山弾の軌道を見極め、そのひとつめがけてびょうと風を起こします。一陣の風は燃え盛る火山弾を巻き込み吹き飛ばし、変化した軌道は一直線にDiablo Azulへ！
「さっそく地形を利用するなんて、やるじゃない」
　相手はベテランギアマスター？　と蒼は気を引き締めましたけれど、幸次はまともなバトルは今日が初めてだったりします。初心者でも上手に扱えるカプギア専用アプリケーション『A.I.C.O.』の助けもあるとはいえ、才能アリかも？
　もちろん、まぎれもなくベテランな蒼の判断は一瞬のこと。
「この地形は不利ね。それなら！」
　ためらいなく、Diablo Azulの両肩からがこんとキャノン砲をパージ。機体を身軽にした上で、ビームライフルを抜き放ち突撃！
「わっ、こっちにきた！」
　急な接近に取り乱してしまうあたりはまだまだルーキー。幸次は左右から挟みこむように竜巻を起こして迎撃しますけれど、Diablo Azulはそれを縫うように接近しながらライフルを連射！　正確無比な射撃に、カラスマルは風にあおられる木の葉のように頼りなげに身をかわすのが精いっぱいです。
「こ、この人強い！　……のかな？　初心者だからよく分からないけど、あんなふうに動かせるなんてすごいな」
　疑いようもない蒼の腕前は、幸次の刺激にもなりました。あんなふうに自由に操縦できたら、もっと楽しいだろうな。もっと強くなれたら、もっと楽しめるだろうな。そんな気持ちがふつふつと湧いてきます。
　もっとこの人と、戦っていたい！
『火山フィールド、Ｂ－１エリアの崩落開始。該当エリアのカプセルギアは、速やかに退避してください。繰り返します……』
　そんなアナウンスが流れた途端、活火山に連なる斜面が突然がらがらと崩れ落ち、バトルフィールドの収縮が始まりました。すぐにでも、より広い場所へ移動しなければなりません。
「なあんだ、いいところだったのに。決着はまた後でね」
　素早く状況判断、即座に移動を始めたDiablo Azul。見事な操縦で地面の凹凸や火山弾も意に介さず、すいすいと駆け抜けていきました。
　カラスマルもまた、巻き起こした風に乗って上空へ飛び上がり、どうにか難を逃れてほうとひと息。
「あんな強い人に勝てるとは思わないけど、せっかくの機会だし。最後まで戦いたいな」
　幸次自身も、ちょっぴり驚きました。どうやら幸次には珍しく、熱くなってしまっているようです。
　カラスマルはぶおんと黒い翼をはばたいて、Diablo Azulを追いかけていきました。

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