【生き残れ、バトルロイヤル！（３）】

『市街エリア、Ｂ－２エリアの崩落開始』
『火山エリア、Ｆ－６エリアの崩落開始』
『水上エリア……』
　フィールドの崩落は止まることなく、どうにかまだ生き残っているカプギアたちも、移動し続けることを余儀なくされました。
　やがて彼らが最後に集ったのは、溶岩噴き上げる過酷な火山エリアの一角です。
「うわ、やばいやばい……！」
　ビギナーズラックか、最終局面まで生き抜いてきた万条 幸次のカラスマルですけれど。
「なんて正確な狙い……よ、避け切れない！」
　降りそそぐ雨のような、光条の連射。それは決して当てずっぽうの乱射などではありません。機動力を生かした回避と竜巻の盾を使っての防御にも関わらず、虚実を混ぜた巧みな射撃は徐々にカラスマルのパーツを削っていきました。
　やがて、
「よしっ、ここだ！　起死回生の風をっ……」
「あま～いっ」
　ちゅどんっ！
　マグマが作った死角の向こうから、狙いすました一射がカラスマルを貫き、ここであえなく撃墜となりました。
「や、やられた～！」
　一瞬、悔しい！　という気持ちがぶわわっと湧き上がりましたけれど。
　でも、
「ふ～。いつになく熱くなっちゃったな」
　頑張ってくれたカラスマルを回収し、ひとつ撫でてやり。ふと顔を見上げると、少し年下らしい女の子が悪戯っぽく笑い、こちらにひらりと手を振りました。どうやらカラスマルを撃墜したカプギア、Diablo Azulのギアマスターであったようです。
「……うん。次も頑張ろう。これからもよろしくね、カラスマル」
　最後は晴れやかに、幸次は相棒へにっこりと笑いました。



　Diablo Azulは突撃し、レーザーソードを一閃……と思いきや。
「ぐぬぬ。２対１はさすがにキツイなあ……！」
　仙藤 蒼は眉毛をハの字に曲げてぐぬぬぬぬ。
　相手はスピカ・フォーツのトライアルαと、鷹司 凜太郎のベレロフォン。ふたりは賭けなどしながらも、互いを狙うカプギアが現れれば自然と同調し、お邪魔虫を排除してから勝負に戻るというスタイルが確立されておりました。
「って私、お邪魔虫扱い！？」
　状況判断とはいえ、両肩のキャノン砲が手元に無いことが悔やまれます。派手な爆発で岩塊を砕き、文字どおりに煙に巻いて離脱を図ることもできたかも……なんて、時すでに遅し。
　数的不利に加えて二機の連携はカンペキで、紛れもない猛者である蒼をしても後手に回らずを得ず。ベレロフォンの光の矢を間一髪で避けたところへ、放たれる波動砲！
「あ、詰んだ」
　受けるは論外、避けても光の矢が飛んでくる。パーツを犠牲にして時を稼いでも、既にDiablo Azulが回避を許されるポイントには敵の二の矢がスタンバイ済み……蓄積された経験がゆえに蒼は撃墜を確信し、Diablo Azulは次の瞬間、どっかん！　炎に包まれたのでした。
「まーでも、戦績としては上出来かな？」
　記録を確認すると、フィールド内に残るカプギアはあと数機。蒼の腕前なら十分に優勝圏内です。そんな中で有利な状況や相手を引けるかどうかは、運だってある程度絡んできます。それもまたバトルロイヤル形式の醍醐味のひとつというものでして。
　蒼はリベンジを誓いつつも、バトルの内容にはけっこー満足！　でありました。



　ベレロフォンが降らせる光の矢の雨による巨大な面制圧を、トライアルαはクイックブーストでぎゅいんっ。急加速でくぐり抜け肉薄すると、フォトンクロー展開！
「私の、勝ち……」
「いいや、悪いがその手は読んでいたよ」


「あ……っ！」
　クローを振りかぶるトライアルαの眼前には、無駄無弓に光の矢を番えたベレロフォン。トライアルαの装甲面での不安を突く広範囲攻撃でしたけれど、凜太郎は次の一手までも見越していたようです。
　矢は光の尾を引いて一直線に、トライアルαを貫きました。
「……むう。負けた……」
「相手がスピカ君だからこそ、読めたんだよ。ほかのギアマスターじゃあそこまで読み切れないさ。さて、賭けは僕の勝ちだね？」
　そう、ふたりの勝負は『勝ったほうが負けたほうになんでもひとつお願いできる』権を賭けた大一番であったわけでして。その機会を逃してしまったスピカは、ぷうっとむくれた顔を浮かべましたけれど。
　そんな表情まで愛らしい恋人へ、凜太郎はにっこり。
「僕のお願いはね。僕が見繕った衣装でデートして貰うこと、だよ。はは、拍子抜けしたかい？」
「……そのお願いには、キスと、お泊りも……含まれますか」
「うん？　そうだね、たぶん含まれるんじゃないかな」
　途端にスピカは、ふにゃふにゃふにゃ～ん♪
「じゃ……問題、なし」
　むぎゅっと抱き着き、ご満悦。勝っても負けても、ご褒美はあまり変わらなかったようです。



　マスターがイチャイチャモードに突入してしまったからか、ちょっぴり動きの鈍ったベレロフォンの背後へそろりと歩み寄る影。
「これはラッキー。遠慮なくいただくのです」
　猫屋敷 姫のナデシコでした。
　後ろからカタナでずんばらり。急所を一撃で泣き別れにすると、あっさりちゅどーん！
　まあお相手はちょっぴり油断していたようですけれど、勝ちは勝ちです。
『たった今、最後の生存者が確定しました！　勝ち残ったのは、ギアマスター・ネコヤシキのナデシコ！』
「おや。今のが最後の相手だったですか」
　最後はそれなりに激戦でして、いつの間にやらカプギアの数も減っていたようです。
　バトル部門での勝者はナデシコ！　パフォーマンス点も加味した上で採点し、今回のちょこっと競技会の総合優勝もまた、ネコヤシキ＆ナデシコに決定したのでした。お見事！



　姫はカプギアサイズの手のひらトロフィーと副賞のレアパーツ詰め合わせセットを手に、スタッフさんの向けるカメラへ向かってピース！　姫の不敵なスマイルと相棒ナデシコの雄姿は、しばし施設内の掲示板に飾られることとなりました。
　幸次と蒼は健闘をたたえ合い、凜太郎とスピカはイチャイチャイチャ。この４名はみんなそれぞれに光るシーンがあったということで、いずれもレアパーツ詰め合わせセットをもらうことができました。きっと次のギアバトルでは、カスタマイズも操縦の腕前も、一段磨きがかかった彼らを見ることができるでしょう。
　そんなこんなで、今回の『ちょこっと競技会』は無事終了となりました。
　いずれは第二回、三回と開催される予定もあるようですし、カプギア・アスレチックセンターではほかにも各種イベント盛りだくさんです。コースを利用して普段から練習に励みつつ、バトルや大会へ積極的に参加して技術の向上を確かめてみるのも良いでしょう。あるいはパフォーマンスにもっともっと、磨きをかけるもよし！
　これからもカプセルギアを自分なりに、皆さんなりに、楽しんでまいりましょう♪