携帯戦記カプセルギア　ちょこっと競技会！｜リアクション

携帯戦記カプセルギア　ちょこっと競技会！

【駆け抜けろ、アスレチック！（２）】

　岩山コースのごつごつとした足場を軽やかに駆けるのは、『妖怪猫・カラスマル』。操るのはギアマスターネームKO-JI、万条幸次です。
「いい調子だよ、カラスマル！」

　背中に翼はあるものの、飛行するエネルギーはバトルまで温存。アスレチックにおいては猫型レッグの柔軟性と跳躍力を活かして、ぴょんぴょん跳ねて移動することにしました。
　まだまだ新米ギアマスターな幸次ですけれど、そのカプギアさばきはなかなかのもの。目の前に立柱の飛び石も、
「よっ、ほっ。うん、楽勝だ！」
　華麗なジャンプで難なく通過！
　付き合い始めて日は浅くとも、幸次はカラスマルとの良好な相性を自覚せざるを得ません。操縦すればぴたりと反応するレスポンス。思ったとおりの場所へ動き、思ったとおりの挙動で攻撃することができました。
　それに……カラスマルにはどこか、不思議なところがあるのです。
「今日なんて、ほんとは参加するつもり無かったのに。カバン開けたらカラスマルが入ってるんだもんな」
　ねこったーなどには時おり、カプギアとギアマスターの特別な絆を示唆するような、不思議なエピソードが流れてくることがありました。
　幸次とカラスマルにももしかしたら、そんな特別で不思議な絆があるのかも？
「まあ、なにかと猫に縁があるみたいだしね」
　カラス天狗のボディと翼、にゃんこの愛らしいフェイスとしなやかな動きをあわせ持つカラスマルは、いかにも幸次にピッタリなのでした。
「おっ！　君、なかなかやるねえ」
「え？」
　岩山を疾走していたら、併走するカプギアのマスターさんに声をかけられました。ちらっと隣を見ると、髭をはやしたおじさんが気さくな笑みを浮かべています。
「いいカスタマイズだねぇ、機動力重視ながらバランスも良さそうだ。君が組んだの？」
「は、はい……わっ」
　ぐいぐい来るおじさんに気を取られて、カラスマルがちょっぴりバランスを崩して岩肌を転がりかけたのを、素早く駆け寄った多脚型のミリタリーテイストなカプギアが支えました。
「や、ごめんごめん。上手い子を見るとついね、話を聞きたくなっちゃってさ。職業柄かな」
「職業？　っていうと」
「俺、模型屋やっててね。旧市街にある、『善場模型店』って小さなオモチャ屋さ。もちろんカプギアもあるから、良かったら今度遊びに来てよ、っととと！」
「あ、危ない！」
　岩山をごとんと転がる落石。幸次はとっさにスマホをスワイプ、カラスマルがヤツデノウチワをぶおん！　強風を巻き起こして岩を跳ね返し、四脚のカプギアを助けました。
　競争ですしそのまま見捨てても良いものですけれど、人の好い幸次はとっさに手を出してしまいました。もっとも、それを後悔することもありませんでしたけれど。
　おじさん……善場義春は苦笑いを浮かべて、
「いやあ助かったよ、ありがとう」
「いえっ。お互い最後まで、頑張りましょう！」
　何気なく回したガチャガチャからカプギアを手に入れて、今日までなんとなーくちょこちょこと動かしてみたくらいでしたけれど。
　こうして人前でお披露目してみて、幸次は気づきました。愛機の活躍を誰かに見てもらうのって、
「……気持ちいい……！」

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