【卒業式】青い空に想いを解き放ち、私達は今――｜リアクション

【卒業式】青い空に想いを解き放ち、私達は今――

　空になった大皿が講堂の外に運び出された。テーブルクロスを抱えた人々が後に続く。残されたテーブルの脚を折り畳んで片付けた。
「卒業式はシンプルなデザインでいく」
　月詠の指示に従って使用人たちはきびきびと動いた。
「僕もできることをしよう」
　佐藤英二は水の入ったバケツを手に提げていた。隅に置くと縁に掛けていた雑巾を手に取り、水に浸して絞る。開いて綺麗に折り畳んで床に置いた。先に箒と塵取りを使ってゴミを処理していく。
「英二くんがいた！」
　明るい声が後ろから聞こえた。英二はにこやかな顔で振り返った。
　元気な笑顔で野々ののこが駆け寄った。手には雑巾を握っている。
「野々さんも後片付けに参加していたんだね」
「うん、食後の運動にぴったりだよ」
「野々さんらしいね。あ、そうだ。送る会はどう、楽しめた？」
　ののこは頭頂から飛び出た毛を左右に揺らす。閃いたとばかりに笑みを浮かべた。
「サンドイッチが美味しかったよ。あと、コロッケがアツアツのサクサクで、チョコレートの掛かったケーキが甘くて最高だね！」
「料理は凝っていて僕も美味しいと思ったよ。卒業生の先輩達とは、どんな話をしたのかな」
「三年間、とても楽しかったって。笑っているのにどこか悲しそうで、私もちょっとだけ、なんかヘンな気分になっちゃった」
「そうなんだ。僕も先輩達と話をして良かったんだけど、もう学校で会えなくなると思うと、寂しい気持ちになるよ」
「あー、今の英二くんの顔、先輩とそっくり！」
　ののこは言いながら、大丈夫？　と声を掛けてきた。英二は笑みを作って頷いた。
「僕達も来年の今頃は卒業生になるんだよね。まだ、先の話だから実感は湧かないけど」
「そうだよ！」
　今まで忘れていたという風にののこは声を上げた。おろおろして英二を見つめる。
「心配はいらないよ。先輩達のように僕達も胸を張って後輩に送り出される卒業生になればいいんだから」
「うん、そうだよ。だから掃除をがんばろうね！」
「そうだね」
　英二とののこは共に笑って掃除に当たった。