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- 00月00日生 00歳
- AAA000000
さくら、たちばな、ももの花。～ひなまつり in ねこじま～
吊るし雛と雪洞が出された日本家屋の立派な門構えにちょっぴり気後れしながら長い縁側に飾られた年代物の雛飾りを撮らせてもらったり、かと思えば洋館の薔薇園に並べられた洋装仕立ての雛飾りに眼を丸くしたりしながら、星ヶ丘の邸宅を何軒か巡って後、
「ねこの庭？」
ローズマリーの生垣に囲まれた植物園に行き付いた。
手作りらしい素朴な看板には『小さな植物園』と『温室cafe Oz』の文字もある。描きこまれた子猫の可愛らしさにも惹かれ、生垣をぐるりと回る。生垣の半ば、秘密基地の入口のように小さく開いた穴の足元には、案内らしい小さな猫の人形と、小さな吊るし雛に雪洞。
触れた途端に香るローズマリーの生垣を潜る。広がっていたのは、香木や香草が主に植え付けられた小さな庭。
黄色い煉瓦が敷かれた路を辿れば、たくさんの植物に出会うことが出来る。りんごの香を放つ白い花のカモミールに鮮やかな橙が目を惹くキンセンカ、地面を元気な若緑色に埋めるタイムや鉢植えのミント、宝物のように隠れて実るワイルドストロベリー。
「なんだか優しい感じがするね～」
春陽につやりと輝く苺の色の美しさについシャッターを切りつつ、寝太郎が思い出したのは自分のお気に入りの、花が好きだった曾祖母が丹精こめて育てていた懐かしいあの花庭。
ふわりと頬を綻ばせ、路の先に見つけた小さな温室に足を向ける。魔法使いの名が冠せられた喫茶店の前には、メニューが書かれた黒板があった。陶器の雛飾りがちょこんと乗せられた黒板メニューをひと眺めしてみる。
(お昼はここで食べようかな)
パセリオムレツのサンドイッチにラタトゥイユ、ローズマリーのクッキーにローズヒップの真っ赤なゼリーとカモミールティー、という日替わりランチにお腹がくぅと鳴った。
「こんにちは～」
硝子の扉を引く。甘いジャスミンの匂いに迎えられ、さまざまにある椅子やソファの中から気に入った席に着く。コーヒーの木の鉢植えの影のラブソファには仲が良さそうに並んで座る女子二人組、あちこちに飾られた陶器の雛人形を興味津々に見て回っている、こちらも女子の二人組。
「お雛さま、凄かったね」
温かなロイヤルミルクティのカップを両手で包んで紗月は目を細める。
「雛飾りって言っても色々あるのね」
アイスストレートティーのストローに唇をつけ、理緒は見て回ってきた雛飾りを思い起こす。どの雛飾りもアンティークのはずなのに古臭くは見えなかった。
「あれが伝統ってものなのかなー……」
結い上げた黒髪を揺らして首を傾げる理緒の、考え深げに伏せられる睫毛の長い黒い瞳が綺麗で、紗月はこっそりと見惚れた。モデルを務めているだけあって、理緒はひとつひとつの所作がとても綺麗で凛々しい。そのくせ、
「ん？」
こちらを向いてきょとんと瞬く瞳は、少女のように可愛らしい。
「ちょっと疲れちゃった？」
気遣って微笑んでくれる瞳が愛しくて、そっと握ってきてくれる手がありがたくて、紗月はなんだか泣きたいような気持ちになる。
「ううん。大丈夫だよ、理緒ちゃん」
細い指先を握り返し、紗月は微笑みを返した。他のお客の目を気にして、目を合わせる度にうっかり口にしてしまいそうになる、好き、の言葉をミルクティーと共に飲み込む。
「陶器のお雛様、可愛いね」
「うん、あっ、あっちにも隠れてる」
熱帯の植物の根本や店員の居るカウンターのあちこちに置かれた陶器製の小さな雛人形を見つけたり愛でたりしつつ、今はゆったりとふたりの時間。
「ねこの庭って名前聞いて、来てみたいと思ってたんだよね～♪」
極彩色の極楽鳥花の前にちょこんと鎮座した、素朴な色合いながら妙に目立つ雛人形を眺めてから、タルトは小さな温室にぐるりと視線を巡らせる。全面硝子張りの温室は、昼下がりの春陽を集めて眩しく温かい。
「いろんな植物があるね」
妄想後のティータイムのお供はローズヒップティーとシフォンケーキ。ふわふわのシフォンケーキにふわふわのクリームをたっぷり乗せるタルトの前の席では、同じメニューを楽しみつつ、マーガレットがテーブルの上に飾られた猫頭の雛人形に目を奪われている。
「お雛様の小さな人形が飾られていると聞いたので、ちょっと覗いてみたかったのですよね」
猫の頭の女雛の隣には、犬の頭の雄雛が並んでいる。
「どれも可愛い……」
足元のアロマティカスの鉢には如雨露を手にした官女の陶器人形、ミントの鉢には着物の裾を持ち上げて蹴鞠に興ずる衛士の人形。伝統的なものがあるかと思えば悪戯心を効かせたものまで、探せば探すほどいろんな人形が見つけられる。
「手ごろな大きさで陶器だし、部屋に飾ってもいいですよね」
テーブルのにゃんこ女雛をそっと持ち上げてみる。非売品かと思ったけれど、裏側には値段が書かれたシールが貼られていた。
「あら」
買って帰ろうかしらと目を輝かせるマーガレットに、タルトが持ちかけるのは次に出すBLマンガについての相談。
「……さっきの妄想、本当にマンガにしちゃおうかな。でも、今からだと時期外れになるかな～」
「いいですね、そういうときは正気に返ってはいけないと言いますよ」
「突っ走るのみ？」
「のみです」
「ねこの庭？」
ローズマリーの生垣に囲まれた植物園に行き付いた。
手作りらしい素朴な看板には『小さな植物園』と『温室cafe Oz』の文字もある。描きこまれた子猫の可愛らしさにも惹かれ、生垣をぐるりと回る。生垣の半ば、秘密基地の入口のように小さく開いた穴の足元には、案内らしい小さな猫の人形と、小さな吊るし雛に雪洞。
触れた途端に香るローズマリーの生垣を潜る。広がっていたのは、香木や香草が主に植え付けられた小さな庭。
黄色い煉瓦が敷かれた路を辿れば、たくさんの植物に出会うことが出来る。りんごの香を放つ白い花のカモミールに鮮やかな橙が目を惹くキンセンカ、地面を元気な若緑色に埋めるタイムや鉢植えのミント、宝物のように隠れて実るワイルドストロベリー。
「なんだか優しい感じがするね～」
春陽につやりと輝く苺の色の美しさについシャッターを切りつつ、寝太郎が思い出したのは自分のお気に入りの、花が好きだった曾祖母が丹精こめて育てていた懐かしいあの花庭。
ふわりと頬を綻ばせ、路の先に見つけた小さな温室に足を向ける。魔法使いの名が冠せられた喫茶店の前には、メニューが書かれた黒板があった。陶器の雛飾りがちょこんと乗せられた黒板メニューをひと眺めしてみる。
(お昼はここで食べようかな)
パセリオムレツのサンドイッチにラタトゥイユ、ローズマリーのクッキーにローズヒップの真っ赤なゼリーとカモミールティー、という日替わりランチにお腹がくぅと鳴った。
「こんにちは～」
硝子の扉を引く。甘いジャスミンの匂いに迎えられ、さまざまにある椅子やソファの中から気に入った席に着く。コーヒーの木の鉢植えの影のラブソファには仲が良さそうに並んで座る女子二人組、あちこちに飾られた陶器の雛人形を興味津々に見て回っている、こちらも女子の二人組。
「お雛さま、凄かったね」
温かなロイヤルミルクティのカップを両手で包んで紗月は目を細める。
「雛飾りって言っても色々あるのね」
アイスストレートティーのストローに唇をつけ、理緒は見て回ってきた雛飾りを思い起こす。どの雛飾りもアンティークのはずなのに古臭くは見えなかった。
「あれが伝統ってものなのかなー……」
結い上げた黒髪を揺らして首を傾げる理緒の、考え深げに伏せられる睫毛の長い黒い瞳が綺麗で、紗月はこっそりと見惚れた。モデルを務めているだけあって、理緒はひとつひとつの所作がとても綺麗で凛々しい。そのくせ、
「ん？」
こちらを向いてきょとんと瞬く瞳は、少女のように可愛らしい。
「ちょっと疲れちゃった？」
気遣って微笑んでくれる瞳が愛しくて、そっと握ってきてくれる手がありがたくて、紗月はなんだか泣きたいような気持ちになる。
「ううん。大丈夫だよ、理緒ちゃん」
細い指先を握り返し、紗月は微笑みを返した。他のお客の目を気にして、目を合わせる度にうっかり口にしてしまいそうになる、好き、の言葉をミルクティーと共に飲み込む。
「陶器のお雛様、可愛いね」
「うん、あっ、あっちにも隠れてる」
熱帯の植物の根本や店員の居るカウンターのあちこちに置かれた陶器製の小さな雛人形を見つけたり愛でたりしつつ、今はゆったりとふたりの時間。
「ねこの庭って名前聞いて、来てみたいと思ってたんだよね～♪」
極彩色の極楽鳥花の前にちょこんと鎮座した、素朴な色合いながら妙に目立つ雛人形を眺めてから、タルトは小さな温室にぐるりと視線を巡らせる。全面硝子張りの温室は、昼下がりの春陽を集めて眩しく温かい。
「いろんな植物があるね」
妄想後のティータイムのお供はローズヒップティーとシフォンケーキ。ふわふわのシフォンケーキにふわふわのクリームをたっぷり乗せるタルトの前の席では、同じメニューを楽しみつつ、マーガレットがテーブルの上に飾られた猫頭の雛人形に目を奪われている。
「お雛様の小さな人形が飾られていると聞いたので、ちょっと覗いてみたかったのですよね」
猫の頭の女雛の隣には、犬の頭の雄雛が並んでいる。
「どれも可愛い……」
足元のアロマティカスの鉢には如雨露を手にした官女の陶器人形、ミントの鉢には着物の裾を持ち上げて蹴鞠に興ずる衛士の人形。伝統的なものがあるかと思えば悪戯心を効かせたものまで、探せば探すほどいろんな人形が見つけられる。
「手ごろな大きさで陶器だし、部屋に飾ってもいいですよね」
テーブルのにゃんこ女雛をそっと持ち上げてみる。非売品かと思ったけれど、裏側には値段が書かれたシールが貼られていた。
「あら」
買って帰ろうかしらと目を輝かせるマーガレットに、タルトが持ちかけるのは次に出すBLマンガについての相談。
「……さっきの妄想、本当にマンガにしちゃおうかな。でも、今からだと時期外れになるかな～」
「いいですね、そういうときは正気に返ってはいけないと言いますよ」
「突っ走るのみ？」
「のみです」
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2020年10月22日
- 参加申し込みの期限
-
- 2020年10月29日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2020年10月29日 11時00分
