銀色は自由への導き｜リアクション

銀色は自由への導き

　東雲が走って行くのを見届けると、それぞれが予定の配置へと分散する。
　ただ一人、壁に向かって俯いたままの雨寺を除いて。
「う～」
　小さな唸り声をあげて体を震わせる本条小萩。
「落ち着け本条。所詮相手はがり勉だ」
「この人選が問題なんです」
「どういうことだよ？」
「この三人が並んでいたら、きっと一番かわいい小萩が狙われます」
「あ～そうかよ」
　どこか緊張感のない二人と、じっと廊下の奥を見つめる桜崎。
　いつ現れるかわからない勉計を緊張の面持ちで待つ実行部隊。
　対照的な空気を漂わせつつはや十分が経過した。

　そしてその時はやって来た。
「うおおおおお！」
　すっかり聞き慣れた勉計の雄叫びが廊下の奥からこだまする。
「きやがった！」
　特に意味もなく身構えるクロウディアと本条。
　そして腕組みしたまま待ち構える桜崎。
　やがて奥から駆けてくる勉計の姿が。
「いいかい。逃げるんじゃないよ」
「わかってるさ」
　あくまで無防備を強調して立ち尽くす三人。
　勉計は目の前の獲物に瞳を輝かせるとシルバースターを突きつける。
「フラーッシュ！」
　シルバースターの輝きがクロウディア達三人を包み込んだ。
　光が消えたあとには、暗い影を背負った囮三人。
「やっぱり小萩がダメな子だから狙われたんです……」
「俺を呼ばないでくれ……あいつ怖いし……」
「逃げる。逃げるよ。こんな所にいてどうするんだい」
　だが、今度は勉計もその場に止まっていた。
　光がおさまると同時に実行部隊が彼を取り囲んでいたのだ。
「面白いほどに負のオーラ全開だね」
　囮組を見た逆巻天野が呑気な声を漏らす。
「呑気に言ってる場合か。出遅れたぞ！」
　不敵な笑みを浮かべる勉計が、再びシルバースターを頭上に掲げたその時、
「ハァ……変態」
　雨寺凛の大きなため息。
　その存在を認識していなかったのか、初めて驚いた表情を見せた勉計が雨寺を見た一瞬の隙！
「ごめんなさ～～い！」
　東雲が後ろから勉計に飛びかかった。
「は～な～せ～！」
　うつ伏せに倒れ込んだ勉計は背中の東雲を剥がそうと暴れる。
「は～な～し～ま～せ～ん～！」
　必死に抑え込む東雲だが、やはり女子一人の力では限界があった。
　次第に東雲を背負ったまま頭から起き上がる勉計。
　しかし……、