銀色は自由への導き｜リアクション

銀色は自由への導き

「小萩はダメな子です～っ」
　その勉計の頭に本条が胸を押し当てて再び廊下へ抑え込んだ。
　顔面を廊下に強打した勉計だがなおも抵抗する。
「は～な～せ～！」
「は～な～し～ま～せ～ん～！」
「ダメな子でごめんなさい～っ」
　ある意味壮絶とも言えるその攻防に、
　実行部隊の面々は目的を忘れて見入った。
「は～な～せ～！　は～な～……さなくていい～～」
　だが、頭と背中に柔らかい何かを感じ取ったのか、突然勉計の動きが止まった。
「ちょっとやだ。血が出てるわよ。大丈夫かしら」
「いや、あれはたぶん……」
「いまだ！」
　その隙をついた八神が、勉計の手のシルバースターを思いっきり蹴り飛ばした。
「しまったぁ～～」
　とは言いつつも、もはや抵抗する気配のない勉計。
「御剣！」
「わかっている！」
　逆巻の声と共に、御剣が廊下に転がったシルバースターに木刀を素早く叩き込むと、より一層の輝きを放ったシルバースターは粉々に砕け散った。
「ぐあああああああ！」
　勉計の絶叫。
「やった……か？」
　一同は勉計から少し距離を置いて様子を見守る。
　やがて勉計は立ち上がると、パンイチ状態の自身の姿をじっと見つめた。
「風邪はひいていないのでご安心を」
　思い切りずっこける一同。
　こちらも正気に戻った本条が目の前で仁王立ちのパンイチ鼻血男を見るやいなや、
「変態です！」
「ぶへぇ！」
　その頬に強烈な平手打ちをかまして勉計を張り倒した。

　再び目が覚めた勉計は北原に手当を受けていた。
「重ね重ねかたじけない。でももう大丈夫」
　起き上がろうと体を起こした勉計の鼻から一筋の血がタラリ。
「起き上がっちゃダメです！　ここで少しの間横になっていて下さい」
　慌てて北原が勉計に膝枕をしてあげると、
　勉計の鼻から噴水のような鼻血が噴射される。
「ご、ごめんなさい！　私のせいですかっ？」
「いえ……いや、ある意味あなたのせいですが……」
　鼻を抑えながら口ごもる勉計に周囲が呆れた視線を向ける。
「どうでもいいけど早く服くらい着ろ。女子もいるっていうのに」
「今さらって気もするけどね」
　御剣の指摘に逆巻がぽつりと漏らす。
　そんな中、東雲が勉計に歩み寄ると制服を差し出した。
「はいこれ。風邪ひくといけないですから」
「これは丁寧にありがとうございます。でもご安心ください」
「はい？」
「あ、あなたの柔らかい温もりが僕を病原菌から守ってくれました」
　そしてまた彼の鼻から鮮血が噴射されるのだった。

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