銀色は自由への導き｜リアクション

銀色は自由への導き

　その後、落ち着きを取り戻し談笑する面々の横で、逆巻はじっと粉々になったシルバースターを手にして見つめていた。
「触っても平気なのか？」
　御剣の問いかけにも振り返らず、手のひらの粉を息でふっと吹き飛ばす。
「さっきから色々念じているけど効果は失われてるみたいだよ」
「結局なんだったんだろうな。シルバースターっていうのは」
　そんな様子を見つめながら御剣が呟いた。
「でも、みんなで遊んだみたいで楽しかったです」
　東雲の笑顔に御剣も思わず笑みがこぼれる。
「もっともはやく消し去りたい思い出になった人もいるみたいだけどね」
　逆巻の声に、シルバースターの犠牲組が少し距離をあける。
「まったく。誰がやらせたんだよ」
「そうです！　自らを犠牲にした私達は最高の功労者です！」
「おう。初めて意見が合ったな」
「べつに合いたくもないですけど合いました！」
　クロウディアと本条が互いの健闘を称え合っていると、雨寺凛が駆け寄って来た。
「クロウディアセンパイ！　いろいろ失礼しましたぁ！」
　深々と頭を下げる雨寺。
「べつに気にしちゃいねぇよ」
　苦笑するクロウディアの手が雨寺の頭に軽く添えられた。
　その雨寺の後ろでは維都月と北原が、これまた何か言いたげにクロウディアを見ている。
「お前らも気にする必要ねぇぞ」
　クロウディアの言葉に二人もようやく笑顔を見せた。

　そんな和やかなムードの中、
「おい、見てみろよ」
　八神が小瓶に入れられたシルバースターの粉をみんなに見せる。
「あれだけ猛威を振るったシルバースターも、こうして見ると綺麗じゃないか」
「どうするんだい？　もう力は失われているようだけど」
　逆巻が尋ねると、八神は鼻で笑って小瓶をポケットへとしまう。
「記念品にでもするさ」
　そして乗って来た自転車に手をやる。
「八神。雅里君の恥ずかしい画像は消しておきなよ」
「……気付いていたのか」
「む。画像とは何のことですか」
　自分の名前を出された勉計が何事かと詰め寄る。
　逆巻は肩をすくめて八神をチラリと見た。
　目が合った八神はすぐに顔を背けてその場を去ろうとするが、
「八神」
「わかっている。心配するな」
　それだけ答えると自転車を押して帰って行った。

　
　みんなとは離れた場所で桜崎が窓の向こうをじっと見つめていた。
　それに気付いたクロウディアが歩み寄る。
「ざまぁないね。見事にシルバースターの餌食さ」
「そのわりにはあまり残念そうじゃないな」
　クロウディアの言うとおり、桜崎の表情はどこかすっきりしたものだった。
「そういうあんただって醜態晒したわりには落ち込んでないじゃないか」
　互いに顔を見合わせると鼻で笑い、
「……こういうのも悪くない」
　二人の同じ台詞がハモる。
　桜崎はおかしそうに笑うと、皆には黙ってその場を去って行った。

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