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カワウソの宝石商と宝石を生む人々
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〇二十時の叢雲石と月虹石
夜八時を過ぎて星ヶ丘駅の改札に人気は少ない。
森閑とした改札を潜る背を、列車の出立を告げるベルが鋭く叩いた。
追われるように駅を出る。明るい構内から出た途端、視界を奪うほどの暗闇に迫られた気がして、
愛猫 萌々子
は眼鏡越しの蒲公英色した瞳に黒い睫毛の影を落とした。
落とした肩を滑り落ちて視界に入る長い黒髪を払う気にもなれないまま、スーツケースの持ち手に指を掛ける。
手袋を嵌めていてさえ指先を痺れさせる冷たさに、白い眉間に皺が寄った。俯いた顔もそのまま、重い足を引きずって歩く。
(逃げ帰ってしまった)
駅のロータリーで客待ちをしているタクシーの行灯が視界を掠めるも、乗り込む気にはなれなかった。重たいスーツケースを引き、寝子島での住居である星ヶ丘寮への道を辿る。
(逃げ帰ってしまった)
都内にある自宅を出て以降、幾度となく心の内に響いていた声が改めて己を苛む。
今朝方、凛と冷え切った空気の中、星ヶ丘駅を目指して歩いているときはもう少しましな気分だった。自宅に置いている衣類やアルバムを詰めて戻って来るつもりで引いていたスーツケースみたいに軽々とした気持ちだった。
覚悟を決めていた、つもりだった。
だって、寝子島に来たのは自分を変えたいと願ったからだ。
そう願った通り、寝子島に来てやりたいと思ったことを思ったようにやり続けてきた。ののこ様親衛隊を立ち上げて、大好きな絵を描いて、──フツウを守る戦いにだって参加した。なのに。
(どうしていつもこうなるんでしょう)
片道二時間の電車の旅の果てに辿り着いた自宅に、父は不在だった。
外出中の父の帰りを、けれど待たず、空っぽのスーツケースに自分の荷物だけを詰めて再度家を出てきた。
寮に帰るのが遅くなるわけにはいかないから。
帰りの電車がなくなってしまうから。
言い訳は、いくつだって思いつける。
(……悔しい)
行きに思い浮かべていた自分はこんな風ではなかった。きちんと父と対面し、まっすぐに顔を上げ、『今』の自分のことを話すつもりだった。それなのに、今、自分はこうして俯いて歩いている。逃げ帰って来てしまった自分に対する言い訳ばかりを考えてしまっている。
それがとても悔しかった。変えられた『今』を抱えているのに、まだ『過去』を直視できない自分が辛かった。
(だって、……怖い)
寝子島に来てから一度も家に帰れなかったことも。
連絡すらしなかったことも。
ぜんぶ、父と相対するのが怖いからだ。
今日だって、何の連絡も入れずに急に帰ったのは、
(……会わなくて済むとどこかで思っていたから……)
自宅を出て、電車を乗り換えて、帰路を辿るうちはもやもやと胸に渦巻いているだけだった気持ちがかたちを得た途端、一瞬にして視界が涙に曇った。
(結局、)
瞳を歪める。今にも零れて落ちそうな涙を唇を噛んで堪える。
寝子島に来て、やりたいことを色々始めて、自分は変われたと思い込んでいた。
だってののこ様親衛隊を立ち上げた。大好きな絵をたくさん描いた。フツウを守る戦いに参加した。けれど、でも。それでも。
(怯えるだけの私は何も変われていない……!)
いつまでたっても、何をしても、自分はダメな子のままだ。
どんよりと引きずりがちだった足がとうとう止まってしまいかけたとき、ぽふん、とその足がナニカにぶつかってしまった。お腹に届くか届かないかの高さに魚を模したアクセサリーつきのシルクハットを見て、萌々子は慌てて眼鏡を外す。涙でぼやけた視界を手の甲と掌でごしごし拭う。
晴れた視界の中に立っていたのは、灰鼠色のもふもふした毛皮をまとったナニカ。三つ揃えの背広を着こなしたカワウソのようなナニカだった。
「こんばんは、おじょうさん」
シルクハットを取って胸に当て丁寧なお辞儀をしたカワウソは、なで肩から滑り落ちかける麻布鞄をあわあわと支えながら、宝石商を営んでいると告げた。
「あなたの宝石を、みせてください」
つぶらな黒い瞳に仰がれ、萌々子は蒲公英の瞳を瞠る。
「私は宝石なんてもってませんが……」
いいえ、とカワウソが小さな指で示したのは、都内の自宅を出てから今の今までぎゅっと握り締め続けてきた右手。
「みせてください」
寒さと自分の苦しい気持ちで強張った右手にカワウソのぷにぷにした手が触れる。柔らかな指に解かれた右手の中には、煤色した結晶が握られていた。
掌の中にあった鋭い刃を束ね連ねたような小さな宝石に、萌々子は小さな息を吐く。カワウソの宝石商が言うには、この宝石は己の心がかたちを成したものらしい。
「……だからこんな外見なんですね」
嵐の破片の如き石を、宝石商にそっと差し出す。
「何か他の宝石と交換して貰えますか?」
こんなものを握り締めていても、ずっと痛いだけだ。
暗雲が渦を巻いてさえ見える、この宝石が今の自分の心であるならば、
(このまま持っていると引きずられそう……)
だから、お守りにできるような、希望が込められたような宝石と取り換えて欲しかった。
「かしこまりました」
萌々子の掌から萌々子の宝石を丁寧に取り上げ、宝石商は肩掛け鞄から取り出した綿入りの小箱に大切に納めた。そうしてその代わりにと萌々子の掌に真ん丸の透き通った宝石を乗せる。
「空に、すかしてみて」
くるりと瞳を輝かせるカワウソの言葉に従い、萌々子は透明のビー玉にも似たそれを指につまんで持ち上げる。
今日初めて仰いだ空には、真ん丸の月が白銀色に輝いていた。
白銀の光を集めた宝石の中、鮮やかな虹の色が浮かび上がる。
嵐の果てに空に架かる七色の橋を真円の中に見て、
(忘れない)
見つめるまま、萌々子は心に誓う。あの雷雲の宝石を手放した今日のことも、父から逃げてしまった今日の気持ちも、決して忘れないようにしよう。
きっといつか、今日向き合えなかったすべてと真っ向から対峙するために。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
SF・ファンタジー
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2020年10月03日
参加申し込みの期限
2020年10月10日 11時00分
アクション投稿の期限
2020年10月10日 11時00分
参加キャラクター一覧
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