this frame prevents back forward cache
0
0
はじめての方へ
ヘルプ
ログイン
\ オーバータイム!/
種族
学年:職業
00月00日生 00歳
AAA000000
ホームトップ
おしらせ
新着通知
はじめての方へ
遊び方
世界設定
キャラクター一覧
キャラクター検索
キャラクター作成
らっポ
チケット
コミュニティトップ(検索)
コミュニティ一覧
公式コミュニティ一覧
公開トピック一覧
コミュニティ書き込み検索
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
イラストトップ
イラスト一覧
イラスト検索
イラストレーター一覧
イラストレーター検索
自作イラスト一覧
アイテム一覧(検索)
マイリスト一覧(検索)
寝子島(全景)
寝子島(地図)
寝子島(セカンドマップ)
寝子島高校
カワウソの宝石商と宝石を生む人々
<< もどる
1
2
3
4
5
…
10
つぎへ >>
〇霜天のヘマタイト
もふもふの尻尾をふりふり、シルクハットの頭をきょろきょろ、スーツケースのキャスターをコロコロ、小さなカワウソの背中が寝子島の景色の中に遠くなってゆく。
(宝石をうみ出せる、か……)
カワウソの宝石商の姿が見えなくなるまで見送り、最後に大きく手を振って、
志波 武道
はほんの僅か眼鏡の奥の鳶色の瞳を伏せた。頬に触れる北風の冷たさに凍り付いたかの如く、顔中を彩っていた笑みが沈んで消える。
凍り付いた表情を隠すようにマフラーに唇まで埋め、宝石商が向かったのとは別の方向へ進む。
(生み出せる、なぁ……)
コートのポケットに入れていた手を引っ張り出して見下ろしてみる。
(俺なんかからどんな宝石がうまれるんだろうねー?)
空っぽのてのひらをしばらく見つめて、己の思いを握り潰すようにぎゅっと拳を作る。再びポケットに突っ込む。
視線を半ば強引に冬空へともたげる。コートの裾を風に揺らしつつ大股にしばらく歩く。
(俺も生み出せたらまた宝石商さんにあえるかなテヘ!)
乾いた空に向けておどけてちらりと笑って見せる。笑えることに安堵してまた少し笑う。
寝子島駅からほど近い小さな公園の、椿の樹に半ば埋もれた小さなベンチに腰を下ろす。海を臨むベンチに散らばる紅椿の花の色を目の端に、コートの内ポケットから取り出した手帳を開く。無表情に書き込むのは、先程出会ったフツウな出来事。
(カワウソいず天使、まる)
かわいかったかわいかった、とほくほくする心のすみに、ひどく冷静な己が居る。
(……フツウを壊すような脅威はないだろう)
氷の冷たさで囁きかけてくる己自身の声に、思わず瞼を伏せる。自嘲する。それを誤魔化すように手帳をめくってみる。楽しい出来事を記した頁を指先になぞる。
何頁とめくっても、楽しかった記憶を辿っても、一度思い出してしまった心の冷たさを消すのは難しかった。
楽しい思いをすればするほど、一人になると心が冷える。
(楽しいことだけを考えたい)
そう思う心のすみで、
(けれど現実はそうもいかない)
冷たい声がほとんど同時に告げてくる。
(諦めておけば、すこしだけ楽でいられる)
淡々と話しかけてくる冷静な自分の声を振り払いたくて、首を横に振る。そうしたところで、
(俺は、)
次に話しかけてくるのもまた自分自身。
(いつまでフツウを守れるんだろうか)
大変なこともあるけれど楽しいこともたくさんある、今のこの状態が、いつまでも続くとは思わなかった。そう思いたくても、冷静な自分が思わせてはくれなかった。
心のすみ、いつも不安がある。
(もれいびとしてずっとこの力はあるのだろうか)
さまざまの危機を脱する力としていたこの力が、ある日不意に消えても、
(俺は前に飛び出せるんだろうか)
知らず零れた息が、視界の端を白く流れた。思わず落としてしまいそうになる肩を、萎んでしまいそうな胸を、ぐっと歯を食いしばって堪える。硬く結んだ握り拳を膝に置き、肘を突っ張る。無理矢理に顎を上げる。肩を張り、胸を広げ、空を仰ぐ。
(んもー)
沈み始めた気分を寒さのせいにして、どうにか笑ってみる。
(冬はだめだな、脱げないしね!)
無理矢理に気分を切り替え、腿を拳で叩く。足に力を籠め、ぐいと立ち上がろうとした瞬間、喉に奇妙な違和感を感じた。眉を顰めかけた途端、ゴホッ、と思いがけず大きな咳が出て、──
「またおあいしましたね」
艶やかな椿の葉群から、ひょこん、と灰鼠色の頭が飛び出した。紅椿の花を揺らして出てきたカワウソの宝石商に、武道は茫然と自分のてのひらの中を見つめていた視線を上げる。そうして、明るく笑う。
「宝石商さん、またあえたね!」
はい、と差し出すのは、喉の奥から転がり出てきた小さな丸い宝石。
「こんなやつが出てきたよー」
「これは、たいへんうつくしい黒鋼の色ですね」
「……そう、かな」
小さく瞬く武道の隣、カワウソはちょこんと座った。さわってもよろしいですかと問う黒いつぶらな瞳に、武道は大きく頷いて応じる。
ぷにぷにの黒い掌に宝石を乗せ、宝石商は黒い瞳を興味深げに細めた。
「……それ、宝石商さんに預けてもいいかな?」
「よろしいのですか」
「旅の道中、その石を気に入ってくれたひとに渡してあげてほしいかな」
もし、と心のうちに付け加える。
(俺から生まれた宝石でも、気に入るひとがいるなら……)
心に生まれた自嘲に近い呟きは飲み込み、武道はどこまでも明るく笑ってみせる。
「あ、あとその宝石が何なのかを教えてくれるのと、お手々ぷにぷにさせてもらえたら嬉しいです!」
「ワタクシの手がなにかのおやくにたてるのでしたら」
「もちろん、とってもおやくにたっちゃうZE☆」
差し出された小さな手を無心にぷにぷにし始める武道の耳に届くのは、宝石に関する情報。
「こちらはヘマタイトとよばれる宝石です。赤鉄鉱ともよばれるのは、砕くと赤の色をおびるためですね。それにしてもうつくしい、とてもつよい色です」
手放しに誉める宝石商の言葉に、武道は瞬きを繰り返す。
「もし、今度宝石商さんにまた会うときまでその宝石が宝石商さんの手元に残ってたら、買い取らせてくれるかな」
十八の武道が思うのは、今の悩みに笑って対峙できるような大人になった未来のこと。その未来に、己から生じた宝石に、今一度出会うことがあれば──
(その時、身に付けたいかな)
<< もどる
1
2
3
4
5
…
10
つぎへ >>
このページにイラストを設定する
シナリオ
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
シナリオご利用ガイド
グループ参加ご利用ガイド
シナリオタイプのご案内
カワウソの宝石商と宝石を生む人々
シナリオガイド
リアクション
参加キャラクター一覧
コメントページ
ダイアリー一覧
シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
SF・ファンタジー
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2020年10月03日
参加申し込みの期限
2020年10月10日 11時00分
アクション投稿の期限
2020年10月10日 11時00分
参加キャラクター一覧
もっと!